あの老武士は、老いぼれているのでなかろうか?
各方面から招かれれば気安く受けて出向いては、
なんやかんやと熱心に話をしているそうだ。
ここ数年のあの方を見ていても、
世のため人のためになることを考えて暮らしているのがよくわかる。
このうえもない奉公好きとしか言い様がない。
だから、ひときわ目立っていたしお役にも立っていた。
しかし人間というものは耄碌するときには、
自分の得意であったことが剥き出しに出てくるもの。
これは奉公耄碌だろう。
たとえ人のためだとしてもこの耄碌は危険である。
老人はあまり世間に出歩かない方が重みもあり、
そのほうが言行も整っているように見えると思う 【葉隠】