ある中絶経験者の話。

手術する前の日まで、いろんな街を彷徨った。
生まれてこられない子に綺麗な景色や音や匂いを私を通じて経験させるんだと馬鹿みたいに信じて。
バイキングにいって、普段食べないものも全種類食べてみた。
「これがハンバーグだよ、美味しい?りんごのパイはちょっとすっぱいかなぁ・・」
と心の中で話し掛けながら。胸が苦しくなるまで、食べつづけた。
その日。全ては眠っている間に終わってしまった。
まるでウソみたいにあっけない。
ホンの3ケ月、一緒に居てくれてありがとう。
そして、ごめんね。