南龍公徳川頼宣が船で沖に出た時のこと。
この日、大雨洪水となり船は海上三里まで漕ぎ戻され、さらに頼宣の乗る船に雷が落ちた!

と、頼宣の御座の近くに火の玉が転がってきた。コレを見た頼宣はすぐさま毛氈を取ってこれに打ちかけ

「それ!手取りにせよ!」

と下知する。近習の者たちも常の男ではない者ばかりであったので「心得た!」と、この火の玉を抱え取ろうとするが、
しかし火の玉はここかしこと動きまわり、ついに取り逃がした。

ちなみに、船の下の間に詰め居た水夫たち5,6人はその時、雷の直撃により全員炭となり、骨も砕けて死んでいたそうである。
(武野燭談)

徳川頼宣の、豪胆なんだか呑気なんだかよくわからないお話。