大森市、力作なのは認めるけど、はっきりいって全然リアリティが無いので、
「地図を読む」快感が生じない。

まず、地図は歴史の現在における断面図である。という意識が欠如している。
ただいたずらに都市アイテムをちりばめても「歴史の断面図≒地図」にはならない。

どうしてこの地にこのような大きな町が発生したのか
どういう発展の仕方をしてきたのか
これから先どうなっていくのか

そういうことは、地図自体が語っていなくてはならない。
大森市を実例に語るならば、

■山の中の狭隘な盆地にかなり水量のある河川が合流している。
まず地学的にかなり無理がある。盆地の水を集めただけでは年間降水量何万ミリもないと
川はこのように太くはならない。

■河岸段丘の形成
大森市内を流れる河川と市街地の間は標高差が見られるが、段丘でもなく扇状地由来の傾斜でもない、
原地形がどういうものであるのか推測しかねる、これは街の形成とも関連のある重要な違和感である。

■地図外の地理
大森市はやや谷口集落的な性格の都市であるが、上流はどうなっているのか、そのイメージは
作者にはあるのだろうか?私鉄がJRと競合して路線を大森川上流に延ばしているくらいであるから
上流にも大きな町があるのだろう。大森川沿いの物流の歴史、旧街道、川港、の形跡が全く見られないのは
不自然である。

■街の規模
市街地のDID面積から推測するに20万人程度の人口を要しているのではないかと推測するが、
狭隘な盆地をぎっしりと市街地が埋め尽くすほど人口が集中した「背景」が地図に表れていない。
工業都市でもなく、城下町でもない。県庁があるのだから、明治期にはすでに
地方でも有数の規模の都市であったはずである。工業が発展する以前に都市であるには
城下町あるいは門前町あるいは物流の大拠点であったはずであるが、それらが見られない。
この点が大森市のもっともリアリティを欠いている点である。