厚生労働省は、公的年金の加入者に交付される年金手帳=写真=を廃止する方向で検討に入った。より簡素な基礎年金番号通知書(仮称)で代替する。約60年にわたり年金制度のシンボルとされてきた年金手帳は、法改正などを経て、役目を終えることになりそうだ。

 手帳は、保険料納付を証明するとともに、記録管理のために一人ひとりに割り当てられた基礎年金番号を加入者に知らせる目的で、1960年に導入された。かつては、行政手続きの際に提出を求められるケースも少なくなかった。

 最近は、納付記録が電子システム化され、手帳に書き込む必要性がなくなったほか、行政手続きでも提出が不要になっていた。手帳形式をやめて基礎年金番号の通知に特化することで、2016年度に約2億7000万円かかった発行費用を削減する狙いもある。

 厚労省は30日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会でこうした方針を説明する。廃止には国民年金法改正が必要だ。交付済みの手帳は当面、引き続き利用可能とする。手帳は本人のほか、勤務先が保管している場合もある。

 厚労省は、新たな通知書について、色つきの上質の紙にするなど、大切に保管してもらえるよう工夫を凝らしたい考えだ。

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20191029-OYT1T50089/