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毎日新聞 2021/6/22 10:16(最終更新 6/22 11:30) 1384文字




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 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、国は22日、自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫さん(当時54歳)が改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」を遺族に開示した。遺族側の代理人弁護士が明らかにした。国は存在するかどうかも長く明らかにしなかったが、ファイルの開示で改ざんの具体的な指示内容や理由が明らかになる可能性がある。

 ファイルはこの日午前、大阪市内にある代理人の事務所に郵送された。代理人は同日中に内容を公表する方針。赤木さんの妻雅子さん(50)が国などに損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が23日、大阪地裁で開かれる予定で、国は地裁にもファイルを提出していた。



 国によると、ファイルには改ざんの経緯を時系列に記した文書や、財務省と近畿財務局との間で交わされたメール、添付資料がとじられている。

 赤木さんが生前使っていた手帳には、所属していた部署のパソコンや記録媒体から改ざんに関するメールをコピーしたことをうかがわせる記述があった。ファイルには赤木さん宛てのメールに限らず、財務局で共有していた本省との詳細なやり取りが含まれている可能性がある。



 訴状などによると、財務局の上席国有財産管理官だった赤木さんは2017年2月以降に数回、改ざん作業を強いられた。うつ病と診断されて休職し、改ざん問題が発覚した直後の18年3月に自宅で命を絶った。

 財務省が18年6月に公表した調査報告書は、佐川宣寿(のぶひさ)理財局長(当時)の意向を確認した同省幹部らが財務局に改ざんを指示し、双方が連携して作業を進めたと認定。指示の時期や伝達ルート、財務局が一時反発していたことは公表したが、改ざんに至った具体的なやり取りは明らかにしなかった。



 ファイルは、赤木さんの当時の上司が「(改ざんの経緯が)全部書いてある」と雅子さんに証言したことで存在が明らかになった。

 雅子さんは提訴した20年3月以降、赤木さんが受けた心理的負担の立証には、ファイルの開示が不可欠だと訴えてきた。存否すら回答してこなかった国は21年5月、地裁の要請に応じ存在を一転して認め、一部をマスキング(黒塗り)処理して6月23日の口頭弁論までに開示する方針を示していた。【松本紫帆】


妻「最後の夫の声、きちんと読みたい」

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、国は22日、自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫さん(当時54歳)が改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」を遺族に開示した。

 妻の雅子さん(50)は大阪市内で取材に応じ「夫の気持ちを考えるとどんなつらいを思いしたのか胸がつまる。最後の夫の声なのできちんと読みたい」と話した。【芝村侑美】

財務省の決裁文書改ざん問題
 森友学園との国有地取引を巡り、財務省と近畿財務局は組織ぐるみで関連の決裁文書の改ざんを繰り返した。同省の調査報告書によると、安倍晋三首相(当時)が2017年2月、「(取引に)関与していれば首相も国会議員も辞める」と国会で答弁。妻昭恵氏らの名前が書かれた売却の決裁文書について、佐川宣寿(のぶひさ)理財局長(同)が外に出すべきではないと反応し、改ざんの方向性を決定付けたとされる。佐川氏を含む同省幹部ら38人が有印公文書変造容疑などで告発されたが、大阪地検は全員を不起訴処分にした。