社説:沖縄密約判決 隠ぺい体質黙認するな
毎日新聞 2014年07月15日 02時35分
 情報公開請求された外交文書が実際に作成されていたとしても、不開示の
決定時に国が文書を保有していたとまでは推認できない−−。
 沖縄返還交渉をめぐる日米密約文書の開示訴訟で、最高裁が14日、西山
太吉元毎日新聞記者らの訴えを、こんな理由で退けた。情報公開請求訴訟に
おいて、行政機関が文書を保有していることの立証責任を原告に負わせたうえ
での判断だ。
 米国立公文書館で写しが公開され、元外務省局長も文書への署名を認めた
密約文書について、政府は存在を否定してきた。最高裁の判断は、政府の無責
任な姿勢を黙認したに等しい。行政をチェックすべき司法の役割を果たしたと
は言えない。
 原告らが求めていたのは、米軍用地の原状回復費400万ドルを日本が肩代
わりすることを示した日米高官の密約文書などだ。
 政府は米公文書の存在が判明した2000年以降も密約を否定し続けた。
民主党政権下の10年、外務省に設置した有識者委員会が「広義の密約」を
認定したにもかかわらず、政府は今に至るも「文書はない」と繰り返す。
あまりに不誠実だ。
 10年の1審の東京地裁判決は、外務・財務両省が文書を保有していたと
結論づけ、仮に廃棄したとすれば、組織的な意思決定があったと判断。探索が
不十分だとして、国に開示を命じた。11年の東京高裁判決は、08年の
不開示の決定時点で「文書はなかった」として、請求は退けたが、文書の
廃棄の可能性を指摘した。
 もし、廃棄があったならば、誰の指示の下でなぜ廃棄されたのか、徹底的に
調査するのが筋だ。
http://mainichi.jp/opinion/news/20140715k0000m070149000c.html