戦国ちょっと悪い話26
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0761人間七七四年
2011/06/25(土) 09:15:51.28ID:+wPy8F18ついに陥落。城主・穴沢新右衛門俊光は一族もろとも自害して果てた、と云う。
しかし俊光の長男・善右衛門俊次(広次)はその時たまたま小田原にあったため無事で、
その後蒲生氏郷に仕え会津に帰還した。
さて、そんな穴沢善右衛門が磐梯山にある温泉に、妻子を連れて湯治に来たときのことである。
善右衛門は湯治場の下男を連れて山の麓にある池に釣りに出かけた。
その日はいつになく魚がかかり、その面白さに二人は宿に戻るのを忘れ、日が暮れたため
近くにあった仮小屋に泊まった。
小屋の中で釣った魚を焼いて食べ、よもやまの話などをしていると、ふと、小屋の戸の方から
こちらを見ている人間が居ることに気がつく。なんと、それは善右衛門の乳母であった。
善右衛門は大いに驚き彼女を中に招き入れ、魚を再び焼いて与えると、乳母は嬉しそうにむさぼり食べた。
そうしているうちに夜も更け、3人も川の字になって眠る。…ふと、善右衛門は猫の声が聞こえる事に
気がつく。目を覚まし傍を見ると、そこにいたのは乳母はなく、真っ黒で巨大な猫であった。
「こんなところに我が乳母が来るわけもないと怪しく思っていたが、さてはこいつが磐梯山に棲むという
化猫の魔物か!」
善右衛門は刀を取って振り下ろすと、魔物は一声上げて、絶命した。
翌朝、善右衛門と下男が湯治場に戻るため山道を登っていると、駆け下りてきた湯治場の主人に
でくわした。主人は混乱した体で善右衛門に告げる
「あなたの奥様の姿が、突然見えなくなりました!」
すぐに近隣の村人にも頼み、辺り一帯の捜索をした。そして2日後、山深い沢の断崖で、大木の枝に
妻が死体となって引っかかっているのが発見された。
その木の近くには、年老いた木こりがいた。善右衛門は木を伐って妻を降ろしてほしい、と頼む。しかし木こりは
「ならばあなたが今挿している刀を貸してください」と言い出す。善右衛門は不思議に思いそれを断ると
きこりはたちまち、先日のものよりさらに大きな黒猫へと姿を変えた
「二日前お前が殺したのは我が妻であった!その怨みによりお前の妻を噛み殺し木にかけ、ここで待って
いたのだ!」
と叫ぶと木を駆け上がり善右衛門の妻の死骸を咥え、雄国山中へと飛んで行った。
善右衛門は驚き、桧原より一族を呼び寄せ猫が飛んでいった方向を探す。
そして磐梯山の西、雄国沼南東の岩場にある穴に、善右衛門の妻の死骸を咥えたまま、目を見開き
睨みつける黒猫の姿が発見された。
善右衛門とその一族は穴を取囲み、善右衛門が一刀のもとに黒猫を斬り殺す。こうして彼は妻の
亡骸を取り返した。
彼が黒猫を切った刀は、穴沢家初代俊家が盗賊文太郎を切った時に、葦名盛高より賜った家宝の名刀であったが
この後から『猫切丸』と名づけられた。そして黒猫が斬られた岩は『猫石』、その山は『猫魔ヶ岳』と
呼ばれるようになったという。
磐梯山に伝わる、猫魔の黒猫の伝説である。
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