古い人が陥りがちな思考の罠に、崖の高さが日々高くなっていることに
対する認識不足がある。

10年前、その崖の高さは3メートルだった。ジャンプすれば上によじ登ることが
できたのである。
しかし崖は日々高くなり続けた。早くから昇り始めた人は、ときどき崖が
すこし高くなっていることに気づくと、高くなった分30センチひょいと
登るというのを数多く重ね、崖の上やその上部に留まりつづけている。

だがふもとから見てみよう。崖の高さは今や20メートルに達している。

初心者がふもとから叫んでいる。
「どうやって登ったんですか〜!」

これに
「跳び上がったら上に手が届いたよ〜!」

と叫び返してはいけないのである。