この係は客のわがままに振り回されているとでも思っているのか、単に謝り方を知らないだけなのか。到着時に清潔な部屋を用意できず、客の時間をたっぷり無駄にしておき、その反省を示すことすらできないとは情けない。
「待つ間、せめて茶くらい出してくれるかと期待したのがバカだった」と不満を述べれば、「今からコーヒーでもいかがでしょうか」と完全な出遅れオファーをする始末。

もう結構。今回は帰ることにしよう。これ以上、ここにとどまっても、お互いにいい思い出にはならない。仕切り直すことが、本来優秀であるはずの彼らに対する、せめてもの思いやりである。
ベルキャプテンと客室係責任者に伴われ、正面玄関まで行くと、彼らはタクシーに荷物を積み込み始めた。

これは、二度と来なくてもいい客への対応である。そのくせ、口では「またお越しください」とか「チャンスをいただきたい」と言う。ならば、ロールスロイスでも用意したらどうかと提案してみた。
ロールスロイスは予約で埋まっているが、レクサスでよければ希望の場所までベルキャプテン自ら送るとのこと。頼む前にそう言ってくれれば、ずいぶんと印象が違っただろうに。

実は、帰ると決めてから正面玄関に下りる間に、グランドハイアットへの予約を済ませていた。ここからグランドハイアットまでは歩いても行ける距離なので、レクサスで遠慮なく送ってもらうことにした。
グランドハイアットの正面玄関では、理想的な出迎えがあった。荷物は丁寧かつ美しい動作で運び込まれ、何ひとつ不安や滞りを感じさせるものはなかった。

ここまで送らせたことの本意は、この様子をザ・リッツ・カールトンのベルキャプテンに見せたかったからである。ザ・リッツ・カールトンにしてみれば、格下のホテルがここまで洗練されたサービスをしていることが、心底恥ずかしかったはずだ。
いや、恥ずかしいと感じるセンスを持っていることを願いたい。
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