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ロリショタバトルロワイアル24

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001創る名無しに見る名無し2009/06/14(日) 18:17:16ID:lSvAgYo/
本性を晒け出せ!
衝動をぶち撒けろ!
欲望を解き放て!
情熱を、燃やせ!



ここは真性の漢共(女性可)が集まり、
ジャンルを問わないロリショタキャラでバトルロワイアルを行う、
あまりにもCOOLなスレです。
紳士淑女の心を忘れず冷静に逝きましょう。

前スレ
ロリショタバトルロワイアル23
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1230413656/

テンプレ、過去ログは>>2-5辺に
ロリショタロワ避難所(したらば)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12693/
LSロワお絵描き掲示板
ttp://oekaki2.basso.to/user11/hisou/
LSロワお絵かき掲示板2
ttp://bbs2.oebit.jp/LoliSyotaRowa/
まとめwiki
ttp://www25.atwiki.jp/loli-syota-rowa
0344創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 02:42:30ID:kOUQiWG5
代理投下終了
0345創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 02:43:34ID:TlKjQXDM
>>344
お手数掛けました。ありがとうございます。
0346創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 02:46:13ID:U2pFQtKI
投下乙!
うわああああニケェェェ!!
ここでニケが死ぬとは、まぁマーダーに囲まれてた生活だし
いつかはと思っていたが。
だが、ヒーローとしての生きざまを貫いたから良かったのかなあ
マーダー同盟早くも崩壊。偽悪コンビ結成か。
そして、メロとブルー。
こいつらの動きも気になるぜ
0347創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 02:50:36ID:kOUQiWG5
とうとう3勇者に欠員が…
原作ではあまりないシリアスなニケなのに、最後までらしいと思えた
で、生き残った奴らの動向も気になるな
エヴァはこのまま悪を貫くのか
ブルーはメロを殺すのか生かすのか
そしてグレーテルはどこに行くのか…
0348創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 03:02:35ID:TlKjQXDM
二ケ(とチャチャゼロ)が退場ですね……
最期までニケらしく勇者らしく頑張っただけに、余計に衝撃でかいです
揺れてるブルーや蒼星石がどうするのか気になります
それにしてもグレーテルはほんとに楽しそうだ……
0349創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 17:51:14ID:VX5i0+ie
投下乙!
三勇者合流叶わず……!
だけどニケの最後の言葉は蒼星石に届いたようで、これからどうなるやら。
エヴァも救われてほしいな。

ブルーもどうなるかな。
周りの対主催は全員こいつ警戒してるしw
0350創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 18:40:15ID:Mp5KIxtr
つっても対主催ってあんまり頼りになる奴残ってないよな
0351創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 18:42:34ID:c6qKem4N
貴重なショタが
0352創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 18:43:28ID:bWIwgYq0
グレーテル、レミリア、千秋、リリス
 
というかマーダー勢が装備充実してたりして強すぎるw
0353創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 19:35:41ID:yXzPqOBI
投下乙…ニケが逝ったか

うっわあああ、なにこの無常感…読み終えた後のこのなんともいえない感じは凄いな。
ニケは死んだけど確実に何かを残して逝ったって感じだ。
GJ、これはいい作品だ。
0354創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 19:42:44ID:zjLNamns
ニケ・・・
これでグルグル勢も全滅か。
終盤ぽくなってきたな。
0355創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 19:49:02ID:Mp5KIxtr
まだトマが残ってるだろw
でも貴重な鬱ブレイカーがここでリタイアして個人的にかなり堪えた・・・
後は頑張ってくれ、エヴァ、蒼星石。
0356創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 19:55:36ID:vSboi+MQ
言われるまで素でトマのこと忘れてたwwwww
0357創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 19:58:15ID:bWIwgYq0
投下乙!!
 
 
号泣したw
今からグルグル全巻買って来るぜ
 
蒼星石は一時はどうなることかと思ったが、なんとか立ち直れたみたいでよかった…
既に逝ってしまった姉妹達のためにも頑張ってほしいな
ニケの死を無駄にしないためにも
 
 
てか感想がこんなにw
まだ人がたくさんいることが分かって良かった
このロワはまだまだやっていけるな
 
0358創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 21:37:54ID:VX5i0+ie
まずい……
読み返してたら展開が変わりかねない問題に気付いた……

ニケが自分の剣だしたら抵抗出来たんじゃね…?

痛みやらで忘れてたで行けるだろうか。
0359創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 22:17:03ID:BE+0i4fO
作者さん?
確かに言われればグレーテルにあれだけ啖呵切ってたから意地でも抵抗はしそう。
0360創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 22:25:52ID:VX5i0+ie
いや、普通に読み手。
今回の話通したいのに変な事に気付いちゃった的な意味で。
0361創る名無しに見る名無し2009/11/20(金) 23:30:47ID:bWIwgYq0
抵抗したらメロとブルーが…とか思ってたとか?
0362創る名無しに見る名無し2009/11/21(土) 00:04:11ID:aYblQP7P
忘れてたとか剣出すのに集中出来なかったとかの脳内補完でいいんじゃないの
少なくとも修正必須な程とは思わない
どっちでも作者さん次第で
0363創る名無しに見る名無し2009/11/21(土) 02:37:04ID:dQl5Embh
昨日言えなかったけど投下GJ。あー、面白かったなぁ……。
ニケが最後の力でカッコイイポーズやっているとことか最高だった。
生死に関わらず先の展開に深みが増すやり取りだなと思いつつハラハラしながら読んでました。
チャチャゼロの役回りも良かったなー。メロが相棒だったと説明しているとこと
エヴァとの別れのところに何ともいえない物悲しさを感じた。
やっぱりニケは勇者だったな。こいつの明るさがあるかぎり対主催いけるんじゃねという根拠のない
安心感を持っていただけにショックが大きいや。
キルアとか雛苺とか最近(といっても数ヶ月前か)の死亡話はホント読んでて面白いな。

ニケは前の話で魔力消耗も激しい上に怪我もしているんだから、
自分の剣すら出せないほどに疲弊していたのでいいのでは。

0364創る名無しに見る名無し2009/11/21(土) 09:34:25ID:sFUjnd25
これで残り30人か…
そして残るショタはたった7人…
0365創る名無しに見る名無し2009/11/21(土) 12:32:43ID:Es8YmZE3
なんだろう
このスレが終わりなのは見えてるのに期待してします
ロワで絶望していても何故か諦めない参加者みたいに諦めたくないみたいな気分がする
0366創る名無しに見る名無し2009/11/21(土) 12:37:01ID:IHLyuNBW
まあ次の投下は一年後ぐらいか
0367創る名無しに見る名無し2009/11/21(土) 13:16:37ID:YzBJFC9J
はいはい、ネガ発言はやめておこうねー。

放送後に全員動いたということでマップ更新だよー!

ttp://www25.atwiki.jp/loli-syota-rowa?cmd=upload&act=open&pageid=8&file=romap+263.gif

動くはマーダーばかり、対主催は待機ばかりで拠点を攻められてばかりの対主催。
本当に大丈夫かー!?

トップレベルの能力者のキルアやロワの清涼剤エロ勇者が死に、
ショタ不足が深刻化してきました。
このままでは
「ロリショタロワ終了のお知らせ。次回からはロリバトルロワイヤルが始まります」
なんてことになりかねません。

書き手の皆様方、ショタに愛の手をー!
0368創る名無しに見る名無し2009/11/21(土) 14:48:58ID:sbYJxIVj
ニケは最後までニケだったなー
エヴァじゃないけどこいつになら倒されてもいいって思えるすごいやつだった。
勇者ってほんとああいう奴のことをいうのかもしれん。
エヴァはほんとせつねえことになってるな。
青い子との偽悪コンビがどうなるかも期待
そしてチャチャゼロ。
俺はあんたのことも好きだったぜ。
メロがどこまでもニアに勝つことを求めてるのがよかった。
しかし惚れ薬系が最初から後半まで猛威ふるってるな、このロワw
0369創る名無しに見る名無し2009/11/21(土) 16:17:28ID:sFUjnd25
ロリは51人中23人生き残ってる
生存率は約45%
 
ショタは35人中7人生き残ってる
生存率は20%
 
 
ショタ頑張れw
0370創る名無しに見る名無し2009/11/21(土) 17:01:19ID:+9lTQEi1
何気に死亡数は同じなんだなww
0371創る名無しに見る名無し2009/11/21(土) 19:52:48ID:YzBJFC9J
野郎と女が同時にいると皆野郎のほうを殺そうとするからな……
0372創る名無しに見る名無し2009/11/21(土) 20:43:17ID:NP5BkT5h
書き手っておっかねぇなぁ
0373創る名無しに見る名無し2009/11/21(土) 21:44:31ID:7r2lK495
言ってしまえば人殺しの話を書いてるわけだからな。

まあ、読んで色々いう俺らも十分おっかないが。
0374創る名無しに見る名無し2009/11/22(日) 10:01:12ID:IXOTJcm6
てかスクロワどれロワみたいに男女均等な所ですら野郎は割喰ってるのに
LSは元より頭数の少ないショタが優先的に退場させられてるから尚更
0375創る名無しに見る名無し2009/11/22(日) 10:13:00ID:cS+2Wexg
別に優先的に殺してるわけではないと思うけどな
死亡数は同じなんだし
てかもうこの話やめよう
何か不穏な感じになってきた
0376創る名無しに見る名無し2009/11/22(日) 13:30:23ID:GA/15N/4
男女比率が悪いのに同じ数殺されてるってことは優先的に殺されてるってことになると思うが……
0377創る名無しに見る名無し2009/11/22(日) 14:44:52ID:OmKlAsH5
だったらロリが死ぬ話をガンガン書けばいいと思うよ
文句言ってる奴は当然率先して書いてくれるんだよな?
0378創る名無しに見る名無し2009/11/22(日) 15:22:39ID:nJsAK0I2
性別だけで語るのはナンセンスだろ。悪平等は勘弁
0379創る名無しに見る名無し2009/11/22(日) 15:51:11ID:z7xuB4+N
あんまり煽るなー。
書く人はあまり差別なく書いたほうがいいよ。
0380創る名無しに見る名無し2009/11/22(日) 19:07:46ID:cS+2Wexg
何だ荒らしたいだけか
構って損した
0381創る名無しに見る名無し2009/11/24(火) 19:29:48ID:H3dpFDRx
???「ククク……いずれこのロワをロリで埋め尽くしてくれるわ!」
0382創る名無しに見る名無し2009/11/24(火) 20:54:19ID:DH72vOUc
ロリショタ2にご期待ください
0383創る名無しに見る名無し2009/11/25(水) 18:28:11ID:H7Ar4adP
まあ、もしホントにこのロワが完結して2やる時は、最初の男女比率
同じくらいにして欲しいかな。
0384創る名無しに見る名無し2009/11/25(水) 19:36:29ID:pV40b0TW
そもそも完結させないと2が始まらないんだよな。
完結させずに2を始めても前のが終わってないのに云々となるし。
0385創る名無しに見る名無し2009/11/25(水) 20:01:30ID:3o+obT3A
リスタートみたいな形もあるっちゃあるけどな
0386創る名無しに見る名無し2009/11/26(木) 00:01:47ID:8lwszMhJ
2をやるのは難しいと思う…
このロワですら完結できるかどうかも怪しいし
 
でも実際、今一番楽しみなのはこのロワなんだけどねw
このロワはこんな所で終わっていいわけがない
0387創る名無しに見る名無し2009/11/26(木) 00:35:18ID:hbL2lrui
リスタートだけはないな
0388創る名無しに見る名無し2009/11/26(木) 23:01:07ID:U568qpv+
実際ものすごくクオリティが高いから参加しようと思っても
把握とここまでのフラグ整理が壮絶なことになってて諦めたことがある
0389創る名無しに見る名無し2009/11/29(日) 18:23:16ID:drJAc1oP
捕手
0390創る名無しに見る名無し2009/11/29(日) 18:35:00ID:kcNQEo9h
>>388

>実際ものすごくクオリティが高いから

同感。
せっかくここまで来たのなら最後まで行って欲しい。
リスタートとかで無かったことになるのは忍びない。
0391創る名無しに見る名無し2009/11/29(日) 18:53:44ID:iEjDNg1r
残ってる作品自体は把握率高いんだが、ここまで積み重ねたフラグがねぇ
0392創る名無しに見る名無し2009/11/30(月) 12:13:26ID:9uH13l9D
問題はそこか
0393創る名無しに見る名無し2009/11/30(月) 12:41:21ID:evyx647k
クオリティは求めないからひとまず進めてほしい。
0394創る名無しに見る名無し2009/12/01(火) 21:20:28ID:swu8CGsU
みんなスマン
ニケのストリーを追ってたら「屏風の虎」から「遺」へリンクが張ってなかったんだ
それで、リンクを張って…パス打ち込んでたしかめてみたら
「SSが半分以上消滅していた」
…なんでやねん
みんな、ごめん。誰か「屏風の虎」の内容拾ってこれる人いる?
俺には無理だorz
0395創る名無しに見る名無し2009/12/01(火) 21:27:36ID:3Q4kDVri
編集履歴見れば?
0396創る名無しに見る名無し2009/12/01(火) 21:42:09ID:xchNqmdi
一応直しといたよ
0397創る名無しに見る名無し2009/12/02(水) 12:55:11ID:INP/6mgd
普段編集協力してるWIKIは別のメーカーのやつでさ、編集履歴とかの使い方がわからなかったんだわ
直してくれてありがとう!
0398創る名無しに見る名無し2009/12/02(水) 17:45:46ID:LhAb1uUE
そういえばフラグもそうだが、未調査の施設も気になるところ。
湖底都市とか南や北西の塔なんか詳しく調べられてないし。
0399創る名無しに見る名無し2009/12/06(日) 12:39:35ID:EWHphWXg
ほしゅしちゃうぞ
0400創る名無しに見る名無し2009/12/07(月) 05:38:46ID:IyDWy+uo
予約来てる!
0401創る名無しに見る名無し2009/12/07(月) 10:17:24ID:NUUantjg
マジだ!
0402創る名無しに見る名無し2009/12/07(月) 17:22:49ID:uHMhBOPq
MA☆JI☆DE!?
0403創る名無しに見る名無し2009/12/07(月) 18:34:14ID:aWgmyguv
わーい
0404創る名無しに見る名無し2009/12/08(火) 22:39:52ID:6EGTz+w9
うれしいなぁ……
ぽつぽつとでも人が戻ってきた気がするよ……
0405 ◆tcG47Obeas 2009/12/08(火) 23:39:44ID:6kJOWeKw
投下開始します。
0406ギップリャアアアの謎 ◆tcG47Obeas 2009/12/08(火) 23:41:02ID:6kJOWeKw
暗鬱だった。
陰鬱で、憂鬱で、沈鬱だった。
鬱々とした沈黙が部屋に満ちていた。

レベッカ宮本は何も言わない。
トマに話すべき事は話し終えたし、濡れた体もシャワー浴びさせてまあそれなり対処した。
後は時間をかけてでも、受け止めれば良い。
シェルターの通話装置に通話記録が有った事と、その内容について。
白との会話で気付いた事だけは隠して、それ以外は隠しもせずに。
ククリの死は、隠してもどうせ朝の放送で告げられるのだ。
冥王の悪辣な宣告で知るよりも、今知っておいた方がマシだったろう。

それだけを話してレベッカは静かに待った。
自らも考えに耽り考察を立てながら、トマが起き上がるのを待つ。
仲間の死、親しい人の欠落による衝撃を受け止めるのを待つ。
目を合わせないよう、気を使わせないように適当な作業をしながら待つ。

茶化すように言葉を交わして、行動に次ぐ行動で前に進んでもよかった。
でも失われた人達に黙祷を捧げる時間くらい有っても良いと思ったのだ。

「ベッキーさん」
思ったよりは短く、トマからの言葉が返った。
レベッカは振り返り、トマと顔を合わせて。
お互いがふうと息を吐いて。
確認した。
「トマ。私達の目的はなんだ?」
「ジェダをやりこめてみんなでこの島から脱出する事です」
「満点だ」

トマがどれだけククリの死に苦しんだかは見れば判るほどに明白だった。
声も無く泣いていたのだろう、瞳は拭き残した涙に濡れていた。
手は強張り、声は僅かに嗄れていた。
きっとジュジュの時もこうだったのだ。
それでもその答えが迷わず返ってきた事を、レベッカは良しと思えた。

「ありがとうございます、ベッキーさん」
「気にすんな」
そうやって、会話は再開された。

トマはそっと、部屋の隅にあるジュジュの死体に目を向けた。
シェルター内に移動されていた、首輪を剥ぎ取るべき、大切な仲間の遺体。
だけどそれよりも先に情報を整理する事を選んだ。

「まず気になる話はトリエラさんと、ヴィクトリアって名乗る人との会話です」
やはりかとレベッカは思う。
その会話の中で、ククリは金糸雀に殺されたという証言が出てくるのだ。
気にならないはずが無かった。
「ククリさんは、ここから北の街で死んだんですね」
「ああ。トリエラもそこに居る」
北東市街レベッカ宮本宅。
そこにはククリを保護していたらしきトリエラが居て、
話相手のヴィクトリアが居る『インデックス』もその近くの何処かだと予想される。
破壊された警察署と旅館。
こんな物が有りそうなのは市街地くらいだ。
片方が南西に居たと考えるにはお互いの情報が共有されすぎている。
「どうする、トマ。雨が止んだら朝までに向かうか?
 なんで私の家が持ってこられてるのかはすっごく気になるけど、家の見分けは付くぞ。多分」
市街地の立ち並ぶ建物から僅かな情報から目的の家屋を見つけ出すには相当な苦労が伴う。
例えその面積が1平方km足らずだろうと尋常な労力ではない。
だが家の形を熟知している者なら、高台から探せば見つからなくもない広さだろう。
0407創る名無しに見る名無し2009/12/08(火) 23:41:31ID:Hf38LOvI
うおっリアルタイム投下
支援
0408ギップリャアアアの謎 ◆tcG47Obeas 2009/12/08(火) 23:42:03ID:6kJOWeKw

トマは首を振った。
「いえ、ベッキーさんが動くのは厳しいでしょう」
「うぐ。ま、まあな」
レベッカ宮本は成り立ての吸血鬼である。
流れ水を渡れず、日の光に灼け死ぬ存在である。
今、彼女の移動範囲は極端に制限されていた。

「いちおー、宇宙服着れば出ていけるんじゃないかなあとは思うんだけどさ。
 重いし動きにくい襲われて破かれたらヤバイから、動きたくないのはほんとだよ」
「判ってます。無理はしないでください」
「それに実際、ここは私に向いた場所だからなー。禁止エリアに指定される危険も殆ど無いし」
「2エリアに跨っていますからね」
「それだけじゃないぞ。1時に発動するG−4の禁止エリアが決定的だ」
それは分からなくて、トマは聞き返した。
「え? どういう事ですか?」
「動線だよ」
レベッカは地図を広げた。
今彼女たちが居るシェルターはG−5とH−5に跨って存在している。
その横に無地の紙を並べて置き、幾つかのマス目を書き込んだ。

 F G H
4□■□
5□○○
6□□□

レベッカ先生からの出題です。
「黒い四角が禁止エリア、○がシェルターだ。
 だがこの表記の仕方だと見落としが有る。判るか?」

トマはうーんと頭を捻り、しばらく地図と無地の紙を見比べた。
正確な表記には思える。
随分簡略化されているが、禁止エリアとエリア配置だけを見るなら間違ってはいない。
雑な表記だがシェルターも書き込まれている。
シェルター。
ランドマーク。
実際にそこにあるもの。

地形。

気づいた。
「あ、もしかしてこういう事ですか?」
マス目の上に重ねて線を引く。

 F G H
4┤■┤
5┼┼┤
6│└┤


「正解だ。
 この辺は禁止エリアだけじゃなく水場が移動を阻害しているからな。
 G−5を禁止エリアに指定したら島の東端への移動が阻害されるし、
 H−5を禁止エリアに指定したら北東部が孤立しちまう。
 そしてジェダには、参加者をある程度は活発に移動させたい理由がある」
「殺し合いも何も、出会わなければ始まらないですよね」
「ああ。5時に発動するE−2の禁止エリアも有るから不安は有るけどな。
 ジェダはしばらくの間、この辺りに禁止エリアを増やしたくないはずだ」
0409ギップリャアアアの謎 ◆tcG47Obeas 2009/12/08(火) 23:43:08ID:6kJOWeKw
5時に発動するE−2の禁止エリアは島中央部から島北部への動線を断ち切っている。
禁止エリアの中で移動を阻害しているのは今のところここだけだ。
とはいえ完全に断っているわけではない。
森の奥を抜ければ移動できなくもない。
しかし元より島の北部に施設は少なく、妙なオブジェを除けば北東部の市街地だけだ。
単に隠れるのでなければ、向かう理由は減っている。

「1時と5時の禁止エリアの意図を合わせて勘ぐるなら、北東市街地への交通の阻害か。
 完璧には閉じずに圧力を掛けて、しばらく出入を制限したいんだろ。
 なんでそんな事をしたいのかはわかんないけどな。
 人の分布具合が不味いのか、それとも別の理由か。
 一時的な物で、次の放送の禁止エリアは北東に来るかもしれない。
 だからまあ、家は気になるけどほんと言うと近づきたくない。
 けど良いのか、トマ?」
「はい。もし行くならぼく一人で行きます」
「なら待ってた方が確率高いぞ。市街地の奴らが移動するとしたらここに来る可能性は高い」
「ええ。でもどちらも気になってますから、片方は調べに行きたいんです」
「もう一方は、あの記録の事か」
トマは頷いた。
通話記録に残されていた通話元も宛先も判らない二つのデータ。

「実を言うとあの片方、心当たりが有りまして」
「あー……あの、ずっこけた方か」
「はい、ずっこけた方です」
ひどい言いようである。
「ギップルさんというテントにもなる便利な方なんですけど、
 臭い台詞を吐かれるとどこからでもツッコミを入れに来る習性がありまして。
 多分それで偶然収録されたんだと思います」
「この場面じゃ役に立ちそうに無いけどな」
「そうですね」

そう言いつつも、二人は紙にペンを走らせ始める。
この辺りは“まだ大丈夫なはずの”会話だ。
だが念を入れるに越した事はない。
レベッカとトマは首輪関連の話題について、首輪の『覗き穴』を閉じた上で筆談する事にしている。
筆談は大変時間が掛かるので、聞かれては不味い事だけだが。

『でもギップルさんの声が、念話にせよなんにせよ残っていたという事は』
『もう一方も私たちが知らない参加者の知り合いか何か、恐らくジェダの自作ではないって事か』
『はい』
ここまでを素直に考えれば、あの少女の言葉は脱出の有力な手がかりになるのかもしれない。
しれないが、だが。
レベッカはある事に気がついた。
『トマ、確認するぞ。ギップルの念話は明らかにたまたま収録された物だ。そうだな?』
『はい、そうだと思います。あの内容ですから、まず間違いなく』
『するとつまり、ここの装置には念話を録音する機能まであるわけだ』
『そういう事になりますね』
そうでなければおかしい。
おかしいが、なら。

『トマ。放送がそれこそ念話みたいな物だったのには気づいてるか?』
『あ、そういえばそうですね。考えてみたら音って感じじゃありませんでしたし』
『私はさっき気づいたよ。この記録を調べててな。
 おまえとアオイとの通話記録に放送が入ってなかったんだ』
『そうなんですか』
トマは見事な着眼点だと感心したように頷いてから。
レベッカがいやいや〜と照れてるのを脇目に。
数秒の間を置いて。

あれ、と呟いた。
0410創る名無しに見る名無し2009/12/08(火) 23:43:33ID:Hf38LOvI
支援
0411ギップリャアアアの謎 ◆tcG47Obeas 2009/12/08(火) 23:44:25ID:6kJOWeKw

『それ、何かおかしくありませんか?』
『そう、おかしいんだ。
 ここの録音機能にあの念話が記録されてるのはおかしい』

トマはぞくりとした寒気を感じて、録音記録を振り返った。
何か得体の知れない謎がそこに有る。
『私は最初、あの音質に差が有る二つの声を聞いてこう考えた。
 妨害が無い時期にギップルの声が混じり、通信妨害が強化された後に少女の物が入った。
 つまりここの記録装置は念話も記録することができる。
 この二つだけならこれでいい。
 けど聞こえなかった放送まで含めるとおかしい。
 あるいは聞こえなかった放送とあの少女の声だけなら説明は付いたんだ。
 けど放送が記録されず、少女とギップルの声が記録されているのはどう考えてもおかしい』
『どういうことですか、それ』
『女の子の声にははっきりした意思が有った。
 それなら意図的に吹き込んで特別に記録させることができたのかもしれない。
 じゃあ偶然入ったはずのギップルの念話まで同じ形式で入っていたのに、
 放送が記録されなかった理由はなんだ』
トマは考えを巡らせる。
道具に絡む話に限定すればトマの知性はこの島の誰にも引けをとらない。
幾つかの仮説が浮かんだ。
『内部から内部への声は記録できないとか』
『念話に限って外部からの通信だけ記録するのを会場内に置く理由って思いつくか?』
『念波妨害で放送が消えたとか』
『私たちに聞こえていた以上、念波みたいなのは正常に届いてるはずだ』
『この装置までは届かないけど放送の念波はそれぞれの首輪から出ているとか』
『放送の原理はそうかもしれないけど、そもそも会場内に念波妨害はありえない』
レベッカはとんとんと首輪を叩いて見せる。
以前の首輪考察を思い出せ、と。

『私が、電波じゃ水とかに遮られて困るだろうと推測したのをおぼえてるか?』
レベッカは中の人発覚以前から、首輪の機能全てが機械で行われてはいないと推測していた。
電波が様々な障害物に遮られるなど不都合があるからだ。
『会場内に通信が届かない場所なんて有ったらいけないんだ。
 少なくとも会場内の念波は妨害できない。
 もちろん中と外を隔てる通信妨害は有るんだろうけど、会場内にそんな装置は置いておけない』

加えてレベッカは思う。
内部に念波妨害を行われていれば、手詰まりだと。
この会場内の念話を妨害されているとすれば、レベッカの立てた予定、
《念話による首輪解除法》は使えなくなってしまう。
先に妨害装置を壊してしまえば良いと思うかもしれないが、
恐らくジェダの本拠地に有るだろうそんな設備が禁止エリア指定されていない可能性は低い。
首輪を解除しなければジェダ側の設備に攻め込む事は難しいが、
ジェダ側の設備を破壊しなければ首輪を解除出来ないとなれば、打つ手が無くなる。
(頼むからそれだけは無しにしてくれよう)
ちょっと弱気になりながらも、自説の確かさを信じて考察を続ける。

さてとレベッカは問いかける。

レベッカ先生からの第二問。
『それで、念話とかそういうの自体は機能してるとすればどうなる?』
 
0412ギップリャアアアの謎 ◆tcG47Obeas 2009/12/08(火) 23:45:20ID:6kJOWeKw

トマは頭を巡らせる。

中と外の念話が妨害されている可能性は十分有るだろう。
会場の外側には念波妨害装置の様な物が有るのかもしれない。あるいは単に特殊な壁か。
まあそこまで出て行けたなら逃げの一手だろう、それほど関係深い物ではない。

しかし内部から内部の念話が妨害されている可能性は低い。
よって放送も妨害などはされていないはずである。
にも関わらずここの装置に放送は記録されていなかった。
ここの装置には念話を録音する機能など無い。
ならば女の子の声だけならまだしもギップルの声はどこから入った?

やがて一つの答えが出た。
それが意味する事までは理解できないまま、トマは呟いた。
『あの声は、ここの設備で記録されたものじゃない?』
頷きが返った。

何処か別の設備で録音されたデータがここの設備に置かれていた。
あまりにも迂遠ではあるが、そう考えるのが適切に思えた。
二人はそれが何を意味しているのか考える。
ここの設備で記録できないデータが何故ここにある?

『一つ。すっごく好意的に考える。
 外から私たちを助けようとしてくれている誰かが物理的に直接データを送りこんだ。
 ギップルのデータは何かのおまけだ。
 手紙とかじゃないのはジェダの目に付かないところに隠すため。
 よりによって肝心の部分にノイズが入った原因は不明』
『ちょっとキビシイですね』

『二つ目。かなり好意的に考える。
 なんかの手違いでジェダの手元で管理するはずの外部傍聴記録がこっちに流出した。
 念話の録音装置は数が少なくてここにまでは置いていない。
 あと、私はそれが外部にだけ向いてる事を祈る。念話も記録されるんじゃキツイ。
 QBはものすごくバカみたいだからな、もしかしてありえるかもしれない。
 この場合はジェダによる検閲済みな可能性が高い上に、
 通信はシャットアウトされてるわけだから外部と連絡できる見込みは薄いけど、
 外から救助しようとしてくれてる奴が居るってのは救いだ』
『でもこちらからは何もできませんね』
『祈れ』

『三つ目。悪意があるとして考える。
 外部傍聴記録には違いないけど、なんらかの理由で意図的にジェダが仕込んだ。
 この場合は音質が悪かった部分も簡単に説明が付く。嘘とばれない為だ。
 ノイズで欠落させた部分に“この島じゃ有り得ない条件”が含まれてたんだろう。
 ギップルの声は安心感を増すためかな。
 放送が録音されない事に気づけなかったらすっかり信じてたし。
 一番有り得る気がしてきたけど、そうだとしたら意図が分からない』
『不気味ですね。なんていうか、あまり考えたくありません』

『四つ目。もうすっごく好意的に考える。
 二つ目の派生でギップルの物だけは外部傍聴記録がこっちに混ざった物。
 あるいは単なる偶然で、明確な意思を持ってしてもあそこまで音質が劣化する
 内外を隔てる壁を音質クリアなまま打ち破った挙句なんでか念話記録機能が無い媒体に記録成功。
 女の子の声はそれとは全く別枠でジェダにも気づかれてない例外だ』
「………………」
思わず沈黙。
0413創る名無しに見る名無し2009/12/08(火) 23:45:40ID:G0UsVFZb
 
0414ギップリャアアアの謎 ◆tcG47Obeas 2009/12/08(火) 23:46:44ID:6kJOWeKw
それから顔を付き合わせて深い溜息を付いた。
『もしもそうだったら良いですね』
『そーだよなー』

それから、結論付けた。

『多分二つ目か三つ目。この記録はジェダ側の手違いか、あるいは意図してここに置かれた。
 手違いよりわざとやった可能性の方が高いと思う。
 というわけで私は、この記録それ自体は外れだ、と結論せざるをえない』
暗鬱な結論だった。

『けどギップルには礼を言うべきかもな。気づけないよりかずっとマシだ』
『そうですね。まんまとジェダの罠にはまっていたかもしれません』
『でもそれだって不思議な話だ』
『?』
レベッカは問う。
この記録がここに有ったわけを。
『もしかしたら理由も答えも無くて何かの手違いかもしれないけどさ。
 ジェダが外部傍聴記録を改変した上でここにおいて惑わそうとしたんなら、
 なんでわざわざそんな事をしたんだ?』
『脱出しようとか、ジェダを倒そうという人たちを罠にはめる為じゃないんですか?』
『そうだよな。多分、そうなんだけどな』

島の東端に有るシェルター内に、島の南端に脱出の鍵ありという示唆を残せば、
それを見た反ジェダの一派は安全性の高いシェルターを出て、南の塔に向かうだろう。
危険な野外を移動して。
魅力的な脱出の鍵に目が眩み時間を浪費して、手が届いたかもしれない可能性を見失うだろう。
狡猾極まりない悪辣な仕掛けだ。
ここまでは疑問を挟む余地も無い。
だけどレベッカは疑問に思う。

(多分、あの声は罠だ。更に罠は複数仕掛けられてるはずだ。
 この島に有る物も、ジェダから支給された物も、どこまで信用出来るか怪しいもんだ。
 けどすっごい違和感が有るんだ。
 どこかおかしい気がする。
 だって、他の部分じゃあんなに無茶苦茶で杜撰で投げやりなんだぞ)
たくさんの凄い奴らを集めた殺し合いである、執拗に安全策を取っていてもおかしくはない。
むしろ当然の話だ。
だがしかし、あの見るからに自信過剰なジェダが、どうしてここに限り完璧に対策しているのか。

二人が以前にも考察した事だが、ジェダの管理体制ははっきり言って杜撰だ。
行き当たりばったりっていうか何も考えてないだろおまえと説教したくなるほどだ。
絶対的、圧倒的な優位性がそうさせるのだろうが、どうにも詰めが甘く思えてしまう。
なのに会場だけ徹底的な安全策を練っている理由は何なのか。
(目くらましをばら撒かなきゃならないぐらいシンプルな欠陥が何処かに有るのか?
 例えば、ジェダ自身も割と普通に行ける場所に居るとか。
 QBが何処かから来てるんだから、有り得ない話じゃないかもしれないけど)
悩みに悩んで、それから。
レベッカは書いた。

『塔を調べに行くのは有りかもしれないけどな』
『どうしてです?』
十中八九罠と見た場所を調べる余地などあるのか。
0415創る名無しに見る名無し2009/12/08(火) 23:46:51ID:Hf38LOvI
 
0416ギップリャアアアの謎 ◆tcG47Obeas 2009/12/08(火) 23:47:36ID:6kJOWeKw
しかしレベッカは違うものを見ていた。
『加工されたにせよあの声は外部の声である可能性が高いんだ。
 この会場にあるE−8の塔を示しているなんて保障は一切無いけど、
 外部から何かをしてジェダが後始末をした後だとか、
 何かしようとしているのを意図を持って泳がせている可能性は有る。
 もしそうなら、直接的では無いにしてもジェダ側を探る鍵が有るかもしれない。
『なるほど。でも死亡するような罠という危険性は?』
『罠で殺される可能性はほとんど無いと思う。
 私たちに殺し合わせるのが目的なんだからな。
 でも理由によってはわかんないから、調べるならぜったいに深入りするなよ』

リスクがどれだけあるかも判らない上に、大したリターンも見込めない。
いや、むしろリターン0の可能性が極めて高い。
それでも端から圧倒的劣勢なのだから、試してみる価値は有るかもしれない。
レベッカが出した結論はそんな所だった。
筆談を記した紙をくしゃくしゃに丸めて放る。
考察はここで終わりだった。

「何にせよ、私はしばらく動けない」
「わかってます。次の夜まで待っていてください」
「悪いな。それでどうする?」
「どうする、というのは?」
「いつ、どっちを調べに行くんだ」
「ああ、いつかというなら雨が止んだらすぐです。それまでは休んで、あと……」
トマの視線が。
部屋の隅にある布を被せられた遺体に、向いた。

ジュジュの遺体。
首を切り取り、首輪のサンプルを入手すると決めた、トマの仲間の遺体。
想いが交錯した。
筆談にするほどでもなく、言葉を伏せて想いを伏せずに話を交わす。

「私が一人でやっておくよ」
「いえ、これは」
「ムリすんな。心を病んだら何にもならないぞ」
「でもベッキーさんはベッキーさんで」
今は吸血鬼だから。
レベッカはあわあわとした様子で、だけどはっきりと否定する。
「ガマンするぞ、ちゃんと。血のパックだってあるし。さっきもいけたし」
「でも、それって大変じゃないんですか?」
「おまえよりはずっとマシだ」
「でも」
「だから」
レベッカは真っ向からトマの意思を否定する。
辛いを必ずしも自分でやる必要は無いのだと。

「自分がやるべきだ、やらなきゃならない、なんて考えは捨てろよ。
 おまえがやるべきじゃないぞ。死体だからって、友達を、切り落とすなんてこと。
 おまえがやらなきゃいけないワケでもない」
「わかってます」
「友達だから尚更なんてのも無しだからな。
 友達は自分が切るべきだなんてちょっとじゃなく色々冒されてるぞ」
「わかってます」
「余裕を持って、張り詰めるなよ。
 そういうのって、この島じゃイヤな方向にばかり転がるんだからな」
「わかってます」
「あとさっき一緒にやったから判ると思うけど人体の切断はすっごく疲れるぞ。
 成り立てだけどいちおー吸血鬼の私がやるなら、手伝いの有り無しなんて大差無いぞ」
「わかってます」
「それでも、やるのか?」
0417ギップリャアアアの謎 ◆tcG47Obeas 2009/12/08(火) 23:48:30ID:6kJOWeKw

返答はかなりの間をおいて。
僅かに震える声で、ゆっくりとした答えが返った。
「はい」

即答ではなかった。
きっぱりとした決断などではなくて、迷いに悩んで、考えて、苦しんだ答えだったのだろう。
(なら、止められないよなぁ)
レベッカはそう思うと。
深い溜息を吐いて。
幸せがいっぱい逃げていきそうな溜息だと思ってから、そもそも幸せが残ってないと自嘲した。
少しだけ笑えた。
不幸や落胆でも笑えた事が、少しだけ可笑しかった。

「なんでだ?」
「ベッキーさんに押しつけた、なんてイヤな思いを抱えたまま行くよりはマシです。
 逃げるみたいで」
「逃げていいんだよ。正面から壁に頭ぶつけるのは勇気って言わないんだからな」
「でも、仲間なんですよね、ベッキーさん」
「まあな。私はおまえの仲間だ」
「仲間を置いて逃げるのってひどい事したら、後々までずっとクやみます」
「う。ちょっと前に『ここは任せて』やった身としては耳が痛いな」
「す、すみません」
「まあ、ほんと私のワガママだけどな。
 あいつら、自分たちのせいで私が殺されたなんて思ってないだろうな。
 守れた私は大満足だけど」
「なんだかズルいです」
「わるいか」
「わるくないんですか?」
「良いんだ」
軽妙な言葉を交わし、息を合わせて気持ちを整える。

「トマ。また吐きそうだったら今の内に吐いておけよ。バケツも用意しておくからな」
「ベッキーさんは今の内に『補給』済ませておいた方がいいですよ」
「わかってるよ」
「わかってます」

それから、二人はジュジュの遺体からも首輪を取り外した。
首輪解除法研究用の、スペア。
一つあれば良いという物ではない。解除の実験を行うなら何個有っても足りない。
更にトマとレベッカが別行動をとる予定も考えると、少なくとも二つは欲しかった。
それぞれの行先でも調べることができるからだ。
だから野上葵の首輪はレベッカの荷物に移り、トマはジュジュのそれを持つ事にした。

首の切断は、野上葵から取り外す時に学習していたから二人ならそれほど困難な作業ではなかった。
トマがまた気持ち悪くなったり、レベッカが吸血衝動を誤魔化すため陰で輸血パックを飲んだ程度。
その後は交代でシャワーを浴びてさっぱりして。
しばらくの休憩に入った。

彼ら、彼女らは一歩ずつ進んでいた
手と手を取り合って。
闇の中をゆっくりと、着実に。

遥か遠く淡い希望の光に、いつかたどり着けると信じて。
0418創る名無しに見る名無し2009/12/08(火) 23:49:24ID:G0UsVFZb
 
0419ギップリャアアアの謎 ◆tcG47Obeas 2009/12/08(火) 23:49:45ID:6kJOWeKw
【H−5/シェルター地下/2日目/黎明】
【レベッカ宮本@ぱにぽに】
[状態]:吸血鬼化(肉体強化、弱点他)。シャワーでさっぱり。休憩。
[服装]:普段通りの服と白衣姿(服は少し血などで汚れているが、白衣は新品)
[装備]:木刀@銀魂、ヒラリマント@ドラえもん(ボロボロだが一応使える) 、魔導ボード@魔法陣グルグル!
[道具]:支給品一式×2、15歳のシャツ@よつばと!を裂いた布、宇宙服(最小サイズ)@からくりサーカス
     輸血用パック×19、クーラーボックス、保冷剤、野上葵の首輪
[思考]:しばらくは休憩して、それから。
第一行動方針:雨と日光を避けるため、基本的にはシェルターで待機する。
第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
        また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)
第三行動方針:レミリアを止め、ジェダにぶつける。そのために首輪を外す方法などを模索する。
第四行動方針:もし三宮紫穂に会ったら、野上葵の死体を辱めたことを改めて謝る。
基本行動方針:主催者を打倒して元の世界に帰る。
参加時期:小学校事件が終わった後
[備考]:吸血鬼化したレベッカの特殊能力として、魔力の存在と飛行能力を確認しました。
   トマと時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せします。
   宇宙服を着れば日中の行動が可能になる可能性に思い至りました。まだ真偽の程は分かりません。
   シェルター内の通話記録により、この会場の全ての電話上の会話を聞きました。

【トマ@魔法陣グルグル】
[状態]:健康、ずぶ濡れ
[装備]:麻酔銃(残弾6)@サモンナイト3、アズュール@灼眼のシャナ 
[道具]:基本支給品、ハズレセット(アビシオン人形、割り箸鉄砲、便座カバーなど)、
    参號夷腕坊@るろうに剣心(口のあたりが少し焼けている・修理済み)
    はやて特製チキンカレー入りタッパー、手術道具の一部(のこぎり・メス・のみ等)、ジュジュの首輪
[思考]:しばらくは休んで、それから。
第一行動方針:シェルターでしばらく待機。雨が止んだら一人で外に出て調査遠征? 一緒に待機?
第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
        また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)。
第三行動方針:他の参加者と情報と物の交換を進める。必要ならその場で道具の作成も行う。
第四行動方針:『首輪の解除』『島からの脱出』『能力制限の解除』を考える。そのための情報と物を集める。
第五行動方針:トリエラと再び会いたい。それまでは死ぬわけには行かない。
第六行動方針:レベッカ宮本が会った「明石薫」(実はベルカナの変身)について詳しく知りたい
基本行動方針:アリサとニケたちとの合流。及び、全員が脱出できる方法を探す。
[備考]:「工場」にいる自称“白”の正体は「白レン」だと誤解しています。
    レベッカ宮本と時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せ。


首を切断されたジュジュの死体は布を掛けられシェルターのどこかに安置されています。
0420 ◆tcG47Obeas 2009/12/08(火) 23:51:11ID:6kJOWeKw
投下終了。
支援ありがとうございます。
0421創る名無しに見る名無し2009/12/09(水) 00:12:26ID:dXF59C2X
投下乙です!

やっぱこの2人なんか和むなw
見ていてニヤニヤしてしまうw
まあ、なんにせよトマがククリの死を乗り越えられて良かった
この2人には今回の考察等を生かして何とかこのゲームをぶっこわしてほしいな

あ、ニケも死んじゃったのかwトマ大丈夫かな…?
0422創る名無しに見る名無し2009/12/09(水) 01:39:04ID:qMvw5cAH
ちょっと読みづらい
次からは読みやすく書いて
0423創る名無しに見る名無し2009/12/09(水) 14:34:59ID:dXF59C2X
また予約か一体どうしたんだ最近w
嬉しすぎます書き手様ありがとう
0424創る名無しに見る名無し2009/12/09(水) 14:39:57ID:rus6RB+L
投下乙!
ギップリャ!
0425創る名無しに見る名無し2009/12/09(水) 16:04:13ID:cKpP+0yx
投下乙!
仲間が死んだりしても比較的ぶれずに頑張ってる考察派二人。
頑張れ、超頑張れ!
マーダーの千秋が来るかもしれないけどな!

そしてまたも予約か……
うれしいことだけどいったいこのロワに何がおこってるんだw
0426 ◆S4WDIYQkX. 2009/12/10(木) 20:36:05ID:rB1bb3hK
投下開始します。
若干行動を制限されるため纏めて予約しましたが、
高町なのはの回想録の形を取っているため、他の工場組は実質上登場しません。
0427高町なのはの過ごした一日(前編) ◆S4WDIYQkX. 2009/12/10(木) 20:37:31ID:rB1bb3hK
暖かい。

楽しい。

愛しい。

優しい。

切ない。

苦しい。

哀しい。

痛い。

正しい。

恐い。

冷たい。

悲しい。

寒い。

寂しい。

怖い。

辛い。

温かい。

二十四時間足らず。

たった一日の出来事が、これまでに生きてきた十年近い積み重ねを冒してしまった。

私、高町なのはは、こんなにも濃密な二十四時間を過ごした事が有りませんでした。
これまでに積み重ねてきたものが、こんなにも呆気無い物だったなんて思いもしませんでした。
不屈の心はこの胸に。
何時の日か交わした誓いの言葉さえも、何処か空しく思えます。
私は今でも屈していないのでしょうか。
それとも尽く屈してしまい、もう立ち上がれないのでしょうか。

この島に来た時も、最初の頃はなんて事の無い出会いと、愛しさで始まっていたのに。
0428高町なのはの過ごした一日(前編) ◆S4WDIYQkX. 2009/12/10(木) 20:38:30ID:rB1bb3hK
午前六時前。
忘れもしない、この殺し合いが始まった会場。
あそこで起きた事はとても怖ろしいものでした。
殺し合いの開幕を告げた冥王ジェダ。
そして、彼に挑んで無惨にも殺されてしまった名も知れぬ女性。
太っちょの少年が殺し合いのご褒美について要求していた事は、
後でとても重要な話になりましたけど、この時はまだ、ただの情報でした。
あの時に感じていたのは恐怖だけ。
私、高町なのはと、私の大切な友人達が誰かに殺されてしまう。
その事に対する恐怖だけが私を支配していました。

そんな始まりでしたから、私は恐怖と緊張に震えていました。
支給品を確認した時はちょっぴり呆然としてしまいましたけど。
謎の薬。時限爆弾。グーチョキパーの絵が描いてある板の付いた棒。
こんな物で殺し合いだなんて悪い冗談にしか思えませんでした。
前の二つには使い道がありますけど、グーチョキパーのジャンケン棒なんて何に使うんでしょう。
それから、最初に出会ったのもまるで冗談の塊みたいな人でした。
ニケくん。
私と同じ位の年頃で、勇者だっていう男の子。
ちょっとスケベで悪戯好きでおかしな彼は、私をホッとさせてくれました。
あの時、恐怖に震えていた私を助けてくれたのは紛れもなくニケくんです。
ニケくんのおかげで、私の恐怖は和らぎました。
例えそれが仮初めの、僅かの間だけの安らぎだったとしても。

午前八時頃。だったかな。
まあ、ニケくんには悪いけど、何やってたんだろうとは思う。
緊張感も無く太鼓を叩いて踊って、エヴァさんに叱られたのも当たり前だよね。
その、水の剣を試す為に…………だなんて提案も。
ちょっと……うん、ちょっとだけ叩いちゃったのも当然だよね。

それで、花摘みに行って…………。
まさかその先で、ヴィータちゃんに出会えるなんて思いもしなかった。
それも、あんな形で。
あの時のヴィータちゃんが浮かべた表情は、忘れられません。
一欠けらの喜びも無い、動揺と怒りと苦痛と悔いに類する全ての感情。
怒りすら押し込めた、冷たい殺意。
以前にヴィータちゃんと戦った時でも怒りの感情が見えたのに、それすら見えない哀しい殺意。
ヴィータちゃんははやてちゃんの為に殺し合いに乗ると言っていて。
止めなきゃいけないって、そう思いました。

だけどあの時にヴィータちゃんを止められたのは私じゃありませんでした。
才賀勝くん。
ヴィータちゃんだけじゃなく勝くんも危険なのかと勘違いして邪魔してしまいましたけど、
勝くんは私もヴィータちゃんも、物凄い騒音という方法で殆ど傷つけずに倒してみせました。
気絶した時は何が何だか判らなかった位です。
ニケくんに続いて勝くんにも助けられた事になります。
もうお礼は言っていたけれど、もう一度。
ほんとうにありがとう。

それから目を覚まして。
多分、お昼も過ぎた頃だったのかな。
勝くんは山小屋の、ニケくん達の所まで私とヴィータちゃんを運んでくれていました。
みんなと言葉を交わして、話をして。
ヴィータちゃんが起きて、また、止めなきゃいけなくて。
エヴァちゃんのおかげでヴィータちゃんを止めることが、できて。
0429高町なのはの過ごした一日(前編) ◆S4WDIYQkX. 2009/12/10(木) 20:39:25ID:rB1bb3hK
必要なこと、でした。

誰かを納得させるための言い訳じゃなくて、自分を納得させるための言い訳だとおもいます。
思い出すと、ヴィータちゃんの絶叫が耳に響いてくるんです。
それと、あの言葉が。
私はヴィータちゃんに、二回だけおねがいしました。
考えを変えて、って。
それが断られたらヴィータちゃんを殺さない為にひどい事をすると言って。
おねがいじゃなくて脅迫だよね、これって。
ヴィータちゃんが最初なんて言ったのかは、難聴が残っていてよく聞こえなかったけど。
繰り返し聞くと、答えは有りました。
この悪魔めって。

悪魔でも、いいんです。
悪魔らしい身勝手で残酷なやり方でも、誰かを救うんだ。
そう決意した事を覚えています。
胸の痛みに耐えられなくて、インデックスちゃんに甘えて少しだけ、泣いてしまったけど。
でもあの時はきっと、決意できていた筈なんです。
例えニケくんに怖がられ、勝くんに警戒されても。

もちろん焦りはありました。
その後に立てた、島の中央部へみんなを集めようって計画もちょっぴり焦ってたと思います。
別にこの計画が間違っていたわけじゃないけれど。
殺し合いの速度は、本当に焦るべき速度で進行していましたから。
でもその為の偵察の時、同行した勝くんを置いて山小屋に走り帰ってしまったのは失敗でした。
運動は苦手なのに、魔力で強化までして、飛ぶように走って。
結果論ですけど、そうしなければあんな言葉を聴いてしまう事もなかったのに。

『――今まで、色んなモンスターと戦ってきたんだけどさ。八卦炉使って拷問かましたときのなのはは――』
『今まで出会ったどんな悪魔より悪魔らしかったぜ』

あれは、当然の言葉でした。

当たり前なんです。
そう思われるのは判りきってました。
ちゃんと覚悟したはずです。
だから、そんな言葉で傷ついてなんていられない。
例えその言葉がニケくんから放たれた物だったとしても、立ち止まってなんかいられないのに!

私は、逃げてしまった。
ニケくん達の顔を見る事もできなくて、その場から逃げ出してしまった。
なんて弱い決意だったんだろう。

そうして森に降り立って、一人で考え事をしていたのが二時を少しすぎた頃、だったかな。
その時に出会ったのが、犬上小太郎くんでした。
エヴァちゃんの仲間で、犬の耳が生えた少年です。
彼はネギくん──エヴァちゃんの弟子だという少年が殺し合いに乗っているという、
リリスが語ったのと同じ話を聞いたそうで、やっぱり気持ちが焦っている様子でした。
もし彼が私と同じ状況に立たされたらと少しだけ思って訊いてみたけれど、
あれは彼の心を掻き乱しただけだっただと思います。
本当に、変な話をしてしまいました。
ごめんなさい小太郎くん。
0430高町なのはの過ごした一日(前編) ◆S4WDIYQkX. 2009/12/10(木) 20:40:45ID:rB1bb3hK
それでも小太郎くんは一緒に来いと言ってくれました。
もう少し話を聞きたいと言いながら、私の事を心配もしてくれました。
それが本当に嬉しかったから、私は彼に付いていく事にしたんです。
神社に行って、彼の調べ物を手伝って。
学校が火事になっているのを見て、そこに向かって──。

人を、殺しました。
それも三人も。




あの少年を生かしておいてはいけない。
それは確信してしまっていた事です。
彼とは少ししかお話していませんけど、それでも理解出来てしまいました。
彼の味わった絶望と悪夢が、それを知らない人には絶対に理解できないだろうという事と。
それと彼が、狂ってしまっているという事を。
私はあの時、狂気を理解したんです。

狂気とはつまり、異常な世界に適応して生きる為の、正常とは外れる思考の事なのだと思います。
彼は満面の笑顔で身の毛もよだつような地獄を語って見せました。
その地獄に適応してしまったから、彼はああなったのだと思います。
きっと、そこには正しいとか間違っているとか善し悪しなんて物は意味が無いんです。
適応して生き延びるか、適応できずに倒れるか、それだけで。
私も多分あの時から、この世界への適応を始めました。

江戸川コナンくんは言いました。
「殺人が世界の仕組みだなんて、そんなわけねーんだよ! バーロー!!」

この世界は適応してはいけない世界です。
生き残る為には適応しなければならないけれど、そうなってはいけないんです。
そうなってしまった人はきっと、この世界以外のどこにも帰れなくなってしまうから。
それでも生き残りたくて。
それでも生き残したくて、私の意思はこの世界の仕組みを受け入れました。
殺人という行為を、受け入れ始めたんです。

私は学校で出会ったみんなから別れました。
古手梨花ちゃん、リンクくん、李小狼くん。
みんな良い人だったから、そうするべきでした。
殺人という行為を受け入れた人は、それを受け入れない人と一緒にいるべきではありません。
人を殺すという事は、どんな理由であれ間違った行為です。
それは間違った世界でだけ通用する狂気です。
もしもルールだと言うならば、広げてはならない否定すべきルールなんです。

だから小太郎くんとも別れ一人で向かった廃病院の前で、ブルーとイヴに出会いました。
小太郎くんの言っていた悪い人です。
問い詰めれば襲ってきたという事は、やっぱり間違いなかったんでしょう。
二人には逃げられ、ブルーの言葉通り、工場にはフェイトちゃんの、死体が転がっていました。
彼女達が、フェイトちゃんを殺したんです。
私にとってきっと、誰よりも大切だった人を、殺されたんです。
フェイト、ちゃんを、殺され、たん、です。






フェイトちゃんの、魂が、せめて、天国に逝った事を、祈って。
彼女を埋葬した時の私は、既に元々の私を、見失いつつありました。
自分に人間の心が残っているのかも判らないほど、心が凍てついていました。
0431創る名無しに見る名無し2009/12/10(木) 20:42:01ID:J05OHvDL
 
0432高町なのはの過ごした一日(前編) ◆S4WDIYQkX. 2009/12/10(木) 20:42:28ID:rB1bb3hK
湧き上がる憎しみはブルーとイヴに対するものではありません。
私は心底から、この世界を憎んでいました。
あの時の私が適応しつつあったこの世界は、断じて間違った世界です。
それでも、その間違いに適応した私だから出来る事が有ると信じていました。
だから私は狩りに出たんです。
誰かを生かすために誰かを殺す。
致命的に間違った世界で回る、決定的に壊れたルールでも、
使いようによってはその狂気で誰かを生かす事ができると信じていました。
信じて、江戸川コナンくんを巻き込んででもあの少年を殺しました。
李小狼くんを生かすために灰原哀ちゃんを殺しました。
そしてまた。
何処かの誰かを生かすために、リリスを殺そうとしました。

リリスとの遭遇は全くの偶然で、だけど都合の良い事でした。
ジェダ側の情報を持っているであろう彼女を捕獲する事が出来れば、
ジェダを倒し、殺し合いを打倒する事に近づけるかもしれません。
それが無理でも、他の誰かに会う前に自分で出会えたのは良いことです。
彼女は倒さなければならない相手でしたから。
だから逃がすまいと魔砲『ファイナルスパーク』を放ち、そして。

はやてちゃんを殺しました。

















こんなはずじゃなかった。


世界はいつだってそうだと言ったのは誰だったでしょう。

もう、思い出せませんでした。
この世界に来る前の事がぜんぶ、白く塗り潰されてしまったみたいです。
目の前に残ったのはアリサちゃんの壊れた笑い顔と、
はやてちゃんが居たはずの場所に在った、誰かの手だけで。
それ以外には、もう。

なにも。


0433創る名無しに見る名無し2009/12/10(木) 20:42:45ID:J05OHvDL
 
0434高町なのはの過ごした一日(前編) ◆S4WDIYQkX. 2009/12/10(木) 20:44:04ID:rB1bb3hK

その後に何をどうしたのかはよく覚えていません。
空を飛んで逃げたことだけは覚えています。
こんな危険な島で、あんな有様のアリサちゃんを置いて逃げ出したことだけは。

アリサちゃんまで失うわけにはいかない。
例え心を失っても、せめて命だけでも守らなきゃいけない。
なのに、耐えられなかったんです。
目の前の悲劇を直視し続けることができなかったんです。

私はどうしてこんなにも弱くなってしまったんだろう。
本当に不思議なくらい。
でもだから、私は。
病院で出会った双葉ちゃんと、シャナちゃんと、紫穂ちゃんの前で言ったんです。

「たとえ手足を失っても。たとえ心が傷付き砕けても」

アリサちゃんはまだ生きているから。
ヴィータちゃんにはひどい事をしたけれど、少なくともあの時は殺さないで済んだから。
ニケくん達は、私を怖れ恐がっても生きていてくれるはずだから。
学校で人を殺す人を殺すために、そうでない人まで殺して、
人を生かすために一人を切り捨てて殺した事に比べれば、まだずっと。

「死んでしまう事に比べればそんなのはきっと、大した事じゃないよ」

大した事じゃない。
人が死ぬ事に比べれば。
人を殺す事に比べれば、大した事じゃない。
人の死を、殺人を受け容れていない人は、きっと元の世界に帰っても良い人なんだから。

双葉ちゃんには怒られました。
少し心配になって、でも内心ではホッとしました。
そんな子が生きている事と、その子が強い人に護られている事がうれしくて。
私は彼女達にアリサちゃんの事を託して、廃病院を後にしました。
アリサちゃんと向き合えない私にはそうするしかありませんでした。
そうして私は、隠れ家を探してその場を後にしました。
休息が必要でした。
力を、魔力を回復させる必要が有りました。
力のせいではやてちゃんを殺してしまったのに、私は尚も力を求めていました。

心では間違っていると思っていました。
でもこの世界では、否応無く力が必要になります。
間違った世界の間違ったルールです。
一人でも多くを生かしたいと思えば誰かを殺す事になる。
だから私の理性は、力と前進を選び続けました。

結局行き着いた先は、フェイトちゃんが殺されていたあの工場でした。
島の端の方だから、人が来る可能性は低いと思ったんです。
ううん、もしかするとフェイトちゃんの近くに居たかっただけかもしれません。
とにかく私はそこで。
一通の電話を受けました。

トマくんからの、電話を。
0435創る名無しに見る名無し2009/12/10(木) 20:44:57ID:J05OHvDL
 
0436高町なのはの過ごした一日(前編) ◆S4WDIYQkX. 2009/12/10(木) 20:45:11ID:rB1bb3hK
ニケくんが言っていた仲間の一人です。
急いでニケくんの事を教えてあげなきゃいけないと思い、だけどすぐに考えました。
トマくんがニケくんと再会した時、私の事が話されてしまうと。
私は、ニケくん達ともう一度会う勇気が有りませんでした。
そう、学校のみんなと別れたのとは違って私の臆病さが理由です。
私は、私がこうである前から私を知っていた人に会うのが怖かったんです。
だから名前を隠して、話を誘導してから、ニケくんの事を教えました。
本当に逃げてばかりです。
私は仲間よりも敵を求めていました。
そしてトマくんとの情報交換は進んで。
トマくんが、はやてちゃんの事を話し出して。

なんていう偶然なんだろう。
私は。
私が言葉を交わしている電話の向こうのトマくんは、はやてちゃんの仲間でもあって。
本当に、希望を信じていて。
楽しそうに、私が殺して、しまった、はやてちゃん、の話、を、し、て。

「…………大した事じゃないよ」

そう。大した事じゃ、ない。
私の心がどれだけ切り刻まれたって、それは大した事じゃないんです。
ただこの時、再認識しました。
私はもう立ち止まれないんだろうって。

「フェイトちゃんは殺されて、ここに眠り目覚めない」
どうしようもない現実。
フェイトちゃんはブルーとイヴに殺された。

「はやてちゃんはわたしが殺してしまったし」
どうしようもない現実。
はやてちゃんは私が殺した。

「ヴィータちゃんは、はやてちゃんの死によって消えていく」
どの位のタイムラグが有るかは判らないけれど、何時か。
肉体も精神も、はやてちゃんが死んで生き続けられる事はない。

「アリサちゃんは生きているけど、心はわたしが壊してしまった」
生きている。それだけが救い。
だけどもう、アリサちゃんの明るい笑顔を見れる事は無いんだろう。

「わたしの指は、可笑しなくらいに血に濡れて」
私には帰る場所なんて無くって。

「輝く未来は…………何処に……有る…………?」
何処にも、無くって。

私が行き着くべき場所も。
私が抗うべき理由も。
私が足掻く意味も。
私が殺す価値も。
無くって。
この時の私は、既に死んでいました。
0437創る名無しに見る名無し2009/12/10(木) 20:45:49ID:J05OHvDL
 
0438高町なのはの過ごした一日(前編) ◆S4WDIYQkX. 2009/12/10(木) 20:47:24ID:rB1bb3hK
それでも私の体は動き続けました。
心は砕け散ってしまったのに歩き続けました。

昼間の学校で私が殺した、灰原哀ちゃんは言いました。
「ギルバート曰く。
 『狂人とは理性を失った人のことではない。狂人とは理性以外のあらゆる物を失った人である』、よ」

きっと私は、その通りでした。
理性の狂人。
それこそが私の心が砕けた後に残ったものだったんです。

そうして私は休憩を取ろうと歩き出して。
Q-Beeに出会いました。

  『ダッテオマエハ、"6ニン"モコロシテイルジャナイカ』

6ニン。
6人。
学校の少年と、江戸川コナンくんと、灰原哀ちゃんと、はやてちゃんと、他に二人。
意味が分からなくて、最初は手違いかと思って。
だけど恐らくは、はやてちゃんの時に広域を薙ぎ払う砲撃で巻き込んでしまった誰かだと気づきました。
誰か、二人もの人間を。
気付きもせず、知りもせず、虫のように踏み躙ってしまった。

そして七人目を。
首輪を付けた白い猫を、殺しました。

もう少し確かめたかった。そう思います。
話せるのかも判らないけれど、お話をして、分かり合うことを試みたかった。
だけど同時に考えました。
今の私に誰かと分かり合えるとは思えなくて、なによりも余裕が無い。
相手から襲われればひとたまりも無い状態でした。
ある程度は確かめて、相手が危険人物であるという予測は立ったのだから、殺すべきだ。
いや、殺さなくてはならない。
私は確信を持ってあの猫を殺しました。
何を忘れているのかにも気付かないまま過ちを冒してしまった。
そんな気がします。

気付けば私の手は七人もの血に濡れていました。
どうしてなんでしょう。
一人でも助けたかった、生きて欲しいと思っていたはずなのに。
私はもう、疲れてしまって。
Q-Beeが持ってきた追加支給品の睡眠薬で、眠りに就きました。
0439創る名無しに見る名無し2009/12/10(木) 20:47:44ID:J05OHvDL
 
0440高町なのはの過ごした一日(前編) ◆S4WDIYQkX. 2009/12/10(木) 20:48:22ID:rB1bb3hK
だから、あの夢はきっと必然だったのでしょう。
まだ生きている者だけでも一人残らず護ることができて、私だけが死んでいく。

「ねえ、これがいい夢なの?」
  (あなたは、どっちだと思う?)
      「質問を質問で返すのはずるいよ」
        (そう? あなたが悪い夢だと思っているなら、はっきりとそう言えばいいだけだよ)

私があの夢を見た事は。
わたしがあの夢に居た事は。

「分かったよ。…………これは多分……いい夢、なんだよね……」
  (どうして?)
      「ジェダを倒して、生き残った子が元の世界に帰れたから。
       最初の放送のあと、一人の犠牲も出さないで」
        (正解。そして、この夢はあなたが望んだものだっていうことも――)

あの、いい夢を見た事は。
私は自らの罪に打ちひしがれていて、それでも進もうとしていたから。

(さすがに物分りがいいね。そうだよ、あなたは夢の世界にいても、
 現実の世界、現状の中で最もいい結果を無意識のうちに求めていたの。
 ありもしない幻想にも、掴みとれない願いにも決して縋ろうとはしなかった。
 夢の中でなら、みんなが生きている世界、海鳴市で見てきた日常と同じものを見ることだってできたのに、
 あなたはそうしなかった。
 ただひたすら、今この島にいる自分が掴める、現実的な未来の中で、
 最もいいものを選んでシミュレートしていたんだよ。
 友達が死んだという現状を覆すことなく、そこから更に突き進んで、
 努力に努力を重ねて、全てがうまくいった結果が今の夢なの)

あの夢のように終わる事が出来るなら、それはきっと幸せな終わり。
夢を見なかったわけじゃない。
冷たくて、寂しくて。
それでも私があの終わりを望んでいたから、私はあんな夢を見た。
だからあの夢は、いい夢でした。

「全部うまくいったとしても、私は最後にこうなるの?」
  (答えが欲しい?)
    「…………いいよ。試しに訊いてみただけだから」
      (そう。……ねえ、もういい? 早くこの夢の幕引きに戻ろうよ)
         「うん……そう、だね……」

だけど何時しかユメは醒めて。
眠りは終わって。
わたしは、目を覚ましました。
0441創る名無しに見る名無し2009/12/10(木) 20:48:41ID:J05OHvDL
 
0442創る名無しに見る名無し2009/12/10(木) 20:55:27ID:FWMRaO4i
 
0443創る名無しに見る名無し2009/12/10(木) 20:56:10ID:J05OHvDL
 
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