「国立の研究大学は『投資に見合うリターン』を生み出し、『知識産業』へと脱皮せよ」。国立大学の経営改革をめぐり、内閣府で交わされている議論の中にはそんな意見も出てきます。

 「『企業のニーズ』に基礎研究が潰される」(2月26日)の中で、豊田工業大学シカゴ校(TTIC)学長の古井貞熙(さだおき)さん=写真=は、「大学は、多様な価値観に基づく、教育と研究の場」だから「産業界のニーズに合わせるのは全く的外れだ」としてこうした考え方を批判。
 
根本的な問題は「日本で基礎研究が衰退しそう」になっている点にあり、「基礎研究がなくなったら、産業界にそれを生かすどんな仕組みがあっても、意味がない。涸(か)れそうな井戸に強力なポンプをぶち込んでも意味がない」と主張します。

 経営難に陥る大学も少なくない中、どの大学も生き残りをかけて必死です。とはいえ、目先の「役に立つ」ことを最優先することで失うものも多いと思えてなりません。

 国際競争力を付ける上でも「大学教員の本来の仕事は基礎研究と教育だ」。古井さんからのエールです。

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