僕の中で山下はとにかく速くて、多彩で、音が若干ザラついて大きくて、ダイナ
ミックな演奏をするイメージでした。CDではそんな印象が強かったし、youtubeでもそう。
だから少し怖いもの見たさというか、そういう感覚で「観に」行きたかったとい
うのが本音です。

しかし一曲目の禁じられた遊びが始まるとなんと音が小さい。アルハンブラでも
何より繊細。これだけで推し量るのはなんですが本当にイメージと違う。音綺麗
だし。何よりしていることや、音楽が全部山下流にコントロールされている。

次のコンポステラ組曲でそれは的中。
凄い、この人はむやみに弾き飛ばしもしないし、むしろ全て聴いてコントロール
している。この辺りから山下の魅力でもある音色の多彩さ、ダイナミクスも出て
きて感動。コンポステラ組曲を非常に濃い味付けで弾いていたが、僕にはすべて
自然に聴こえてきて気持ちが良かった。コンポステラの巡礼記を描いたこの曲の
立体感が見事に出ていた。組曲を締めくくるガリシア舞曲、と括弧で書かれた最
後のムニェイラでは鐘の音だろうか?踊りの風景が浮かんでくる。叙唱も聴き入っ
てしまった。