少弐政資といえば至って悪の人であり、どんな事にも非義の行いが多かった。

ある時の事、宗像の大宮司より政資に、印子金(良質の金)で作った獅子の像一匹を増進された。
その姿は後ろを向く形であったため、政資は、対となるもう一匹があるはずだと思い、それも合わせて
自分に渡すようにと、所望の使いを、数度にわたって大宮司へと遣わした。

しかしその獅子像は元来1匹しか無かったため、大宮司はその旨を伝えその要求を断ったのであるが、
政資はこれを信じず、

「私に渡さないため深く秘蔵するとは!なんと憎いことか!」

と大いに怒り、ついに大宮寺を自害させた。大宮司は自害に及んで、このような辞世の句を詠んだ

『根をたてば 末は枯葉の藤原や 何せうにとて打捨にけり』(藤の原と、藤原氏である少弐氏を懸けている)

後に大内義興によって追討された、少弐政資についての逸話である
(陰徳太平記)