ジョナサン・エイモス、BBC科学担当編集委員

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サイを逆さづりにしてその影響を調べる研究が9日、ノーベル賞のパロディ版として知られる「イグ・ノーベル賞」の輸送賞を受賞した。

今年はこのほか、歩道に落ちているガムにひそむバクテリアの研究や、潜水艦内のゴキブリ抑制方法などが受賞した。

米ハーヴァード大学での授賞式は新型コロナウイルスの流行による制限で行われず、インターネット配信で開催された。

ナミビアの保護活動で
イグ・ノーベル賞は、まずは笑いをもたらし、次に考えさせるような研究に贈られるとされている。

サイを逆さまにする研究は、まさにこの条件に当てはまる。12頭のサイを10分間逆さまにつり下げるよりばかげた光景はあるだろうか?

しかし、野生動物の臨床医である米コーネル大学のロビン・ラドクリフ氏の研究チームは、サイをヘリコプターでつり上げた時に健康に影響があるかどうかを知るため、ナミビアでこの調査を行った。

ヘリコプターでサイを逆さづりにして運ぶ手法は最近、アフリカでの自然保護活動で多く使われるようになった。生息地が細分化している中で、この絶滅危惧種に遺伝的な多様性を持たせるために、サイを移動させる必要があるからだ。

しかし、麻酔を打たれたサイの心臓や肺の動きが、逆さづりの状態でどうなるかを調べた研究はこれまで存在しなかった。

ラドクリフ医師はBBCニュースの取材で、「ナミビアは、サイを逆さづりにしてヘリコプターで運んでいる最初の国ではないが、立ち止まって、『ねえちょっと、これってサイにとって安全なの?』と疑問を持った最初の国だ」と話した。

そこでラドクリフ氏の研究チームはナミビアの環境・森林・観光省と協力し、麻酔を打った12頭のサイをクレーンで逆さづりにし、身体的な反応を調査した。

結果として、サイはこの環境でも平気だった。むしろ、胸を下にして横たわったり、横向きに固定されるよりも、逆さづりの方が調子が良いことが明らかになった。

「この理由については、サイが横向きにあると血流に影響が出る。言い換えれば、下になっている側の肺には多くの血液が流れ込むが、上の肺はそうではなくなる。逆さづりの場合は、逆立ちしているのと同じなので、両方の肺に均等に血液が行きわたる」と、ラドクリフ氏は説明する。

「また、横向きや横ばいの状態が長く続くと、体重が重いために筋肉にダメージを受け、ミオパシー(筋原性疾患の総称)を起こすことも分かった。そして、逆さづりの場合はかかとにひもをくくり付けるため、脚への負担もない」

受賞者の発表は本物のノーベル賞受賞者が行うことが慣例となっており、今年はフランシス・アーノルド教授(2018年、化学賞)やマーティー・チャルフィー教授(2008年、化学賞)、エリック・マスキン教授(2007年、経済学)などが出席した。