カテコールアミンの前駆体であるL-チロシンの【長期投与】は慢性ストレスがもたらす行動を緩和することが知られているが、
急性ストレス時にL-ならびにD-チロシンの効果を比較した報告はない。
本研究では、急性ストレスに対するL-チロシンとD-チロシンの経口投与がマウスの行動に及ぼす影響と
脳内の両チロシン濃度に及ぼす影響を調査した。
オープンフィールドにおける行動量にL-ならびにD-チロシンの効果は認められなかった。
経口投与35分後にL-チロシン投与により血漿L-チロシン濃度は急激に上昇したが、D-チロシンの投与では血漿D-チロシンの緩やかな上昇が観察された。
興味深いことに、対照区の各脳部位(大脳皮質、海馬、線条体、視床、視床下部、脳幹ならびに小脳)において、
D-チロシンの濃度はL-チロシンの1.8-2.5倍高かった。
すべての脳部位において、L-チロシンの投与によりL-チロシン含量は増加したが、D-チロシンの投与でD-チロシン濃度の上昇は認められなかった。
上記より、急性投与したL-チロシンとD-チロシンは【行動量に影響しない】が、
L-チロシンとD-チロシンの脳内移行の様相は異なると結論づけられた。
https://ci.nii.ac.jp/naid/130004951830