今川が油断したから信長に負けた、というのは説得力に欠ける。戦いは個人戦ではない。義元がいくら油断したとしても、部下がそれに付き合う必要はない。
桶狭間の戦いでは、まず織田方の丸根、鷲津砦が陥落、残る織田方の砦は中島、善照寺の二つのみ。このうち善照寺は台地の上であるのに対し、中島は川の合流点。
中島さえ落とせば鳴海城の包囲は解け、物資の輸送も可能になる。つまり、誰が攻めても中島砦が次のターゲット。もし、真面目に戦おうというなら、中島砦の周囲に兵を集める以外にやることがないだろう。
中島砦の付近に兵力が展開していれば、織田軍はそこから出撃するのが困難になる。砦の外へ出ても待ち構えている今川軍の餌食になるのは目に見えている。
ところが、信長は中島砦から出撃して、先へ進み、桶狭間の義元軍までさしたる抵抗を受けずに進軍している。
今川軍は油断するにもほどがある。こんな油断など常識では考えられない。義元が油断したからと言って、それに付き合ってやるべきことを何一つやらない軍隊など考えられない。