唯「天上のノモス!」
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0001以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/18(金) 01:22:55.73ID:7A3qvQVI0およびその秩序が保たれている状態。
−2009年 12月16日 琴吹邸
唯「重いよぉ〜」
律「もっと腰を入れろ腰をっ!!はっ!」
0122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/18(金) 23:24:46.73ID:puF+8G04O0123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/18(金) 23:31:25.72ID:7A3qvQVI0不要とされたより多くの排泄物を体外に捨て去る。』
『同じように、あの子の一族の富を糧に生きるものも多いけれど、
その分だけ、あの子の一族に起因する悪のために苦しむ者達も多い。』
『人間は汚れている、と考えたモノから目をそらそうとする。
これを虐待し、遠く離れたままにしておこうとするの。』
『あなたの生きるこの時代は、人間の歴史のなかで
最も、それが極大化している時代よ。』
『さて。』
『…今日はここまで。』
0124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/18(金) 23:39:10.53ID:7A3qvQVI0唯「…」
唯は黙ったまま。
『ふふ…大丈夫よ、ゆい。あなたは、結晶のような意志を持ち
その意志のもと、透徹した直感を持っているのだから。』
0125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/18(金) 23:46:16.33ID:7A3qvQVI0精霊が描いた軌跡の残り香を見つめる唯。
唯「わたしも、たくさんの人を、苦しめてきた…のかな…」
そう独り言つ。
京都の冬はまだまだずっと、寒くなるはず。
0126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/18(金) 23:54:37.85ID:7A3qvQVI0一同は食堂に会して夕食を摂っている。
今回は紬の父も同席している。
律(しかしまあ、親子で立派な眉毛ですこと…)
律は盗み見るように、琴吹父と琴吹娘の額あたりを見比べる。
紬の父も、それはそれは太い眉毛(ただし毛色は黒色だが)を持っている。
まるで、ぶっとく海苔を切り取って貼り付けたかのよう。
0127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 00:01:52.29ID:7A3qvQVI0律(しまった…!)
律「え、あ、ああ、いやぁ…ハハハハハハ…」
笑ってごまかそうとする律。
梓(これだから…)
ため息をつく梓。
0128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 00:09:19.52ID:CeVfSM5f0紬父「着脱可能だと誤解されることもあるぐらいなんだよ?」
紬母「まあ、あなたったら♪」
紬の父は、にこやかに笑いながらそう言う。
やはり彼もどことなく、紬と同じ優しい雰囲気を漂わせている。
唯「あの、ムギちゃんのお父さん…」
唯が唐突に口を開く。
0129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 00:17:25.32ID:CeVfSM5f0紬の父は、唯に顔を向ける。
唯は上座に座る紬の父の斜め左奥、
紬や律とテーブルを挟んで対面する形に座っている。
唯の両隣には憂と梓がいる。
唯「あの、聞きたいことがあるんです、けど…」
紬父「言ってみなさい、平沢くん。」
優しく微笑みかける紬の父。
0130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 00:25:31.72ID:CeVfSM5f0心がけていることって、何なんですか?」
律(ん?唯らしからぬ真面目な…)
律は訝しげに唯を見やる。
紬父「ふむ…」
視線を天上に吊るされたシャンデリア状の照明に向け、
数秒、何事かへと考えを向ける、紬の父。
0131以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 00:28:48.97ID:Uui4qy2v00132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 00:35:48.54ID:CeVfSM5f0視線を唯へもどし、真面目な、しかし柔らかな目持ちで答える。
紬父「そのうちで最も大切だと私が考えることは…」
紬父「私が判断と決定う場合に、最高度の内容と速さを持って、
この二つを行うこと、かな。」
紬父「これが、リスクを回避する上で最も重要なこと、
と考えているね。」
0133以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 00:49:04.57ID:CeVfSM5f0実を言うと、紬の父の回答は、唯にはよく理解できなかった。
『状況判断と命令』の重要性を、まだ年若い唯は、
現実味を持って捉えることができないのだ。
紬父「例えばだ、ある人が心臓発作で倒れたとしよう。」
唯がうまく反芻できていないことを悟り、紬の父はこう続ける。
0134以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 00:58:55.86ID:CeVfSM5f0その患者を病院まで搬送する。」
紬父「脳内出血や心臓発作から生還する可能性は、
時間との格闘だ、ということはわかるね。」
コクリ、と唯は首肯する。
紬父「それに、応急処置や救急隊員の処置が不味いものであった場合にも、
あたりまえだが、患者の命はそれだけ危険にさらされる。」
紬父「企業を運営管理することも、これと同じ、ということになるね。」
唯「あ、そっか…」
唯は合点がいったようで、ふんふん、と頭を少し揺らす。
0135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 01:06:15.52ID:CeVfSM5f0コンコン。
食堂の扉がノックされる音がする。
扉の脇に控えていたメイドがゆっくりと扉を開ける。
「失礼します。」
スーツ姿の女性が入室してくる。
すらりとした長身、肌は白く細かく、長い銀髪を有している。
黒ふちの細長い眼鏡をかけ、
片手にブリーフケースのようなものを持つ。
二十代、ということはわかるが、正確な年齢の推定は難しい。
0136以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 01:08:26.66ID:HoC6ZvDcO0137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 01:15:07.71ID:CeVfSM5f0銀髪の女性の容姿に、うっとりとする唯。
となりの憂のほうから、ギチギチギチ、
と歯軋りする音が聞こえる。
律(ムギよ、随分とまー美人なおねーさんだな…)
律が隣の紬にそう囁く。
紬(でしょう?『白銀(しろがね) ありす』さんって、あの若さで
お父さん直属の秘書室長をなさっているの。)
律(ありす??変な名前ぇ。)
0138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 01:30:15.32ID:CeVfSM5f0梓は、スカッスカッ、と自分の胸の前で両手を動かす、
銀髪の女性は、紬の父の側面に立ち何事かを報告している。
紬父「了解した、食事が終わり次第向おう。」
報告が終わると、銀髪の女性は紬の母と紬のほうへ一礼する。
その直後、銀髪の女性が面をあげたとき、
唯の視線と女性のそれが交差した。
ほんの一瞬、女性の、薄紫の瞳が唯の瞳を射る。
唯「??」
そして、何事も無かったように、女性は扉へと向かい
食堂から退出していった。
0139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 01:43:23.76ID:CeVfSM5f0そして日が替わる。
12月19日9時 和の家 玄関
和「いらっしゃい、あがってちょうだい。」
唯「お邪魔しまーす。」
律(いやぁ、今朝までムギんちだったからカルチャーショックだわ。)
律は和の家を見つつ、そう思う。
0140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 01:51:06.99ID:CeVfSM5f0和「そうね、スープの冷めない距離ってやつかしら。」
律「つまり、それだけ色々と唯に
迷惑をかけられて来たわけだな、和は。」
唯「りっちゃんひっどーい!!」
律「ザリガニ事件聞いた時はさすがに引いたぞ…」
唯「あ、あれはぁぁ…///」
0141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 01:59:22.85ID:CeVfSM5f0唯、後でお墓参りしなさいよ。」
唯「はーい…」
梓「お墓??」
憂「結局全部死んじゃって、和さんの家の裏手に埋めてあげたの。」
和「故381匹のためのザリガニ塚よ。」
律「そ、そいつはまた…」
0142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 02:11:19.62ID:CeVfSM5f0律「…てわけ。」
和「そう、そんなことがあったの…」
紬の家での、唯と紬の禅問答のことを、和に教える律。
和「まあ、昔から唯には,譲れないこだわりのようなものがあって…」
和「それが原因で、周りを巻き込んでの大騒動も何度か経験したけれど…」
0143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 02:19:23.19ID:Uui4qy2v00144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 02:22:15.86ID:CeVfSM5f0和「唯には、そのこだわりを捨てて欲しくないわ。」
唯「和ちゃん…」
梓(軽音部の人たちとの絆とは、また違った…)
憂(和さんには、敵わないな…)
0145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 03:06:26.69ID:Uui4qy2v00146以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 03:15:55.70ID:OpgdMB/5O0147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 04:03:32.71ID:lWDymd3N00148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 05:09:09.82ID:lWDymd3N00149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 06:25:19.06ID:lWDymd3N00150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 08:49:16.71ID:DLmdKvOlO0151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 09:49:56.80ID:HoC6ZvDcO0152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 10:31:08.36ID:Uui4qy2v00153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 10:44:48.10ID:CeVfSM5f00154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 10:51:19.87ID:CeVfSM5f0真鍋家の裏手、同家に面した道路からは全く見えないところに
"ザリガニ"塚はあった。
見た目はまさに『金魚のお墓』のそれ。
こんもりとした小丘の上に漬物石のようなものが置かれていた。
ここに381匹の遺体が眠る。
ザリガニのお墓の前に立つ唯。
パジャマ姿にカーディガンを羽織っただけ。
見た目からして非常に寒そうだ。
0155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 10:58:48.47ID:CeVfSM5f0『これが沼海老のお墓?』
あの精霊の声だ。
いつのまにか唯のすぐ横、肩ぐらいの高さをふよふよ、と浮遊している。
唯「沼海老??ザリガニだよ?」
唯もこの奇妙な存在にすっかり慣れてしまったようだ。
『ようするに湖沼に生息する海老の一種でしょう??』
0156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 11:05:54.12ID:CeVfSM5f0『まあ、いいわ。』
『あなたたちアジアの人たちは殺生を、
ヨーロッパの人間とは別の形で忌むものね。』
『アジア人は怖れから、ヨーロッパ人は仮象の愛から。』
『一般化し過ぎかもしれないけれど…』
0157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 11:11:24.64ID:CeVfSM5f0『カルマ??』
首をひねる唯。
『生き物の行為は、その生き物自身のうちに蓄積されて、
物事の原因の一つになり、その人の来世や子孫に
様々な影響を与える。』
『簡単に言えばそんなところかしら。』
『ずっと昔、インドで発明された考え方よ。』
0158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 11:18:18.85ID:CeVfSM5f0聞いたことがあるでしょう?』
唯「うん。」
『因果応報もカルマの存在が、
そのプロセスのうちにある、と考えられてきたのだわ。』
『でも、可笑しなものね。カルマをそういった原因として見ても、
人間は、自分にこびりついたカルマを全て認識することなど
できないはずでしょうに。』
唯「?」
唯は再び首をかしげる。
0159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 11:29:40.89ID:CeVfSM5f0ある結果には必ずそれに応じた原因がある。』
『原因論とか因果論とかもいわれる、古くからある考え方。』
『たとえば、ゆい、あなたのご両親がいるから、
あなたは今、生きている。そうよね?』
唯「あたりまえ、だよね?」
『ええ、そうよ。』
0160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 11:35:02.71ID:CeVfSM5f0『そして、ある人間が持っているカルマのうち、そのほとんどは
その人間に知られていない、と考えられるわ。』
『例えば、もし前世があるとするならば…
ゆい、あなたは前世のことを覚えている?』
唯「ぜーんぜん。本当にあるのかなあ…」
『さあ、それは私にもわからないのだわ。』
0161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 11:41:00.81ID:CeVfSM5f0何をおこなってきたか、を全て把握することはできないでしょう?』
唯「昔のことなんて、わかるはずないんじゃない?」
『そう、そのとおりね。だから…』
『沼海老を381匹死なせるよりも、もっと残酷なこと、
あなたが残酷と考えるようなね、
そのようなことを、あなたのご先祖様が行っていたかもしれない。』
唯「…」
唯は嫌な予感がした。
0162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 11:48:09.70ID:CeVfSM5f0信じる信じないも、参考にするしないも、あなたの勝手。』
『私が今したお話は、その381匹の沼海老を思うあなたへの手向け。』
『…そしてこれから、あなたが知るであろう悪に備えるための、前準備。』
『今日はここまで。』
『明日もこの時間、ここに来なさい。』
『そして、人間の絆についてのお話をしましょう。』
0163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 11:56:10.04ID:CeVfSM5f0唯「…」
唯「ブルッ…」
精霊が消えると、はじめて、外気の冷たさを覚える唯。
唯「気がつかなかったけど、精霊さんといっしょだと
ぜんぜん寒くなかったんだなぁ…」
0164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 12:01:45.84ID:CeVfSM5f0再び唯の胸奥に、さきほど感じた不安感、の名残が意識される。
唯「そういえば、なん、なんだろう…?」
この不安感がはっきりとした形をとるのは
もう少し先のことになるはず。
0165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 12:11:56.43ID:CeVfSM5f0唯と律は和とともに、アルバムをらしきものを眺めている。
律「へー、和はこのころはまだ眼鏡をかけてなかったんだな。
コンタクトにはしないんか?」
和「眼鏡のほうが色々と便利なのよ。
コンタクトは手間がかかるし、安全性にも問題があるわ。」
唯「だいじょぶだいじょぶ!
和ちゃんは眼鏡かけても、コンタクトでも
どっちにしろすっごい美人さんだから!」
0166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 12:21:22.04ID:CeVfSM5f0憂「2ab…+(a-…」
梓(先輩達、和先輩の家に来てから、ぜんぜん勉強してない…)
梓「ふぅ…」
和(梓、呆れてるわね…)
和(まあ、澪がスパルタでやるだろうから、
明日まではいわば中休みよ…)
0167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 12:27:41.80ID:CeVfSM5f0律が何事かに気づく。
律「唯と和が移っている写真にはどれにもこれにも
な、ぜ、か…憂ちゃんも写ってるよな?」
憂「ピクッ…」
和「律、正確にはそうじゃないわ。
唯の写っている写真には必ず、よ。」
0168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 12:31:12.68ID:Qvay/UC/00169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 12:32:16.11ID:CeVfSM5f0律「おいおい…これなんて調理実習の写真だよな、
奥の窓側、見切れてるポニーテール後姿…」
唯「あっ、ホントだ!」
和「今まで気付かなかったわ…」
憂「だ、だって…」
憂がはじめて口をひらく。
0170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 12:39:17.72ID:CeVfSM5f0唯「うい…」
和「憂、このときの授業、さぼったの?」
憂「は、はぃ…保健室に行くって言って…」
梓「唯先輩と憂は、昔からずっとそんな感じなんですか?」
和「ええ。物心ついた時から今の今までね…」
0171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 12:44:37.65ID:CeVfSM5f0和「唯を甘やかすのを今の三分の一ぐらいにすれば、
ちょうど良い按配になるかもしれないわ。」
憂「で、できるかぎり善処します…」
唯「むむぅ…」
律(多分無理だろ…)
0172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 12:49:24.84ID:CeVfSM5f0再び紅い光との邂逅。
『ゆい、あなたたち姉妹は…』
『本当に仲が良いのね。』
唯「へへ…///」
『羨ましいわ…』
精霊の声音が少し暗くなる。
0173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 12:59:16.62ID:CeVfSM5f0『これは人間の生が充実するために、
甚大な割合を占めるのと同時に…』
『これほどまた、当てにならないものもない、
と考えられてきたわ。』
『人間と人間を結びつける紐帯。』
『同朋意識、家族愛、友情、友愛、忠義、性愛…』
『もっと数多くあり、もっと細かくも分類できるけれど…』
0174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 13:09:05.13ID:CeVfSM5f0悪を減少させもし、増大させもする。』
『鞴(ふいご)から送られる風が、
良き鋼と悪き鋼の母であるように、ね。』
『そのため人間は、指導的な原理、
人間の性質の中でも、最も高尚かつ有意とされる原理を作り出したわ。』
『それはまずは知性としてあらわれ、それは理性として分たれ、
能動的な、人間が持つ他の性質を統御するものとされた。』
0175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 13:15:36.61ID:CeVfSM5f0『ある人間は、理性の原理の元に壮大な≪倫理の宮殿≫を作り上げた。』
『ある人間は、人間の歴史の背後に理性を見、
つまり物事の形成の根源であると考えた。』
『そして、多く、神との関係で語られてきた。』
0176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 13:23:00.37ID:CeVfSM5f0『人間の絆は深妙なバランス、均衡のもとにあるわ。』
『町々を潤す大河は、町々を滅ぼす龍にもなりかねない。』
『だけれど、心のうちに、愛する人との間に、
それを持っていたい、と願うもの。』
0177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 13:25:36.46ID:CeVfSM5f0唯「よいきずな?」
『ええ。』
『あなたは良い絆に恵まれすぎているから。』
『それが当たり前のことになっている。』
0178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 13:29:33.32ID:CeVfSM5f0『だからこそ、意識して良い絆を求めなさい。』
『それが、悪を抑える近道の一つになるの。』
唯「…」
自分は、恵まれているのだろうか?
0179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 13:32:17.87ID:CeVfSM5f0『悪の繁殖、悪を抑えること、そしてー』
『天上のノモスについて。』
『だからこそ、今は眠り、今日の疲れを癒しなさい。』
『≪眠りこそ最大の癒し≫だから。』
0180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 13:39:12.64ID:CeVfSM5f0勉強に対して費やされなかった。
そして−
12月22日 秋山家居間
澪「Our nation is at war, against a far-reaching
network of violence and hatred!」
律「ア、アウア ネーション アト ワー アゲンスト…」
澪「声が小さいっ!」
唯「ひぃぃぃ…」
0181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 13:45:12.27ID:CeVfSM5f0澪「次、唯!訳してみろ!」
唯「わたしたちのネーションは戦争です、
ヴァイオレンスとヘイトレッドのファーリーチングなつながりに対して…」
澪「ぜんぜっん駄目だっ!」
澪「いいか、この箇所はだな、
オバマ大統領の国際的テロに対する…」
0182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 13:52:06.35ID:CeVfSM5f0あーだこうだあーだこうだ…」
唯「うぅぅぅ…」
律(これは時間がかかりそうだ…)
律「ん?あれは…」
居間の一角に目を向ける律。
一方の梓は、
梓(澪先輩は恋愛と仕事にのめり込みすぎて
破滅するタイプかも。)
などと思っている。
0183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 13:53:58.17ID:CeVfSM5f0量的に、あと少しで終わり
0184以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 14:25:16.51ID:HoC6ZvDcO0185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 14:51:30.26ID:DLmdKvOlO0186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 15:25:06.71ID:lWDymd3N00187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 16:10:21.68ID:lWDymd3N00188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 16:12:18.54ID:kDSuwlYcO0189以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 16:19:45.35ID:DLmdKvOlO0190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 16:55:33.88ID:CeVfSM5f0唯「なあにぃ?」
律「上野介覚悟ぉぉぉぉ!!」
律は抜き身の細長い剣を両手に持ち、唯に飛びかかるようにポーズをとる。
どこから持ち出してきたのだろうか?
唯「内匠頭殿ッ!乱心めされたかあー!」
律「てぃや… 澪「おい。」
0191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 17:02:44.36ID:CeVfSM5f0澪「ひいお祖父ちゃんの指揮刀で遊ぶなって…」
澪「昔から言ってるだろぅ!!」
ゴツン!
律の脳天に拳骨がおちる。
律「いだっ!!…いだひぃ…」
0192以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 17:09:51.05ID:CeVfSM5f0律から指揮刀、つまりサーベルを取り上げ、
近くに落ちていた鞘に刀身を収める。
サーベルは全長90cmくらいだ。
柄には金メッキがかけられており、何かの花を模した意匠が施されている。
鞘は鉄製の簡素なもの。
澪「本当に罰あたりな…」
澪はサーベルを両手で水平に持つと、居間の隅の、違い棚にある木箱中に収める。
0193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 17:15:31.65ID:CeVfSM5f0ってそうしてるんだ!!」
澪「いいか、バラク(オバマ大統領のことらしい)はな、
ハワイ時代に少しグレかかった事があったらしい。
だけれど、彼はそれを乗り越え、真面目に日々…」
唯「澪ちゃん、澪ちゃん。」
澪「ん?なんだ、唯??」
0194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 17:18:28.09ID:CeVfSM5f0澪「あ、ああ、そうだぞ。」
律「こいつんちは先祖代々軍人家系だぜ。
だからこんなに凶暴に育…」
ゴチンッ!!
律に再び鉄拳が降り注ぐ。
律「ひいぃぃ…」
澪「たく、本当に…」
0195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 17:25:30.34ID:CeVfSM5f0澪「かっこいい、か。でも、お祖父ちゃんやパパの話では、
色々と大変なことがあったらしいよ。」
唯「大変なこと??」
澪「具体的にどういうことがあったのかは知らないけど…」
澪「指揮官に任された権限は、大変大きなものだから、
小さな間違いすら、『致命的な惨事』を引き起こすもとになるんだって。」
唯は紬の父親の話を思い出す。
0196以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 17:29:32.37ID:CeVfSM5f0そうじゃなかった方々もたくさんいらっしゃるから…」
澪はそう言うと、いつになく真剣な顔になる。
澪の表情に見惚れてしまう律と梓。
梓(…////)
律(はっ…いかんいかん…クールにクールに…)
0197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 17:36:09.52ID:CeVfSM5f0澪「わっ、悪かったな…////」
澪「っと、もうこんな時間か。とりあえずお風呂を沸かすから、順番に入ってくれ。」
律「一緒に…入る…////?」
澪「ばっ…!?そういうのをやめろって言ってるんだ!!」
唯は呟く。
唯「クリスマス…」
紬の家の、クリスマスツリーの装飾はすでに完成している。
しかし、あの木は、『生命の樹』という不可思議な…
0198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 17:47:05.67ID:CeVfSM5f0深夜、秋山家の居間。澪が曽祖父の指揮刀を収めた違い棚の前。
紅い光球が浮かんでいた。その輝きで、部屋の中を仄かに照らす。
『あの黒髪の子の家は代々、高位の軍人の家みたいね。』
唯「うん、そうみたい。ムギちゃんちもそうだったけど、
ウチみたいなフツーの家とは大違いだね。」
『そんなことはないわ。あなたのご先祖様にも何人か軍人がいたわよ。
下士官や兵卒だったようだけれど。』
0199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 17:53:27.13ID:CeVfSM5f0『その人間の魂の、いろ・かたちを見れば…数代前の先祖達が
どのような人物だったかくらいは読み取れるもの。』
『だから、これから話すことのために、
あなたのご先祖を例にとらせてもらうわね。』
『ふぅ…』
精霊は一息つく。
『あの黒髪の子の先祖の中には、少なくとも、ここ百年五十年、
人を殺めた人間はいないわ。』
『士官、つまり将校の職務は基本的に、
実際の戦闘を行うことではなく、その指揮と上位指揮官の補佐。』
0200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:01:02.57ID:CeVfSM5f0『ゆい、あなたの曽祖父の一人は、兵卒及び下士官として、
約四十人ほどの人間の命を奪ったわ。』
『そのうちの半数はその武器で、もう半数は敵艦を撃沈させたことによるもの。』
唯「え…」
唯の両目が驚きで見開かれる。
唯「うそ…」
唯は曽祖父四人全員と面識はなく、どのような人物だったかも全く知らない。
だから、このうちの誰のことについて言われているのかすら、わからない。
0201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:08:32.82ID:CeVfSM5f0『しかし、殺人であることに変わりはないわ。』
『これをどう考えるかはあなた次第。』
『だけれど、国と呼ばれるもの、企業と呼ばれるもの、
教団と呼ばれるもの…もっと数多くあるわ。』
『つまり共同体と呼ばれるものは、その構成員に対して、
ある一定の価値を持つことを要求し、
それを拒否するものには、ひどいときには無理にこれを強制する。』
0202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:18:58.02ID:CeVfSM5f0そのときに起こる悪のことを。』
『個人の目的が集団の目的の一束とされるのは、
それが良きことを生み出すから。』
『その一方で、人間は悪や不幸、つまり厭わしいものと
無関係ではありえない。』
唯は虚空を見つめたまま。
0203以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:21:00.48ID:CeVfSM5f0『悪を抑制する方法は、≪否定≫であったわ。ずっと、ずっと…ね。』
『進歩や啓蒙は、いわば、否定のもとの飛躍。』
『素晴らしい腕持つ匠が、木片を削り取ることによって
神々の像を生み出すように、ね。』
『しかし、これは邪魔な者の排除にも至りえる。』
『これを十全に認識しなかったために、前世紀の多くの指導者が
恐ろしい悲惨を作り出してしまった。』
0204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:26:04.67ID:lWDymd3N0なんか話が難しくってよく分からないけど見てる
0205以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:29:53.14ID:Uui4qy2v00206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:32:05.08ID:CeVfSM5f0『ここ数百年来、人間は、大地のノモスを精緻してきたわ。』
『法、及びそれに定められた制度という一種の機械の精密化のこと。
そして、それらを受け入れえる人間を作り出すこと。』
唯「…」
唯は言葉を発せぬまま。
『ゆい、あなたが、曽祖父の行為を受け止めることは必要かもしれないけれど、
そのために、あなたが罰をうける必要性は全くないわ。』
『明日、≪天空のノモス≫について教えましょう。』
『そして≪生命の実≫をその手に取るかどうか…』
『ゆい、あなたが決めなさい。』
0207以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:32:07.95ID:HoC6ZvDcO0208以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:33:39.45ID:8H5e/BLM00209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:38:25.23ID:CeVfSM5f0澪「ん?」
ドアの開く音で澪は目を覚ます。
唯が部屋に戻ってくるのが、うっすらとわかる。
澪「唯、トイレ…か?」
唯「…」
唯は答えない。
0210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:41:21.33ID:CeVfSM5f0頭まですっぽりと包まってしまう。
澪「唯?」
唯は答えない。
0211以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:42:47.39ID:+K0r2ebL0なんか澪ちゃんだと髪型古風だからそれっぽさがある
0212以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:47:26.68ID:CeVfSM5f0澪が律にそのことについて漏らす。
律「ここ一週間ぐらい、
様子がおかしいといえばそうだったような…」
澪「悩み、かな?」
律「かもな…」
律「よし!」
0213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:56:24.19ID:CeVfSM5f0唯「ふぅ…」
律「よっこらしょっと、な。」
唯の横に腰を下ろす律。
律「唯よ…」
律が突然、そう切り出す。
律「オトコか?」
唯「…」
唯「え…?」
0214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 18:58:28.24ID:CeVfSM5f0唯「えっとね…話がよくわかんない…」
律「あーー!!もうっ!!」
律「最近お前がおかしいから、それについて心配してんだよ!!」
ぶっちゃける律。
0215以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 19:05:09.97ID:CeVfSM5f0唯「そっか…」
唯は律に顔を向ける。
唯「わたし、自分ことばっかり考えてたね。」
律「は、はい??」
唯「うん。」
律「唯さん??」
唯「うん、うん。」
律「…」
0216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 19:11:14.92ID:CeVfSM5f0唯「天上のノモス−」
唯「教えてくれる…?」
『ええ、そのつもりよ。』
『…聞きなさい。』
0217以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 19:15:08.65ID:CeVfSM5f0『≪救世主の心持つ皇帝≫という造語があるわ。』
『地上の神、とでも言えばよいのかしら。つまり…』
『人間の進歩ないし進化をいっそう進めることによって、
人間の社会がましなものになる、ということだけれど…』
『これがもし実現するというのなら、いったいどのくらいの人間が
そのための人柱にならなければならないんでしょう?』
0218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 19:18:44.99ID:HoC6ZvDcO0219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 19:22:01.04ID:CeVfSM5f0また、大地を這うことが悪しきことでもない。』
『≪天上のノモス≫は、数数多(あまた)における調和。
天上の音楽のこと。』
『楽器を演奏するあなたならわかるでしょう?
多くの音源と声音が一つの楽曲を形作る。』
『ある楽器とある楽器の音と音の結びつき。
あるフレーズと別のフレーズの結びつき。』
『変奏、変調さえも楽曲の調和の材料となる。』
0220以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 19:28:13.08ID:+K0r2ebL00221以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 19:30:36.77ID:CeVfSM5f0悪は克服されない。
悪を迷信としたり、認識的な間違いとしたりすることは
結局、遠近法的な逃避でしかない。』
『ゆい、ムーサとなり調和のために尽くしてごらんなさい。』
唯「私に、できるかな…」
『難しいことではないわ。あなたの人生の実現のうちで調和を進めなさい。
何事においても最大の困難は、継続することにまつわる困難よ。』
『自然が隠れることを好み永遠に流転するけれど…』
『調和もまた、永遠に自然の諸物を他の諸物と結びつけることでしょう。』
0222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/12/19(土) 19:32:33.75ID:Uui4qy2v0■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています