原告の奥本章寛死刑囚は、自宅で生後5ヶ月の子、妻、義母を殺害したいわゆる「宮崎家族3人殺害事件」で殺人などの罪に問われ、2014年に死刑確定した。現在は福岡拘置所に収容されている。

一審の宮崎地裁で死刑判決が言い渡されたころから、色鉛筆で絵を描くようになった。その後、描いた絵を絵ハガキにして、販売収益金を遺族(妻の弟)への被害弁償金にあてている。

原告代理人の黒原智宏弁護士によれば、描いた絵は100枚程度にのぼり、10年間の活動をまとめた冊子もつくられた。支払い済みの弁償金は200万円を超えるという。

「経済的支援を目的としたものですが、一方で、奥本さん自身も絵を描くことで罪と向き合うことになり、心の平穏を得るに結びつく有意義な活動でした」(黒原弁護士)

描く絵のモチーフも次第に、花などから、次第に動物、人間の家族になった。それを助けたのが、奥本死刑囚が購入した色鉛筆セットだった。

「たくさんの色を使い、色の濃淡をはっきりつけて、思いを込めた絵を描くようになった」

ところが、収容者の物品使用を定めた法務省訓令の改正によって、色鉛筆を使えなくなってしまったという。

「これまでは、訓令の規則にもとづき、確定死刑囚は、色鉛筆を購入して自室に留めて使用できました」(同)

この訓令が昨年改正され(今年2月1日施行)、色鉛筆を使用できなくなっただけでなく、鉛筆削りも購入できなくなり、貸出をうける必要があるという。貸出には大きな手間がかかるそうだ。

なお、改正の背景には、別の死刑囚が「鉛筆削りの刃を分離して、自傷行為におよんだ」という出来事があると考えられるという。この点、国ははっきりと事情を説明しておらず、今回の裁判のなかで事情を明らかにしたい考えだ。
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