伊達政宗公について、第一の名誉なる不思議で有難く思われたのは、初めて
他家の人と御目見得されると、下々と対しても言うに及ばず、一度顔を見て名字を聞かせられれば、
それを忘れるということが無かった、という事である。
人々は、大変有難いことだと感じ入った。

また殊更に有難く思われたのは、ある者に歴然の落ち度があって、定めて厳しい御究明があると
思われるような事であっても、誰かに御取り成しを頼み、また誰かを頼んで堅く陳情申し上げると、
政宗公はその言い分に任せ、その言葉を疑うなどということは夢にもなかった。

そのように家臣を信頼したので、逆に人々は、一層政宗公を恐れたという。
これも政宗公の、人々にむやみに過失を負わしたくない、という心によるものなのである。

(政宗公御名語集)

伊達政宗が、人に対してものすごい記憶力の持ち主だったというお話