【後発的有効論について】

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問八 後発的有効論のうち、追認説について説明してください。

答八
 初めに留意すべきことは、この見解は、始源的には現行憲法は「無効」であることを認めているということです。
つまり、現行憲法を有効として主張してきた人々は、当初は八月革命説や条約優位説、さらに改正無限界説を
採っていましたが、これらの学説があまりにも矛盾が多く無力であることを後になって気付きました。
しかし、それまで有効論を展開してきた自己の社会的地位を維持するため、苦肉の策としてこのような見解を編
み出したのです。
 つまり、民法では、強迫による意思表示は、瑕疵ある意思表示と呼ばれ、確定的に有効な行為ではなく、その
強迫行為から逃れた後に、自由な意思によりこれを取り消したり、あるいは追認することができることになってい
ます(第九十六条)。そして、追認説は、この規定の論理を憲法においても借用して、GHQの強迫によって帝國
憲法を改正して生まれた現行憲法は、その後に「追認」があったので有効となったとするのです。
すなわち、ナチスの占領終了とともに占領法規は破棄され、ベルギー、オーストリアは旧憲法を復活させ、フラン
スは新憲法を制定した例や、東欧のソ連傀儡政権の憲法もソ連崩壊とともに破棄された例もありましたが、我が
国では、独立回復後になっても現行憲法を破棄せず、現行憲法に基づいて立法、行政、司法の国家作用を行使
し続けたことは少なくとも黙示の追認に該当するというのです。
 しかし、追認の意思表示というのは、強迫によってなされた意思表示と同様の方式と要件に基づいてなされるこ
とを要するものです。つまり、帝國憲法に規定する憲法改正の手続と同等の方法と要件に基づいてなされなけれ
ばなりませんが、そのような議決どころか何らの手続も今まで一切なされておらず、追認があったとすることはで
きません。
 また、そもそも、現行憲法の制定は、ヘーグ条約などの確立された国際法秩序に違反してなされたものであり、
民法のレべルで論ずれば、明らかに公序良俗に違反する行為として絶対的に無効(第九十条)です。
これは、強迫による意思表示というような取消うべき行為ではなく、追認によっても有効とはならない絶対的無効の
行為ですから、追認して有効になることはあり得ないなのです。公序良俗違反の行為を追認して有効にすることは、
結果的には公序良俗違反の行為を認めてしまうことになるので、追認は認められないのです。
ですから、現行憲法については追認の問題は起こり得ません。

 さらに、我が国が独立を回復した講和条約と同時に締結された安保条約は、実質上ポツダム宣言による占領の
継続であり、安保条約破棄後でなければ追認はあり得ないとする有効論からの自己批判的な指摘すらあります。