ロリショタバトルロワイアル24
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0001創る名無しに見る名無し
2009/06/14(日) 18:17:16ID:lSvAgYo/衝動をぶち撒けろ!
欲望を解き放て!
情熱を、燃やせ!
ここは真性の漢共(女性可)が集まり、
ジャンルを問わないロリショタキャラでバトルロワイアルを行う、
あまりにもCOOLなスレです。
紳士淑女の心を忘れず冷静に逝きましょう。
前スレ
ロリショタバトルロワイアル23
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1230413656/
テンプレ、過去ログは>>2-5辺に
ロリショタロワ避難所(したらば)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12693/
LSロワお絵描き掲示板
ttp://oekaki2.basso.to/user11/hisou/
LSロワお絵かき掲示板2
ttp://bbs2.oebit.jp/LoliSyotaRowa/
まとめwiki
ttp://www25.atwiki.jp/loli-syota-rowa
0186創る名無しに見る名無し
2009/09/09(水) 23:47:59ID:gtpH53uBリンク
身軽 勇者 単独行動 器用 練達
アリサ
素人 悪運 不運 エリート 無謀
インデックス
情報解析 素人 慈愛 集中力 ムードメーカー
なのは
魔導師 空中戦闘適応 気合 真面目 必殺
なのはに白い悪魔をつけると思ったか?
そうはいくかwwwww
0187創る名無しに見る名無し
2009/09/10(木) 00:10:15ID:RyLtNrlEGジェネとLSロワに何か関係あんの?
0188創る名無しに見る名無し
2009/09/10(木) 00:11:07ID:RyLtNrlE0189創る名無しに見る名無し
2009/09/10(木) 00:38:02ID:Rb2OckiZこういうのはこっちも乗ってたのしむもんだ。
ということで俺も一つ。
レミリア
気分屋、プレッシャー、冷酷、挑発、威風
挑発とプレッシャーが相殺してるのは気にしない方向で。
0190創る名無しに見る名無し
2009/09/10(木) 00:47:11ID:aRN/is0z0191創る名無しに見る名無し
2009/09/10(木) 00:55:16ID:bO0nQXNVあれは3分で12機の冷蔵庫を全滅させる。
ただしインデックスにはパイロット適正もなければ艦長適性もない!
0192創る名無しに見る名無し
2009/09/10(木) 01:04:18ID:aRN/is0zティファなんかもパイロット適性あるんだし入れてあげて!
ていうか機械だめだし全部適正Dなんじゃなかろうか……w
0193創る名無しに見る名無し
2009/09/10(木) 12:16:14ID:krE1q6A4レミリアって実のところ本当にカリスマはあるのか?
0194創る名無しに見る名無し
2009/09/10(木) 16:40:06ID:KipvdQuSレミリアお嬢様全体がカリスマだ
鼻から忠誠心が出るほどな!
0195創る名無しに見る名無し
2009/09/10(木) 18:28:17ID:bO0nQXNVこのロワだとカリスマ性が全然ないなw
0196創る名無しに見る名無し
2009/09/10(木) 22:53:21ID:aRN/is0z日光にやられて転げまわったり
女の子に服を脱ぐように命令したり
妹とのことに素直になれなかったり……
あれ、これなんてれみりゃ?
0197創る名無しに見る名無し
2009/09/11(金) 10:42:24ID:AKDKfRqz桜、アリサは素人っぽいね
0198創る名無しに見る名無し
2009/09/11(金) 12:27:05ID:o+HU9daZちなみに素人は消費ENがあがる代わりに攻撃力が上がるスキル。
経験不足で戦いの効率が悪いが時に思いがけない活躍を見せる。
とか書いてあった。
言われてみれば戦闘初心者で思いがけない活躍してるね。
詳しくはGジェネウォーズ参照。
wikiあたりを見れば大体分かる。
Gジェネの方は大体あってたりする。
0199創る名無しに見る名無し
2009/09/12(土) 01:13:34ID:HxubZ2kh0200創る名無しに見る名無し
2009/09/13(日) 11:22:11ID:QAFIR7Uzそれがどうかした?
0201創る名無しに見る名無し
2009/09/13(日) 21:21:05ID:cc35vJ0p素人 ムードメーカー 身軽 幸運 勇者
シャナ
赤い彗星 真面目 幸運 身軽 見切り
グレーテル
強化人間 狡猾 身軽 ポジティブ プレッシャー
リリス
身軽 ムードメーカー 空中戦闘適応 無謀 気分屋
エヴァ
魔導師 威圧 恐怖 冷徹 単独行動
弥彦
素人 身軽 無謀 底力 器用
暇だからまねしてみたぜい。
…ニケ以外は自信がない。
でも、ニケだけは100%あってるはず。
0202創る名無しに見る名無し
2009/09/13(日) 23:26:59ID:EdVysDm5素人って能力一般人が該当するっぽいからニケと弥彦はあわないかも。
だけど予想外の行動という意味ではあってるから困るw
シャナに冷徹がほしいかも。ここのシャナは恋人がいなくて冷静にふるまえてるし。
あとグレーテルに好戦、ニケに悪運、弥彦に手加減かな。
0203創る名無しに見る名無し
2009/09/14(月) 10:19:07ID:Epi5Juxpシャナがシャアwwww
0204創る名無しに見る名無し
2009/09/14(月) 21:46:03ID:JQOoQAVNこうですね!ってこれは冷酷かw
0205創る名無しに見る名無し
2009/09/20(日) 22:14:28ID:dVTIo/1d0206創る名無しに見る名無し
2009/09/24(木) 20:32:00ID:lyFqlr9Pなんとなくしゃなたんみたいだなと思った
0207創る名無しに見る名無し
2009/09/24(木) 22:48:41ID:DPwEG3S10208創る名無しに見る名無し
2009/09/27(日) 17:06:05ID:RScT3NxOそろそろ反省会でも始めようか
0209創る名無しに見る名無し
2009/09/27(日) 23:02:58ID:W90EX/G6これが中心にあるんだろうけど、
問題を問題として見ずに放置していたっていうのも反省すべきところかな。
0210創る名無しに見る名無し
2009/09/27(日) 23:12:52ID:3e7ZaXJk0211創る名無しに見る名無し
2009/10/02(金) 16:42:27ID:M8bq6xdiちょっと泣いた
0212創る名無しに見る名無し
2009/10/03(土) 01:06:30ID:zIi2Q5nU0213創る名無しに見る名無し
2009/10/05(月) 20:16:39ID:9JhchQGf0214創る名無しに見る名無し
2009/10/05(月) 22:39:05ID:TTGj0PM7荒れた原因が高町なのはっていうのは間違ってないけど。
0215創る名無しに見る名無し
2009/10/05(月) 22:51:40ID:N8WrhZby0216創る名無しに見る名無し
2009/10/06(火) 04:39:01ID:t4jtYLX30217創る名無しに見る名無し
2009/10/06(火) 11:21:09ID:w3Nm0LgP人は減ったし性格は改善されたしでやりやすくなったと思うよ。
後は書く人がいないとやり直しても意味がない
0218創る名無しに見る名無し
2009/10/06(火) 14:48:28ID:mrhW/CEO過疎だって別にいいじゃん
何か急いで完結させなくちゃいけない理由があるわけでもないし
このままずっと書き込みなくて、スレが落ちたときは諦めればいいだけ
0219創る名無しに見る名無し
2009/10/07(水) 14:18:18ID:tztLIzv+0220創る名無しに見る名無し
2009/10/07(水) 17:55:25ID:h9u/nPVR0221創る名無しに見る名無し
2009/10/09(金) 01:41:24ID:6WBbuaIp0222xyz
2009/10/12(月) 19:31:50ID:k2mbjRu2新規オープン
DVD販売
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0223創る名無しに見る名無し
2009/10/13(火) 23:43:44ID:HYllFvnkでも今大学受験の真っ只中だからあと半年待ってねw
半年後まで信じて待っててくれる人がいれば、の話だけど
0224創る名無しに見る名無し
2009/10/14(水) 12:39:03ID:fVolILId0225創る名無しに見る名無し
2009/10/18(日) 10:52:02ID:bgGjbNGn0226創る名無しに見る名無し
2009/10/20(火) 15:50:15ID:m+s8h/CE0227創る名無しに見る名無し
2009/10/21(水) 17:06:32ID:QqRKl5U6てか、雛苺のことも思い出してあげて下さい・・・
0228創る名無しに見る名無し
2009/10/21(水) 22:50:15ID:tl/zQR5vしかし狂ってるし心のよりどころの桜は生きてるし……どうなんだw?
0229創る名無しに見る名無し
2009/10/23(金) 16:43:02ID:2WuQAqWw0230創る名無しに見る名無し
2009/10/23(金) 17:43:03ID:L8pfnfdh0231創る名無しに見る名無し
2009/10/26(月) 00:52:50ID:ofj7UUPZ0232創る名無しに見る名無し
2009/11/01(日) 12:31:48ID:Dp3un9pm0233創る名無しに見る名無し
2009/11/03(火) 21:08:07ID:PrC9bwSF0234創る名無しに見る名無し
2009/11/04(水) 13:12:25ID:xL6uJDX60235創る名無しに見る名無し
2009/11/06(金) 23:37:40ID:lk2VlFIk0236創る名無しに見る名無し
2009/11/08(日) 20:50:49ID:ecbJ9Qht0237創る名無しに見る名無し
2009/11/11(水) 07:48:18ID:LH4HJ1C50238創る名無しに見る名無し
2009/11/12(木) 10:40:32ID:2ZWW2kzS個人的に勇者の中で一番ピンチなニケの動向が気になる
利用できることに気づいたから、ブルーとかもすぐに殺そうとは思わないだろうけど…
0239創る名無しに見る名無し
2009/11/12(木) 16:03:48ID:PWb5c2Kz2ヶ月放置してるけどw
0240創る名無しに見る名無し
2009/11/12(木) 16:33:51ID:py7ELdK6やっぱ残された理由はメロの推理が厄介だからかな?
0241創る名無しに見る名無し
2009/11/12(木) 18:52:51ID:3KaK6Y51グレーテル戦は熱かったからな
0242創る名無しに見る名無し
2009/11/13(金) 18:37:09ID:tK1D4r+c予約だああああああ!!
0243創る名無しに見る名無し
2009/11/13(金) 19:04:54ID:BrQZu7W0wikiに載るまでが投下だって先生が言ってた!
0244創る名無しに見る名無し
2009/11/14(土) 19:17:24ID:fXz5sbSi0245創る名無しに見る名無し
2009/11/15(日) 03:09:15ID:tF8OoUToこれはwktkせずにはいられないな
0246創る名無しに見る名無し
2009/11/16(月) 09:15:51ID:qs8oyN8Uうわ、もうそれだけでうれしい!!
0247創る名無しに見る名無し
2009/11/17(火) 18:23:11ID:2F7c1GtO0248創る名無しに見る名無し
2009/11/17(火) 23:08:51ID:T3g+xJd70249創る名無しに見る名無し
2009/11/17(火) 23:58:12ID:T3g+xJd70250創る名無しに見る名無し
2009/11/18(水) 12:19:15ID:Fysz+uid0251創る名無しに見る名無し
2009/11/18(水) 17:55:10ID:T5ycyGam0252創る名無しに見る名無し
2009/11/18(水) 18:49:41ID:ojbBRVIL0253創る名無しに見る名無し
2009/11/19(木) 21:24:41ID:oHmNxXtc0254創る名無しに見る名無し
2009/11/19(木) 23:26:33ID:iWMUM47p0255携帯T4jDXqBeas
2009/11/20(金) 00:07:37ID:XYDxDA94これは携帯からなのでトリも無し。
したらばテスト投下スレの16からです。
0256創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 00:35:00ID:LoNp/PnP0257遺。(前編) ◇T4jDXqBeas
2009/11/20(金) 00:35:47ID:LoNp/PnPその時点にある情報でよく理解し、推測し、判断した。
ただ残念な事に。
極限状況下の判断に正解は無い。
正しい答えなんて、未来でも見えなきゃ分からない。
* * *
メロとブルーは一つの事柄に頭を悩ませていた。
あれから。
神社で一休を囮にグレーテルから逃げ出してからかなりして、
メロとブルー、それから人形のチャチャゼロ、気を失っているニケと隠れた体育館で、
零時の臨時放送を耳にする事になった。
その内容は二人にとって極めて興味深く重要な問題だった。
Q-Beeの殺害。
メロが実行しようと考えていたジェダへの嫌がらせを実現した者が居る。
そしてジェダは、そのQ-Beeを易々と蘇らせて見せたのだ。
それを見たブルーは、メロにどうするのかと聞いた。
メロの実行しようとした事は既に行われ、その結果は否定された。
彼女の目にはメロの計画が無意味になったように思えたのだ。しかし、
「何を言っている。むしろこいつは予想外の朗報だろうが」
メロは、月に映された復活劇を目にして怯んでいなかった。
超自然的な現象に馴染み深いブルーでさえ驚く復活劇を、真っ向から睨みつけていた。
「あの映像を投射した方法自体も興味深いが、これはおいておく。
まずあの映像が真実か作り物か。大前提となる蘇生についてだ。
チャチャゼロ、おまえはどう思う」
「ケケ、復活ノ実演タァ大盤振舞ジャネーカ。
復活ナンテホントニ有ッタノカドーカモワカンネー伝説デシカ聞カネーケド、
未来科学ダノ別世界ダノ、モウ何デモ有リジャネーノ?」
「おまえの知っている、実現出来る範囲の魔法ではどうだ?」
「知ッテル範囲ジャア無ーナ。人形ヤゴーレムナラ修理スレバスムケドナ」
「要するにロボットか。ロボットなら修理すればどうとでもなる。
データ部分さえ残っていれば挿げ替えれば良いんだからな」
「モシソーダトシテモアノ映像ジャ壊レテタト思ウケドナー」
「だろうな」
メロは映像にあったQ-beeの死骸を思い出す。
頭部だけになり、その頭部にもフォークを突立てられていた映像。
もしあの映像通りに破壊されていたというならば中枢も何も有った物ではない。
そもそもロボットなら揺れの多い頭部より胴体部の方が重要パーツ格納に適していそうだ。
「ブルー、おまえはどう思う?」
「アタシの方も伝説級だわ、生命を操るポケモンなんて。
といっても生きてるんだけど、伝説のポケモンって言ってね。幾つか逢った事が有るわ。
その中には他のポケモンを蘇生させた伝説が有る奴も居たのよ。
現代にそれが行われたわけじゃ無いけど、死亡直後なら有りえるかもしれないわね。
流石にあそこまでズタズタになった死体を蘇生させるのは想像できないけど、でも」
「俺達が聞いた事も無い技術を持つジェダならば可能かもしれない、か」
ブルーは頷いた。
0258遺。(前編) ◇T4jDXqBeas
2009/11/20(金) 00:36:58ID:LoNp/PnP死神の人間殺害帳、デスノートのルールは真っ向から生命の復活を否定していたが、
死神が居るなら、殺す神と同じく生かす神も居るかもしれない。
あるいは単に生命に対して死神以上の権限を持っているのかもしれない。
もしそうなら、それはそれで厄介な話だ。
以前から懸念してはいたが、例えばジェダの手にデスノートが有るかもしれない。
もしジェダがデスノートを持っているならば、首輪を外したところで何時でも殺せる事は変わらない。
ジェダは参加者達の顔はもちろんの事、恐らくは本名も全て網羅しているはずなのだ。
「あの臨時放送は概ね事実だと見て良いだろう。
Q-Beeは参加者の誰かに殺され、ジェダの力で蘇った。
Q-Beeの戦闘力も言うほどに高いなら、俺達では返り討ちにされていたかもしれないな。
やろうとしてくれた事を先に誰かが先に試してくれたとも言える」
ならば首輪を外す事は無意味なのだろうか?
何度でも蘇らせる事が出来るなら、誰かがQ-Beeを殺した事は無意味だったのだろうか?
「だがジェダは尻尾を出した」
「尻尾……?」
メロは、違うと見た。
それでは筋が通らない。
「幾らでも無駄に出来ると示す事で、Q-Bee殺害の意欲を無くす。
確かに効果的だ。
だがそれはQ-Beeに替えが効く事を意味しない。
むしろ参加者に挑み殺されるという失態を犯したQ-Beeを使い続けるのはおかしい。
ジェダにはQ-Beeに替わる手駒が無いんだ。
おまえの言うポケモンのような生物を使っても、Q-Beeの代わりは果たせないという事だ」
「それはポケモンやそれに類する生き物を使っていないという事?」
ブルーの立てた推論は無駄だったのか。
メロはそれも否定する。
「いや、使えるなら使っていておかしくないはずだ。
雑用や拠点防衛には使っている可能性は十分に有りうる。
そうではなく、Q-Beeの役目は代役が立てられない物だとすれば」
「Q-Beeがそれほどの仕事を果たしているという事?」
「ああ、そうだ。ジェダ自身知能に劣ると言った程のQ-Beeがな。
挙句にこの雨だ、ジェダの管理体制に不具合が出た可能性がある。
Q-Beeの死は恐らく間違いなく、ジェダに何らかの不都合をもたらす。
それが何か判れば、復活までのタイムラグを利用して何かできるかもしれない。
それを成し遂げた奴、あるいは目撃した奴の話を聞きたい所だ。
だが、問題は」
メロは体育館の外に響く激しい雨音に耳を澄ませた。
零時の放送の際に告知された雨雲は殺し合いの島全域を覆っている。
四時まで続くという雨は参加者の足を止めているだろう。
雨の向こうの何処かに、Q-Beeを殺した参加者が居る。
彼らを襲ったグレーテルも何処かに居る。
「ここが安全かどうか。安全でないならどこに逃げ延びるのが正解か。
それから“勇者さま”をどうするかだ」
グレーテルの攻撃で気を失ったニケはまだ目を覚ましていなかった。
そろそろ見捨てるべきかと考えたが、診てみた呼吸と脈拍は正常。
たまに寝言まで言う。
詰まるところ。
「いつまで眠っていやがる」
ニケは気絶からそのまま、眠りこけていた。
0259創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 00:37:02ID:c6qKem4N0260遺。(前編) ◇T4jDXqBeas
2009/11/20(金) 00:37:40ID:LoNp/PnP負傷や疲労による体力消耗から来たただの睡眠ならどうにでもなる。
応急処置をしたとはいえ腹からの出血も有ったし、そのまま死ぬ可能性も高かったのだが、
どうやら重要器官も血管も一切傷つけずに貫通したらしく、しばらくすると血も止まった。
この悪運の強さ、尋常ではない。
「とっとと起こして扱き使いたい所なんだがな」
「今起コシテモ使エルカ?」
「ああ、それが問題だ」
しかしニケの傷は浅くない。
左肩と腹部に傷を負っているのだ、激しい運動には支障があるだろう。
魔法と精神的疲労が関連する事も多いらしい。
つまり消耗して倒れている今のニケは、魔法がどこまで使えるかもアテにならないのだ。
仮に利用できるとしても、戦力になるか怪しかった。
「今は休ませるってコト?」
「そういう事になるな。次の問題は」
「あの銀髪の女の子ね。神社にはもう居なかったけど、どこへ行ったか分からないわ」
戦力に長けたニケは倒れ、メロもブルーも直接戦闘には不向きだ。
大した戦力も無しに襲撃されれば一たまりも無い。
一番問題になるのは、ここへ逃げ込む理由になった銀髪の厄種グレーテルの存在だ。
しばらく様子を見て動きが無い事から、慎重に神社を偵察して来たところ、
神社には一休の死体が転がっているだけで、銀髪の少女の姿は何処にも無かった。
あれから二時間以上も経っていたのだ、おかしな事ではない。
何処かへ移動したのだろう。
「何処かへ移動したとすれば、むしろここは安全な可能性が高い」
移動したとすれば、現在グレーテルが居るかもしれない場所は移動前、
現在地を中心とした同心円状に拡がっていく。
目的地は人が多い場所かもしれないし、休息に向いた場所かもしれない。
どちらにせよ一度移動し始めておきながら突如方向転換しない限りは、この神社から離れていく。
「何かの理由でUターンしてくる可能性は無いの?」
「有る。だが可能性としては高くないし、この雨も有る。
今は他の時間帯に比べて危険人物と遭遇しにくい時間帯だと見て良いだろう。
俺もロクに眠れていないからな。睡眠自体は絶対に必要だ」
「ケケ、今夜ハ眠ラセナイゼ、トカ言エネーノカヨ」
「言えるか馬鹿」
チャチャゼロの卑猥な冗句に反応を返す際、一瞬だけ移った視線を引き戻す。
意識すべきではない。
ジャージを羽織ったとはいえ、レオタード姿のブルーの姿は扇情的だ。
その肉体の性的な吸引力に感情を寄せるべきではない。
「あら、どうしたのかしら?」
ブルーが心配そうなふりをして寄り添ってくる。
メロは内心で歯噛みした。
(クソッ、分かってやっているのか!?)
なんでもないと答えるメロの内心も、見る者が見れば見抜けただろう。
チャチャゼロが誰にも聞こえないほどの小声で呟いた。
「アーア、案外重症デヤンノ」
当然ながら分かっててやっている。
彼女はメロが何故か自分に惚れかけている事を理解している。
ならば僅かな挙動さえも見逃すはずは無い。
男を手玉に取るのに長けたブルーのこと、今はメロに攻め込む絶好の機会だった。
生理的な欲望というのは抑えようとしてもむしろ強まっていく。
欲望を溜め込んだまま休息を取ろうとしている今を逃す手は無い。
メロの判断力を鈍らせてしまっては元も子もないが、ある程度は意識させるのが得策だ。
一時的に目を曇らせても、安全に休息し行動を再開するまでには回復するだろう。
0261遺。(前編) ◇T4jDXqBeas
2009/11/20(金) 00:38:28ID:LoNp/PnP出来るだけ外部の侵入口から遠い体育館の倉庫に、高飛びなどで使う落下時の衝撃緩衝クッションを敷き、
ニケをそのすぐ脇に寝かせて、共に浅い眠りに就いた。
ブルーはメロの腕を抱いて彼の胸の鼓動を数段早くしていたが、メロにはそれを断る事もできなかった。
両者とも判断の根底に有ったのは、ここはしばらく安全な可能性が高いという推測だった。
絶対に安全だと確信していたわけではない。
外部への隙を増やしてでも何時かしたい事をやるには、この時間が最適だと判断しただけだ。
侵入者への対策トラップは二重三重に仕掛けていたし、武器もすぐ取れる場所に置いた。
この密閉空間はメロの持つ煙薬の使用にも適していた。
退路も壁の高い場所にある窓が有った。
障害物が邪魔になるため、外から床までは見えない。
起き上がっていればともかく、伏せたり寝ていれば見えないだろう。
そもそも外からは、足場も無く高い所に有る窓など使いづらい。
だが中からなら、用意した足場をよじ登って出れない事も無い。
それ以外の唯一の入り口は強固な鉄扉だ。
つっかえ棒をすればしばらくの足止め位にはなるだろう。
彼らはそれなりに準備をした上で、睡眠や篭絡を試みたのだ。
その用意はかなり周到だった。
しかし完璧ではなく、たまたま少しだけ、運も悪かった。
* * *
メロは何かに気づいて体を起こした。
腕にしがみ付くブルーのせいで心を落ち着ける事も出来なくて、眠りは浅かった。
一方のブルーは、無防備な姿を見せ付ける事も効果的だからとしっかり睡眠を取っている。
サモナイト石まで使った彼女の疲労が激しかった事も事実である。
(なんだ……?)
見えるのは完全な闇だけ。
明かりを洩らせば人に気取られてしまう。
何かを照らし出すという事は、向こうからもその光が見える事に他ならない。
聞こえるのは雨音だけ。
激しい雨音はメロ達のささやかな寝息や衣擦れ、生命の気配など洩らさない。
同時に外から聞こえる音も雨音に塗り潰されて判らない。
手探りで傍らに寝ているブルーの袂からシルフスコープを掴み、
彼女の首に掛かったままのスコープだけ覗いて室内を観察する。
ニケは、相変わらず眠っている。
ブルーは、目覚めそうだ。
倉庫内に異常は無い。
少し頭を上げて覗いた、高い場所に有る小さな窓は……。
目が、合った。
窓に顔を貼り付けている、明らかに小さな顔。
人間にしては小さすぎる、例えば、チャチャゼロのような大きさの顔。
ふらふらと人魂のように揺れるその顔は、足場も無いはずの窓の外から彼らを覗き見ていた。
(落ち着け、見えないはずだっ)
今、メロはシルフスコープ越しの暗視能力を得ている。
だから見えるのだ。この暗闇の中でも。
人形のような顔側にそれは無い。
無い、が。
(待て。この理屈は人形相手に通用するのか?)
判らない。
0262遺。(前編) ◇T4jDXqBeas
2009/11/20(金) 00:39:34ID:LoNp/PnPチャチャゼロの存在だ。
(チャチャゼロはどうだ? あいつは見えるのか、見えないのか?)
メロはシルフスコープの視線を逸らし、跳び箱にもたれたチャチャゼロに視線を向けた。
チャチャゼロの視線は、蒼星石に向いていない。
ただの人形のように前を見ている。
そのチャチャゼロがちらりと、メロに視線を向けた。
チャチャゼロは見えているが、人形のフリをしていたのだ。
(あいつは見えているのか。窓の人形も夜目が利くとは限らないが……いや。
しくじったっ)
メロは致命的な見落としに気が付いた。
外の人形が、夜目が利くにせよ利かないにせよ。
どうやって、倉庫の窓に取り付いた?
メロがシルフスコープを着けた時点では、倉庫の中は完全な暗闇だった。
幾ら闇に目が慣れても何一つ見えないほどの暗闇。
外も激しい雨で、月明かりは愚か星明りすら差していない。
だが、何処にも光源の無い闇の中で窓に取り付けるはずは無い。
完全な暗闇をも見通す暗視能力か、何かの明かりが無い限り。
メロはシルフスコープからそっと、顔を離した。
……裸眼でも、窓の外に浮かぶ人形の顔が薄らと見えた。
外には、明かりが有る。
人形の顔で僅かに照り返し、倉庫の中にもほんの僅かに差し込む光が。
メロがシルフスコープを付けた時、人形が使っている明かりは窓を照らしていなかった。
明かりを持った手元がぶれる事などよくある事だ。
見回してから窓に目を向けるまでの時間差で、人形の明かりは室内に差し込んだ。
それでも人形から中を見渡せるわけではない。
あまりにも僅かな光は倉庫の暗闇を識別できるほど照らすには到底足りない。
しかしメロは、シルフスコープを人形に向けていた。
レンズのガラス面は僅かに光を反射する。
それは小さな極僅かな光点に過ぎないが、完全な暗闇の中では十分に視認できる。
しかもそれは、動いていた。
人形の目線は今度こそメロに向いていた。
眠気と色気でほんの僅かに惚けた頭が、極々些細で決定的なミスを冒した。
「起きろ!」
叱咤と共にブルーを振り払う声は、より大きな轟音に呑み込まれた。
大きすぎてどんな音かも判らない轟音。
轟音はすぐに騒音へと変わりその場全ての耳へと届く。
ガラガラと石が転げるような音と山吹色の光に替わる。
その光をさえぎる白煙で、メロは状況を理解した。
(壁をぶち破られた!? しかもこの光は、奴か!)
ブルーがメロから腕を離し、寝ぼけ眼を擦り状況を視認しようとしている。
十秒も有れば闇に目を慣らし、光景から状況を理解し、把握した上で、
混乱から立ち直り、どうすれば良いか思考し、行動を開始するだろう。
煙が晴れた瞬間に動き出す侵入者の最初の行動には間に合わない。
ニケの方は論外だ、目を覚ましているかも判らない。
残された時間は数秒、まずその時間を更に延ばさなければならない。
(蝶ネクタイの変声機とチャチャゼロで……ダメだ)
「まだ眠るには早いよ。姉さまも僕もちょっと殺したりないな」
立ち込める粉塵の向こうにうっすら見えた少年の顔。
それは昼間出会った厄種と同じに見えた。
数時間前に見た、山吹色の光を発する槍の使い手は少女だった。
0263遺。(前編) ◇T4jDXqBeas
2009/11/20(金) 00:40:53ID:LoNp/PnP本当にそうだったのか?
例えば髪を切り衣服を変えればそれで見分けが付かなくなる相手だ。
事実ニケとの戦いにおいて、厄種は少年のような雰囲気と姿にも見え、少年の声で語った。
まるで昼間の厄種そのもののように。
いや、それは間違いなく昼間見た厄種の少年と同じものだった。
(アレは、同じ奴だ)
メロの直感は正しくソレの本質を捉えていた。
しかし、そのせいでメロは思考する。
チャチャゼロが何もできない事はバレている。
蝶ネクタイ型変声機もあの後タネがばれている危険は高いし、
使えてもすぐに煙が晴れる目の前で何が……。
(いや、同じ手は使える)
メロは叫んだ。
「シャインセイバーだ! さっき使った剣の雨を撃ってやれ!
ニケ、おまえは壁の裏で入って来る奴を待ち構えろ!」
恐らくブルーはまだ、シャインセイバーを撃てるほど回復していない。
ニケも目覚めている見込みは無い。
だがニケは幸い壁から見て物陰に寝ているし、ブルーは。
「むっ」
ブルーの微かな呻き。
メロはブルーの口を押さえて物陰に走る。
姿が見えなければ警戒を買える。
(これで数秒の猶予は十数秒にまで延びて……)
「第一楽章、攻撃のワルツ!」
部屋に吹き込んだ衝撃波が一撃で粉塵を消し飛ばした
予想していた十数秒は再び十秒以下に縮まった。
その先に居るのは少し前に見た厄種と、バイオリンを構えた少年のような人形。
(まずい、見られ……っ)
少年のような人形は飛ぶように跳躍する。
その手にはバイオリンの弦を握ったまま。
恐らくそれは近接武器にもなるのだろう。
情景を見た人形はメロの言葉がハッタリである事を見抜いたのだ。
夜襲の迅速さに加え、露になった隠れようとするメロの姿が確信を与えた。
その弦がメロとブルーに振り下ろされようとした瞬間。
人形の瞳に浮かぶ揺らぎまでもが視認出来ていた刹那。
白刃が煌いた。
「うあぁっ」
短い悲鳴。
弦を持った小さな左手がくるくると宙に舞っていた。
剣を構えたニケがそこに居た。
ニケは目を覚ましていたのだ。
そして咄嗟に、「剣」のカードを剣へと変えて襲撃者を迎え撃ったのだ。
思考する暇も与えられなかったその斬撃はそれ故に容赦も無く襲撃者の腕を斬り飛ばした。
だが。
0264創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 00:41:26ID:c6qKem4N0265遺。(前編) ◇T4jDXqBeas
2009/11/20(金) 00:41:47ID:LoNp/PnPメロとブルーに襲い掛かろうとしていた人形。
メロとブルーが数瞬前まで居た場所。
ベッドにしていた柔らかいクッションの上。
体勢が崩れたニケのすぐ目の前。
人形のすぐ後ろには、後を追って飛び込んだ厄種の姿が居た。
間合いが近すぎる為に槍の穂先を刺されなかったのは幸いだった。
それでも殆ど同じ事だ。
代わりに振り回された石突がニケの後頭部を叩きのめした。
残った間はほんの2、3秒。
メロの腕の中には状況を把握しつつあるブルーが居る。
しかし戦力は無い。バットを手に敵う相手ではない。
ブルーの持つ剣と化すマフラーでも勝てるとは思えない。
倉庫入り口の扉を開ける間さえも。
覚悟を決めたメロが咄嗟に取った行動は。
数秒後、メロの意識は衝撃と共に闇に呑まれていた。
* * *
彼女の意識はまどろみの中に在った。
ぼんやりとしたまどろみだった。
眠りではない。
本来眠らねばならない時間だけれど、眠りではない。
夢を見る事は無く、心が休まる事も無い。
夜の眠りとはとても大切な物のはずなのに。
この世に作られた日から今日まで、寝床を取り上げられても時間だけは守ってきたのに。
眠りではない。
ただの、まどろみ。
確かに本来の寝床。
数百年を共に過ごしてきた鞄の中で眠れなくとも、すぐに死にはしない。
決められた時間、夜の9時から朝の7時まで眠れなくとも、すぐに死にはしない。
だけど心が軋みを上げている。
夜の9時から朝の7時に、鞄の中で取る眠り。
それだけが、彼女達が夢見られる眠り。
深い眠りの中で記憶を繋ぎ合わせなければ。
想いを整理しなければ。
彼女達の心は軋みを上げて、日に日に弱り果てていく。
一日二日で力尽きる事は無いけれど。
何よりもその時間にそうして眠る事は、彼女達の約束なのだ。
創造主であるローゼンが彼女達をそう作ったのだから。
だから心が軋みを上げている。
大切な人の約束を破り続けている事に。
それなのに、まだ寝てはいけない。
鞄無しでさえ眠れない。
寝てはいけない。
殺さなければ。
0266遺。(前編) ◇T4jDXqBeas
2009/11/20(金) 00:42:31ID:LoNp/PnPローザミスティカの奪い合いではなく。
冥王ジェダの僅かな救いに縋る為に。
命の奪い合いをしなければ。
戦い続けなければ。
ローゼンから頂いた体を壊されても。
………………。
「う…………」
誰かの声のような物を聞いた気がした。
蒼星石はぼんやりと、重い瞼を押し開いた。
どうやら浅いまどろみの中に居たようだ。
まだ思考が定まらない。記憶が混濁している。
確か、そう。殺人者達と同盟を結び、グレーテルと塔から出立して……。
(神社を家捜しして……おぞましい物を見つけたり、埋葬された死体を見つけて、それから……。
そうだ、確か入れ違いに神社を調べに来ていた誰かが居たんだ。
屋外の痕跡は雨で消えていたけど、調査と推測から学校が怪しかったから、学校を調べに向かって。
体育倉庫の窓から、誰かを見つけて、そして──)
思い、出した。
「腕、が……」
右腕で左腕を押さえる。
その腕は中ほどから、無くなっていた。
床から飛び起きてきた少年の鮮やかな太刀筋で、切り落とされてしまったのだ。
左腕は蒼星石の利き腕だ。
逆腕も割合使えるのだが、それでも不便は避けられない。
だけど何よりも。
(お父様から貰った大切な身体なのに……)
胸に来る痛みが、辛かった。
蒼星石のローゼンへの愛は、ドール達の中でも抜きん出たものだ。
その想いは、この島に連れて来られたドール達の中でも一番かもしれない。
愛を測る事など愚かしいが、それでも。
一度繋いだ絆に背を向けてまでアリスゲームに挑んだのは──
それが正しかったか間違っていたかは別にして、蒼星石だけだったのだから。
彼女にとってドールとしての決まり事は一際重要な意味を持つ事なのだから。
なのに、立ち止まれない。
今は進まなければならない。
ジェダの約束した微かな救いに乗って全てを取り戻すまでは。
体を起こすと、すぐ脇には切り飛ばされた左腕が置いてあった。
どうやら今居る場所は体育館の舞台上らしい。
スポットライトの明かりが舞台の上を照らしている。
用意された舞台。
「あら、起きたのね。おはよう、お姉さん」
「な……っ」
そう、舞台の上には全てが用意されていた。
蒼星石が最後の一振りを下ろすための。
惨劇の舞台が。
そこには三人の人間が囚われていた。
0267創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 00:42:33ID:c6qKem4N0268遺。(前編) ◇T4jDXqBeas
2009/11/20(金) 00:43:22ID:LoNp/PnP目を覚ましているのかもがく小さな少年は布も剥がれて顔が見えている。ニケだ。
必死に考えているのかじっと動かない、この島では一際大きな体格の男はメロ。
同じく動く気配の無い、青みを帯びて見えるほど艶やかな黒髪が覗く少女はブルーだろうか。
三人の腕は鉄の楔で封じられていた。
運動場に紐などを括る為の物なのか、
錆びの浮いた太い凹型楔を堅固な木の舞台に打ち込んで腕を挟み、固定しているのだ。
蒼星石はそれらの名前を判りはしないが、関係の無い事だ。
理解する必要の無い事だ。
理解する必要の無い者だ。
「さあ、殺しましょ。お姉さんの命を繋ぐ為に」
彼らは殺されるためそこに有った。
蒼星石は立ち上がろうとして、バランスを崩す。
見れば左腕だけではなく、右足までもが断たれていた。
膝の球体間接部を強い力で引き裂かれていたのだ。
ああ、ダメだと蒼星石は感じる。
諦めの混じった絶望に打ちのめされる。
完全な少女になる為、ローゼンから頂いた体も心も砕かれてしまった。
片腕でも両足が残っていれば機敏に立ち回り庭師の鋏で戦えた。
あるいは足が無くとも両腕が残っていれば金糸雀のヴァイオリンで戦えた。
その両方を奪われて何が出来るというのだろう。
そんな彼女にグレーテルは、告げた。
「殺せば全てを取り戻せるわ」
と。
「命は殺し殺されることで回っているのよ。
殺す事で生きて行けるのよ。
ジェダとあの男の子はそれを理解していたのね。
三人殺す度にご褒美をあげるだなんて。
即物的だけれど、とっても判りやすいわ。
さあ殺しましょう、お姉さん。
お兄さん達を殺す事で壊された体を取り戻しましょう。
もっともっと殺して殺して進み続ける為に。
永遠に生き続ける為に殺しましょう。
それが世界のルールなんだもの」
それは信仰だった。
グレーテルの信じる宗教だ。
皮肉な事に、蒼星石の知るアリスゲームとも一部だけ合致している。
ローザミスティカを奪い合い完全な少女を目指す様に、
命を奪い自らの物とする事で生き延びようと諭すのだ。
「まだ……そうなのかよ。
ずっとそんなつまらねー生き方続けて行くつもりなのか」
「ええ、そうよお兄さん。私達はこうして楽しく生きていくんだわ」
囚われのニケが訴え、グレーテルはそれを嘲う。
どこまでも声の届かない底知れぬ深淵。
0269創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 00:46:05ID:c6qKem4N0270創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 00:55:50ID:VX5i0+ie0271創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 01:41:42ID:TlKjQXDM0272遺。(前編) 代理投下
2009/11/20(金) 01:44:52ID:TlKjQXDMあの時に殺していればお兄さんは私の命を取り込んで生きていけたのに。
可哀相に、お兄さんはそれが出来なかったのね。
生きる事は殺して殺して殺し続ける事なのに、殺さないんだもの。
殺さない人は死ぬしか無いのに。
殺せない人は死ぬしか無いのに」
痛切で。
残酷で。
哀しくも邪悪な、惨劇の信奉者。
誰が見ても“どうしようもない”存在だと思うだろう。
それでもニケは助けようとした。
救おうとした。
だけど。
「こうして、痛い目を見ながらね」
グレーテルが腕を振り下ろすとニケの言葉は絶叫に替わり、体育館を震わせた。
「い、一体何を……」
右腕を付き左足で起き上がった蒼星石は、ニケの姿を見て息を呑んだ。
その右手に何かが取り付けられていた。
いや、右手を何か小さくも禍々しい台に固定されていたのだ。
そして台に取り付けられたニケの右手は。
全ての爪を剥ぎ取られ、無惨な姿を晒していた。
爪剥ぎ器。
神社の祭具殿で見つけた、人間の爪を剥ぎ取る為の拷問器械だ。
蒼星石はその悪趣味さに目を背けたが、グレーテルは喜々としてそれを持ち出した。
犠牲者の手を指まで固定し、ペンチで爪を挟み、レバーを押すと、その生爪が、剥ぎ取られる。
一枚、一枚。
その痛みたるやどれほどのものか。
ただただ純然たる痛苦。
その痛みは戦いの中の、より深く命に関わる負傷すら比較にならない激痛だ。
これと同じ物がとある世界とある可能性のとある少女に使われた時は、
固く定まっていた決意さえも二枚の爪剥ぎで崩壊して、泣きを上げ、
三枚の爪剥ぎを終わらせるためには介添えを必要とした。
拷問に耐えられる人間など多くはない。
「う……くぅ…………死にそうに痛いっていうかとっとと殺せってこの野郎って思う位に痛いぞちくしょう。
ああでもやっぱり死にたくないので殺さないでくれるとありがたいです、ごめんなさい、だ……」
涙を零しながらそう呻くニケにグレーテルは微笑みを返す。
如何なる望みも聞くつもりが無い残酷さと、ほんの僅かな驚きを篭めて。
「やっぱり変わってるわね、お兄さん。
こういう事をしたら大抵の人は泣いて命乞いをするもの。
お兄さんもそうしているのにどうしてかしら、みんなの命乞いとは違う気がするわ」
どこまでも残酷で、冷酷な微笑み。
なのにそれは、痛々しいまでの無邪気ささえ感じさせるのだ。
見た者が矛盾した感想を抱く笑みと共に、グレーテルは続けた。
全き邪悪な言葉を。
「いっそ殺してくれって本気で思うくらいに痛みをあげたらどう言うのかしら?
次はどこが良い? 左手? 足? それとも爪が剥けた指を酸で焼いてあげましょうか?
きっと良い声で鳴いてくれるわ。
何時まで壊れずに居られるかしら?
ねえ知ってる?
人間の体って死んだ後も、釘を打ったりするとぴくぴくって反応するのよ。
見ていて結構面白いわよ?」
「見たくないね……っていうかそれじゃオレ死んでるから見られねーじゃねーか……」
「それじゃ、死んでいくのが見えるようにゆっくりと殺してあげましょう。
まずは指に塩酸かしら。傷口を灼くとみんな綺麗な悲鳴をあげるのよ」
「やめろ!!」
0273創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 01:45:46ID:kOUQiWG5とりあえず支援
0274遺。(前編) 代理投下
2009/11/20(金) 01:47:18ID:TlKjQXDM叫んでから自分の行動に戸惑い、グレーテルは楽しげにその顔を覗き見る。
「あら、どうして? お姉さんも殺す側なんでしょう?」
「それは……そう、だけど……」
その通りだ。
蒼星石は誰も彼もを殺す決意と共に、殺し合いに乗った。
殺して、殺して、殺した末に全ての死を否定する為に。
蒼星石はニケを殺すべき側に居る。
「ああ、ごめんなさい。そうね、自分で殺したいんでしょう?
私が殺したらご褒美はもらえないんだもの」
「ご褒美……」
「ええ、そう。お兄さん達を殺して手足を繋ぐんでしょう?」
これはその縮図。
捕えられた獲物の命を奪え。
誰かの命を奪う事で生き残れる。
再生の願いも叶う。
前に進める。
「さあ、召し上がれ」
彼らの命を奪うべき凶器は、蒼星石の目の前に置かれていた。
蒼星石が使う庭師の鋏。
雨に洗われた刃は、無機質で冷たい舞台照明に輝いている。
(……何を戸惑っているんだ、僕は)
蒼星石は残された右手で、左手用の鋏を手に取った。
両手で使う事も多かった鋏だ、逆手でもどうにかなる。
ましてや抵抗も出来ない囚われの子供達にとどめを刺すなんて、容易いことだ。
片側だけの足で舞台を踏み締めて、立ち上がる。
ドールの持つ飛行能力で、千切れた右足を補って。
それほど優れた飛行能力ではないけれど、歩く代わりには十分すぎる。
欠損した体のバランスに苦戦しながらも、蒼星石は獲物達へと進みだす。
地に足の付かない、滑るような進み。
舞台に用意された三人分の死を掴みとるために。
(そうだ、それ以外に道は無い)
ニケ達の死は決まりきっている。
例え蒼星石が殺さなくてもグレーテルが殺すだけだ。
蒼星石が殺せば、蒼星石も生きていける。
浅ましい言い訳だけど、蒼星石は生きて殺し続けなければならない。
生きる為にまず目の前の三人を殺さなければならない。
幾ら蒼星石が空を飛べてもこの足では機敏な斬り合いなどできない。
金糸雀のバイオリンも片腕では使えない。
手足が無ければ戦えはしない。
戦えなければ殺せない。
答えはもう一つしかない。
殺すしかない。
殺す為に殺すしか。
殺す。
殺せ。
殺せ、殺せ、殺せ。
0275創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 01:47:34ID:kOUQiWG50276創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 01:48:50ID:LoNp/PnP0277遺。(前編) 代理投下
2009/11/20(金) 01:48:54ID:TlKjQXDM人の心の成長を妨げる雑草を刈り取る為の鋏。
思い出を刈り取る事も出来る鋏。
人を前に進ませるための鋏で、人を殺せ。
懊悩と焦燥に翻弄されながらもニケは鋏を振り上げる。
振り下ろして喉笛を掻っ切れば血流と呼吸は断たれて速やかに死が訪れる。
延々と痛みが続く事も無く、一瞬の衝撃と鮮烈な赤が速やかに意識を刈り取るだろう。
その鋏を、振り下ろせば。
「おまえ……さっきの奴か……」
痛みに呻きながらも、ニケは蒼星石を見つめていた。
楔に封じられた両腕。
爪を全て剥がれた、見るからに痛々しい右手。
逃れる術は無く、抗う術は無く、生きる術は最早無い。
ただ死を待つ事しか出来ない身。
きっと未来が有ったはずなのだ。
生きるという可能性が無限に広がっていたはずなのだ。
この島に連れて来られなければ。
だけどこの島に居る以上、蒼星石は彼を殺す他に無い。
蒼星石はニケを見下ろし、そして。
「痛そうだな………………ワリィ……」
「え……」
ニケは蒼星石を見上げている。
蒼星石の左腕を見つめている。
いや。
「くそお、やっぱりこういう傷って死ぬほどいてーっ。
ヴィータもこんなに痛かったんだな……なのはの奴、無茶苦茶しやがって。
あいつ……こんなに痛いって判っててこんな事したのかよ……。
死ぬほど痛いって判ってて。
…………ちくしょう、痛いじゃねーか」
蒼星石の落とされた左腕の向こうに、誰かを見ている。
その意識は半ば朦朧としているのだろう。
取り留めの無い言葉をぽつぽつと紡ぐ。
「魔物と戦う時はどれだけ斬ってもなんとも思わなかったのに。
だって勇者として当然だし、魔物だから当然だし。
今でも何にも変わってねーのにさ、胸が痛いんだ」
どこか理解できない言葉。
どこかで聞いた言葉。
蒼星石は頭を振って、鋏を握り締める。
もうどうしようも無いのなら、早く、楽にしてやろう。
今度は自己欺瞞でなく、心からそう思う。
そして狙いを定めた鋏を。
「やっぱり女の子を泣かしちゃ、いけねーよな」
振り下ろす事が、出来なかった。
0278遺。(前編) 代理投下
2009/11/20(金) 01:50:14ID:TlKjQXDM「キミ、は……」
「へへ、おまえ男の子みたいな格好してるけど、女の子だろ?
オレの目を誤魔化せると思うなよ、今度は間違いないぜ。
さっきも近寄ってきた時にズボンの隙間拝ませてもらいました、白でしたっ」
バーバラパッパパー♪ 【ニケの称号『すけべ大魔神』のレベルがあがりました】
「な……一体、何を考えて……」
蒼星石は困惑する。
死を間際にして、何をバカな事を言っているのだろう。
遂に頭がおかしくなってしまったのか。
ニケの表情は痛みに歪み、引き攣っている。
何もしないようにしていてもなお、爪を剥かれた指からは痛みが走っているはずだ。
とても痛い、痛い、疼痛が。
それでもニケはふざけを交えて言った。
「オレってこれでも勇者様だからなっ。
女の子なら敵でも、泣いたり助けを求めてるのを放ってはおかないぜ!
あ、お近づきになりたいとか下心が有るわけじゃ無いからな。う、ウソじゃねーぞ?」
「だから何を言って……!」
蒼星石はようやく気づいた。
自分の瞳から涙が溢れて、零れ落ちている事に。
その水滴がニケの顔を叩いていることに。
「腕、痛かっただろ。指だけでこんなに痛いんだからさ」
「…………ぁ……」
そうじゃない。
ドールにも痛みは有るけれど、斬られた後の断面はじきに痛覚を失う。
斬られた時だって、剣のカードで放たれた斬撃は痛みを超えて衝撃しか感じられなかった。
別に耐えられないほどの体の痛みじゃない。
そうじゃなくて。
「それともおまえも、誰かに助けて欲しいのか?」
本当に痛むのは、心だ。
愚かしい躊躇いだと思う。
この世界に生命の復活は存在する。
タバサが語り、ジェダが証明した。
全てを取り戻す可能性が有るとすれば、それに縋る他に無い。
何一つ諦めたくないならば、それは全ての屍を積み上げた果てにある。
その為なら挫けてはならない。
殺さねばならない。
人間を直接傷つけてはならないというドールの定めすら、とうの昔に背を向けた。
混乱し蒼星石に襲い掛かったイシドロの片腕は失われ、その命も戦いの中で吹き消えた。
蒼星石自身も自衛ではなく誤解から、敵意を糧にして人を襲った。
挙句にタバサを傷つけ、逃げ出した。
そして今からは自ら手を出さず誰かを手助けするのではなく。
憎悪の発露から襲うのでも、咄嗟の感情による暴発でもなく。
自らの固い決意を持って命を奪わなければならない。
0279創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 01:50:59ID:LoNp/PnP0280遺。(前編) 代理投下
2009/11/20(金) 01:51:44ID:TlKjQXDM姉妹との絆も、島で繋いだ絆も、全てを切り捨て、斬り殺して辿る他にない。
何度も、何度も反芻する。
殺さなければならない。
殺すよりほかに無い。
「なんならオレが助けて……ぐあっ!!」
生温い液体が顔に掛かった。
赤い飛沫が飛び散っていた。
「ええ、そうよお兄さん。助けてあげて。
その命をお姉さんにあげるのよ。
その死をお姉さんに捧げるのよ。
そうしなければお姉さんは助からない」
「や、やめ、いてえ、いてえってぎゃ、マジでっうああああああっ」
蒼星石は呆然と、それを見つめていた。
グレーテルの巨大な槍がニケの腹に突き立っていた。
まるで竜にも見える槍先が、その牙でニケのはらわたを貪り漁る。
手首の一捻りは一抉り、一押しは一刺し。
捻り、押して、引いては押して、捩って、押して、震わせて。
勇敢な少年の絶叫は最早凄惨な断末魔にしか聞こえない。
「やめろ! 僕がやる!」
蒼星石がそう声を上げた時、既にニケの腹部は直視に耐えかねる有様だった。
びくり、びくりと痙攣し、赤い花が広がっている。
まだ、死んではいない。
グレーテルは即死するほどの急所を避けて傷つけた。
意識もすぐには失うまい。
そう、まだ、すぐには。
「そう。それじゃ早く殺しましょ。
摘み食いしてごめんなさい、お姉さん。
早く食べないと冷めちゃうわ」
もうどうしようもない。
いや、とうの昔にどうしようもなかったのだ。
ニケの命は処刑台の上にあった。
グレーテルと同じ処刑人に過ぎない蒼星石が出来ることは一つだけ。
蒼星石は鋏を、もう一度、掴み取った。
振りかざす。
ニケが蒼星石を見上げる。
目が合って、それでも。
振り下ろした。
0281創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 01:52:02ID:kOUQiWG50282創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 01:52:27ID:LoNp/PnP0283遺。(中編) 代理投下
2009/11/20(金) 01:53:06ID:TlKjQXDMそのはずだった。
「…………え……?」
それなのに、彼が死んでいないのはどうしてだろう。
振り下ろしたはずの腕が下りていないのはどうしてだろう。
鋏を掴み、振り下ろそうとしたその体勢のままで。
固まったように動きを止めているのは、どうしてだろう。
殺すはずなのに。
殺すしか無いのに。
殺す覚悟をしたのに。
殺そうとしているのに。
どうしてまだ、この腕は止まってしまうのだろう。
どうして。
どうして。
どうして。
「お姉さんは、できなかったのね」
背後から聞こえるグレーテルの声は嘲りと蔑みと哀れみを孕んでいた。
「時々居るのよ、そういう子が。
それが世界のルールだって突きつけられて、頭では理解しているのね。
それなのにどうしてか、最後の一歩を踏み出せない。
勇気を出せない。
意気地無しなんだわ。
寒い夜に真っ赤で温かいシャワーを浴びることが。
恐怖に潤んだ綺麗な瞳を抉り出すことが。
自分より低い頭を叩き割ることが。
命乞いをする喉笛を縊ることが。
どうしてもできない、そんな子達よ。
上手くできない子は多いけど、やることさえできない子がたまにいるの。
そんな子がどうなるか、お姉さんはわかるかしら?」
蒼星石は、這うように。
ぎこちない、人形のように軋む動きで、背後を振り返って。
そこには。
「大人たちは言いました。
『その子をみんなで殺せ。殺すのを躊躇った子も殺せ』」
蒼星石に向けて、ショットガンを構えたグレーテルの姿があった。
目の前の光景とニケの叫びが視聴覚から認識されるよりも早く。
「命を食べられない偏食の子はお腹を減らして死んでしまいました」
引き金が、引かれた。
蒼星石の残った右腕が吹き飛んだ。
0284創る名無しに見る名無し
2009/11/20(金) 01:53:58ID:LoNp/PnP0285遺。(中編) 代理投下
2009/11/20(金) 01:54:19ID:TlKjQXDMヒビが入った左足も動かなくなる。
宙に浮かぼうともこれではバランスを崩すだけ。
壊された人形は打ちのめされて床に這う。
「お姉さんももうおしまいね。残念だわ。
右足も壊して発破を掛けてあげたのに。
お姉さんがお兄さんを殺せたら、私がもう一人のお兄さんを殺してもらうご褒美で、
あなたを治してあげようかと思っていたのにね」
「う……な、なに…………?」
右足を破壊したのがグレーテルだという言葉にも動揺を覚えたが、更にその続き。
蒼星石が囚われの三人、ニケ、メロ、ブルーを殺して、自分のご褒美で自分を治す。
そういう話ではなかったのか。
グレーテルはくすりと笑い、布を掛けられた黒髪の少女に歩み寄る。
光の具合で深い藍色にも見える長い髪が除いた、三人目の人影に。
グレーテルは足を振り上げて。
その人影を、蹴っ飛ばした。
被せられていた布がはだけた。
「……その……子は…………!?」
蒼星石は息を呑む。
一瞬だが先ほどの戦いで垣間見た少女とは姿が違う。
一回りは小さく、泥に汚れた、血の気を失った土気色の肢体。
息絶え絶えのニケも、横に転がるその遺体に息を呑んだ。
蒼星石はその死体が何処から来たのかを知っている。
塔から神社へと南下した際、神社を一通り調べて回った。
その時に見かけた土を盛られただけの簡素な墓。
蒼星石が止める間も無く、グレーテルは突撃槍のエネルギーで土を吹き飛ばした。
そこから姿を現した、黒い髪の少女の死体。
古手梨花の死体だった。
「どうして? その死体は墓穴の中に置いてきたはずじゃ……」
「だってもう一人は逃がしてしまったんだもの。私も残念だわ」
だからグレーテルは、戯れに神社へ向かいその死体を持ってきた。
布を被せられた大き目の人影が、小さく震えた気がした。
その中に居る誰かが笑ったように思えた。
「お姉さんは永遠に生きられなかった。
お兄さんを殺せなかった。だからここでおしまいなのよ」
グレーテルは手に握る突撃槍を、まるでナイフのように軽々と振りかざして。
振り下ろそうと、して。
ガラスの割れる音が響いた。
「あら、お客さんだわ」
グレーテルは楽しげに笑った。
それは体育館玄関口のガラス戸が割れる音だ。
鍵を掛けられたガラス戸はそれ自体が風景に紛れ込んだ鳴子だった。
隠れ家に警報装置を仕掛ければ、その警報装置自体がそこが隠れ家である事を報せてしまう。
だからこの体育館の場合は、ただガラス戸に鍵を掛ければ良い。
それだけで無理に入ろうとすれば騒音の響く警報装置が出来上がる。
グレーテルが倉庫をぶちやぶった為に無意味と化していた正門を通り、それは侵入してきた。
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