戦国ちょっと悪い話
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0029人間七七四年
2008/08/30(土) 22:45:10ID:YOJDVcFh五人の家臣の手によって、罪を得た三名の侍の、死刑が執行された。
二人の首をはねたあと、残った一人の首をはねようとすると、その侍は哀れみを誘う声でこういった
「お願いです。せめてもの武士の情け。この後ろ手に縛られている手を、前に括っていただけないでしょうか?
そうすれば縛られていても、死ぬ前に神仏にお祈りすることが出来ます。どうか。どうか。」
侍とはいえ、丸腰で縛られている。また、憐れでもある。それに此方は腕の立つものが五人。彼を恐れるのも
馬鹿馬鹿しい話だ。そう思い、囚人の願いを聞き入れ、側にいた一人が後ろに回り縄を解き、前に縛りなおそうとした。
その時である
囚人はすばやく立ち上がると縄を解いた男に猛然と襲い掛かり、相手の刀を奪い取るやいなやたちまち、一刀の下に
切り捨てた。
突然の事に残る四人は狼狽しながらも、囚人を逃がしてなならぬと円陣を組んだ。一人が踏み込む。
が、すばやく横払いされ倒れた。他の三人を目で制し、止めを刺す。三人は恐怖に襲われた。ばらばらに踏み込む。
もはや囚人の思う壺である。家中腕利きの五人はこうして、たちまちのうちに全員が斃された。
囚人はそのまま脱兎の如く逃げた。全身に返り血を浴びて真っ赤な姿で。すると、そこは当時の九州、
近くに教会のあることに気がついた。彼は教会の中に乱入した。そこにいた宣教師に、彼はこう言い放った
「わしは今よりキリシタンとなる!よって、わしを保護せよ!」
囚人であっても、宗徒を名乗った以上、教会は保護しないわけには行かない。また、竜造寺家にとっても、
彼を追跡する事でキリシタンと摩擦が起こった場合、貿易から言っても、領国経営から言っても、難しい判断を
迫られると考えるであろう。これらを全て計算した上での。この囚人の改宗宣言であった。
後日この囚人は教会の手引きにより、長崎へと逃げ延び、無事、生きながらえたと言う。目論見どおりであった。
悪くて強くて頭のいい、戦国の囚人のお話
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