地方自治法違反
元町議に町営住宅売却 福岡・福智町
毎日新聞 2017年8月18日 07時30分(最終更新 8月18日 07時30分)

 福岡県福智町が地方自治法で売却を禁じられた「行政財産」である町営住宅を、居住者の元町議(88)に売却していたことが17日、関係者への取材で分かった。
町営住宅の土地の一部は売却前から県の護岸工事の用地となることが決まっており、元町議は購入後に転居して県から移転補償費約4600万円を受け取っていた。
嶋野勝町長は元町議から売却を再三要求された事実を認めており、町営住宅を巡る不透明な土地取引が浮き彫りになった。

 関係者によると売却したのは同町伊方にあった町営住宅「尾崎団地」の土地約640平方メートル。
団地は2世帯が入居する木造平屋住宅約60平方メートルで、元町議は1部屋の一部を増築して入居していたが、老朽化のため町が2013年3月に払い下げを決定。
14年12月に建物を無償譲渡し、土地は129万円で売却した。

 町営住宅は、自治体が所有する財産のうち「行政財産」に区分され、地方自治法は原則として売却や譲渡を認めておらず、違反すれば取引は無効と定めている。
用途廃止をして「普通財産」に変えるか、国土交通相の許可を得れば売却できるが、町はいずれの手続きも取っていなかった。

 さらに、この土地の一部は売却前から、近くの長浦川の護岸工事用地として使われるため、移転補償の対象になることが決まっていた。
14年7月の豪雨で護岸が損壊し、嶋野町長が県に工事を求める要望書を提出。
これを受けて県は護岸工事を決め、同年12月16日、住人の元町議に町営住宅の土地の一部が移転補償の対象になることを伝えた。

 元町議は同年8月に町長らに早期売却を強く求めるなどして、同年12月24日に町営住宅の土地を購入。
移転補償対象だった一部の土地以外も工事車両置き場に使うことになり、15年9月、県が元町議に移転補償費約4600万円を支払うことで合意。
元町議は町内に新築した自宅に転居した。

 元町議は1999〜2011年に町議を3期歴任。土地購入時は部落解放同盟福智連絡協議会委員長だった。
嶋野町長は「元町議に依頼されて早期売却を指示した。行政財産の売却が違法とは知らなかった」と釈明。
元町議は「売却を働きかけたことは一切ない。移転補償の対象になるとは予想していなかった」と話している。【志村一也】
https://mainichi.jp/articles/20170818/k00/00m/040/140000c.amp