賤ヶ岳の合戦で柴田軍が討ち負け崩壊すると、佐久間玄蕃允盛政はともかくも合流しようと加賀まで
向かったところで、中村と言う場所で落ち武者狩りの郷民に取り囲まれた。
盛政は彼らを睨みつけ

「私の命運はここに付きた!再び合戦をしても勝機はないだろう。
お前たち、あの藤吉猿面郎のところへ私を連れて行け!ひとこと言っておきたいことがある。」

こうして盛政はこの郷民たちに捕われ、北の庄の浅野長政のもとに連行された。
長政は盛政を見て、彼を侮るように言った

「あなたは鬼玄蕃とまで言われた人ではないか!どうして未だ死なずにいるのか!?」

盛政はこれを聞くと
「汝はなんと愚かなことか。かつて源頼朝は大庭景親に負けて伏木の中に隠れ、将軍足利義稙(原文では義昭)は
細川政元に捕われ幽閉されたが、後についに脱出し大功を立てたではないか!
将たるものが、どうして容易く敵に自分の死を許すことがあろうか!」

これを聞いた人たちはみな、盛政の凄まじい気魂に舌を巻いたという。

(佐久間軍記)