
「五輪中止」をめぐる議論が盛んだ。五輪実施の可否が今後の政局を左右するから、議論が白熱するのは理解できる。しかし、それが行きすぎると、おかしな考えが生まれてくるようだ。
例えば先日、ある立憲民主党の有力な支持者と話した際、こんなセリフを耳にして驚いた。
「東京の新規感染者数は意外と増えないね。これだと五輪は開催できるかもしれない。それだと菅政権の思うつぼだ」
どうやら、コロナの感染拡大→五輪中止→菅政権の支持率のさらなる低下→政権交代というシナリオを思い描いているらしい。この人物はすでに定年退職した高齢者で、近いうちにワクチン接種を控えている。その安心感からか、すでにコロナ禍をわが身のことではない、対岸の火事として見ているようだった。
一方で、ある自民支持の経営者はこう話した。
「日本におけるコロナ感染による死者の数は欧米などと比べると格段に少ない。だから、五輪中止なんてもってのほかだ。五輪開催中に多少感染が拡大したとしても、ワクチン接種が進めば秋には落ち着き、菅政権の支持は上向くよ。その間に少しくらい死者が増えたって大したことじゃないさ」
どちらの物言いにも強烈な違和感がある。前者は自民党政権が憎いあまりに思わず漏れてしまった本音だろうが、普通なら口にはできない言葉だし、後者も、政権維持のためなら人命なんかどうでもよいという本音が見える。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7af7a29cbd921931f71f93399cc484af61bee5c5