北条氏長殿が江戸で流行っていた人相占いを呼んで、
門弟たちの一人一人、剛胆か臆病かと人相を見てもらった。

北条氏長
「剛と言われた者は今以上に武士の道に励め。
臆病と言われた者は命懸けで武士の道に励め。
臆病と言われたからとて生まれつきの人相であるから少しも恥ではないぞ」

と言い順番に一人一人見てもらっていたとき、
広瀬伝左衛門(12歳)の順番になった。
伝左衛門は人相占いの前に坐ると、声をいからせ、

広瀬伝左衛門
「おのれ、俺を臆病の人相などと判断したなら、一刀に斬り捨ててくれる」

と言ったとのことである


葉隠より