「青い花」は楽譜を見ないと本当のおもしろさはわからないよ。
例えば第1楽章では、5つの調性が目まぐるしく入れ替わる。
主体は♭系だから、ギターが苦手な調性だよね。倍音が得られないからね。
ところがCDでも実演でも、山下さんはそこを音の繋ぎによって見事に響かせている。
正確には、響いている錯覚を起こさせる音の繋ぎ方をしている。
これは実は大変なテクニックだよ。
2005年のしらかわホールでは目を皿のようにして特に左手の押弦とポジション移動を
観察していた。左手が神業的な動きをしながら、右手は12フレットあたりから
ブリッジ付近まで自在に移動しつつ、微妙にタッチの角度を変える。その上、例のごとく
楽器は前後上下に揺れる。
「展覧会の絵」等の実演も見たことあるけど、それと同等か、捉え方によってはそれ以上の
超絶技巧だと思うね。
とにかく、山下さんは、若い頃と違ったある境地に達しているよ。
「青い花」という曲自体の評価は他に委ねるとしても、「青い花」を弾く山下さんは絶対に
一見の価値有りと、すべてのギター愛好家に訴えたい。
紀尾井ホールがいっぱいになることを期待している。