毛利元就は臨終に際してまだ大勢の子供達がいたので暇を乞わせ残さず呼び集めた。
そして子供の数ほどの矢を取り寄せると子供達にこう遺言した。
「矢は一本ずつ折れば問題なく簡単に折れるものです。
しかし、この矢を一つに束ねて折ればたとえ細い物でも折れなくなります。
各自、同じ思いで親の私の言うことをよく聞かなければなりません。」

そこで控えていた小早川隆景はこう付け加えた。
「兄弟が不和になるのは何事もみな欲から発生する問題ですから、欲を捨て義をしっかりと守り通せば
兄弟の仲が悪くなることはあるわけがないのです。」

これに元就は大いに感心して「各自、隆景が今言ったことに従うように。」
と子供達に言い聞かせたという。

――『前橋旧蔵聞書』