読売新聞 2015年02月19日 01時31分

 過去への反省を踏まえつつ、世界の平和と繁栄に日本がどんな役割を果たすのか。
未来志向のメッセージを対外発信することが肝要である。
 安倍首相が、今夏に発表する予定の戦後70年の首相談話に関して月内に
有識者会議を設置し、談話の内容や表現方法を議論してもらう意向を表明している。
 談話には、大戦への反省、戦後の平和国家の歩み、今後の国際貢献などを
盛り込む考えだ。
 戦前・戦中に関する歴史認識だけでなく、戦後日本を総括したうえで、
将来の針路や政策の方向性について、国際社会に明示することは重要な意義を持つ。
 日本は戦後、一貫して日米同盟と国際協調を重視し、平和外交を推進してきた。
政府開発援助(ODA)や国連平和維持活動(PKO)などを通じた貢献は、
高い評価を受けている。
 国際社会は今、地域紛争や、国際テロと大量破壊兵器の拡散、貧困、環境
破壊など、様々な脅威に直面する。日本が今後、「積極的平和主義」に基づき、
こうした課題に、より能動的に取り組む姿勢を明確に打ち出すべきだろう。

 戦後50年の村山談話は、「植民地支配と侵略」でアジア諸国などに
「多大の損害と苦痛を与えた」として、「痛切な反省」と「心からのお詫
(わ)び」を表明した。
 この認識は、歴代内閣に引き継がれている。戦後60年の小泉談話も、
一連の文言を踏襲した。
 安倍首相は、村山、小泉両談話について、「全体として引き継ぐ」と何度も
明言している。
 一方で、植民地支配、侵略など個別の文言については、「今までのスタイルを
下敷きにすると、細々した議論になる」と述べ、必ずしもこだわらない考えも
示す。

 首相談話を出す度に、大戦への謝罪を続けることが適切なのか。過去の
談話との違いばかりに関心が集まることが良いのか。首相には、こうした
問題意識があるようだ。その点は理解できる。YOL
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150218-OYT1T50156.html