
同居の大学生の長男と高校生の長女を包丁で刺して殺害しようとしたとして、殺人未遂罪に問われた母親の女性被告(47)に対する裁判員裁判の初公判が4日、
東京地裁(神田大助裁判長)であった。
弁護側は事件直前に新型コロナウイルスによる肺炎で被告の夫が亡くなったことを明らかにした上で、将来を悲観して無理心中を図ったと主張した。
被告は起訴内容を認め、「心の支えだった夫が急に亡くなったことがショックで、やっていけないと思った」と述べた。
起訴状によると、4月24日午前7時40〜45分ごろ、東京都大田区の自宅で、大学2年の長男と高校2年の長女の胸を包丁で刺し、殺害しようとしたとされる。
長男は全治約10日間のけがをし、長女は全治約1カ月の重傷を負った。
被告も玄関先に置かれた陶器に自ら頭を打ち付けるなどして自殺を図った。
弁護側の冒頭陳述によると、医師の夫が事件の6日前の4月18日に急死し、死後の検査で新型コロナによる肺炎と判明した。
さらに同21日には被告自身と長女の感染が判明し、自宅療養を余儀なくされた。長男も事件後に感染が明らかになった。
被告は日々の生活や家計の管理を夫に任せてきたが、夫の死後は約20枚あった夫のクレジットカードの解約や長男の学費の支払いなど膨大な手続きに直面。
自身のコロナ感染で全身に倦怠(けんたい)感があったほか、感染対策による外出自粛の時期だったことから親族や友人に相談できずに追い詰められていったと主張した。
「自分がいなくなった後、子どもたちにも同じような思いを味わわせたくない」と短絡的に絶望感を深め、無理心中を図ろうとしたという。
被告は被告人質問で長男と長女に対し「償っても償いきれないことをしてしまい、申し訳ない」と謝罪した。弁護側は、執行猶予付きの判決を求めている。