
プーチン首相、ペン放り出して財閥社長を震え上がらせる
「オレグ君、この合意文書に署名をしたかね?君のサインが見あたらないのだが。今すぐここに来てサインしなさい」
ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相は、ペンをテーブルに放り出すと、自分の元へ来るよう手招きした。
約300億ドル(約3兆円)の資産を持ち、前年までロシアで最も裕福な人物として知られたロシア・アルミニウム(Russian Aluminum)の
オレグ・デリパスカ(Oleg Deripaska)社長は、席から立ち上がり、首相に冷徹ににらみつけられる中、
頭を垂れたまま、給与の不払いが続く工場の操業再開を約束する合意文書に署名した。
今週テレビで、多数の主要企業をたばねるデリバスカ氏にとって屈辱的な映像が放送されたことは、
一時は全権を担るほどの力を持っていたオリガルヒ(新興財閥)の実業家らが、数年でその権勢を弱体化させたことを象徴するものだった。
ボリス・エリツィン(Boris Yeltsin)大統領時代のロシアの混乱期に、ソ連崩壊後に私有化した資産を元手にばく大な財を築いた新興財閥の実業家らは、
かつてないほどの政治権力を獲得した。しかし、2000-08年のプーチン政権は、これに終止符を打った。
そして今、金融危機が、新興財閥の財産を減少させるとともに、多額の債務を明るみに出している。
合意文書に署名をしたデリパスカ氏に、プーチン首相はうなずく以外の返答をしなかった。
そして、デリバスカ氏が首相のボールペンを持ったまま席に戻ろうとすると、「ペンを返せ」としかりつけた。
(続く)