『定型・安楽死マニュアル』 3月版(その2) >>411の続き

第6章 定型・安楽死の技術T  “マイルドなハングマンズノット”
原理的なことに無自覚なままより良いハングマンズノットを実行した人はこれまでも存在したと思います。
しかし、原理を知ることで、実践の場での一つ一つの作業に意味と確実性が宿ります。なので、技術論の
前に原理的な説明をしたいと思います。それによってハングマンズノットの信頼性は磐石なものとなります。

6.1 俗論を撃つ──勢いは輪っかを締めるのに役立たない
・本題に入る前に、俗論的なハングマンズノットの動作を解明するところから始めます
・ハングマンズノットの最大の弱点は、ロープの滑りをよくしても輪っかが締まりにくいことです。それで、そ
れは勢いが足りないせいだと昔も今も人は考えてきました。日本式絞首刑においても長い落下距離が設
定されています。ほとんどの人は、それを、楽に確実に死ぬために必要なことなのだと理解しています。
・しかし、当マニュアルはその常識を誤った俗論として全否定します

6.2 俗論的ハングマンズノットのジレンマ
・そこで、勢いをつけて落下したらハングマンズノットはどうなるのかを考えます
・全体重がかかると同時に、前頚部は輪っかに打ちつけられ、輪っかは前頚部に食い込み、後頚部と輪っ
かの間に三角形の隙間ができます(結び目を頂点とする2辺の斜辺にあたるロープと後頸部を底辺とする
三角形)。
・ここから先、輪っかが締まるということは隙間三角形の頂角が拡大することを意味しますが、頂角が広が
ることで結び目はロックしてしまいます。これはハングマンズノットのジレンマと言っていいでしょう
・ここで輪っかが締まる余地を十分残したまま、一旦力はつり合います
・この時点で最初の勢いはなんのためだったのか意味不明になります。どんなに勢いをつけても、それが
輪っかを締めるのに全く役立ちません。だた前頚部を打ちつけるだけで無意味であり、かつ有害
・この力のつり合いが崩れると、首と輪っかが同調して回転し、締まります。
・勢いをつけて吊ると、力がつり合ったままで終わるか、不均衡が生じて最後まで締まるか、という偶発性
に左右される分岐点が発生します
・締まり切らなくても目的は達成されるでしょうが、ちょっとした努力でハングマンズノットのジレンマを解消
してクオリティを上げようというのが“マイルドなハングマンズノット”です

6.3 “マイルドなハングマンズノット”の特徴
・“マイルドなハングマンズノット”は6.2の力のつり合いが崩れる部分だけを利用するものです
・重要なことは、意図的に「ハングマンズノットのジレンマ」を解消して、力のつり合いを崩すことです
・そのために、結び目がずれるというデフォルトのハングマンズノットの欠点をポジティブに利用します
・それによってハングマンズノットの最大の欠点である締まりにくさの問題は解消されます
・結果的にハングマンズノットの挙動を読みきれるポジションを獲得します。それは技術面だけでなく精神
面でも有益だと思います

6.4 手首モデルで“マイルドなハングマンズノット”の動作を確認
・大きめの輪っかを手首で真下に押し下げると、ハングマンズノットはぎこちない挙動を示し、相当大きな力
でないと締まりません。締まっても途中で結び目がロックしてしまいます。輪っかが当たる手首の部分が痛
くなります。
・ところが、そこから輪っかの回転方向に手首を回転させて輪っかと同調させれば、輪っかが簡単に締まっ
てしまいます。必要なのはこの最後の部分だけ、というのが“マイルドなハングマンズノット”です
・次に、締まり切った時に結び目が大体真後ろに来るように最初に結び目をずらして、小さな隙間三角形を
残してスタンバイします。
・そして首と輪っかを同調させます
・結び目は大体真ん中に来て、三角形の隙間はなくなります(厳密には小さくなります)
・これで「吊る」というより「同調」する感触をつかんでください