珠洲原発用地買収で組長協力、関電などに30億円要求

 石川県珠洲市に関西電力が計画している珠洲原子力発電所の予定地付近の土地を清水建設など大手ゼネコンの関係会社が買収していた問題で、関電と清水建設が、同県の暴力団組長から、土地買収に協力した見返りとして約30億円を要求されていたことが朝日新聞社の調べで分かった。関電と清水建設の担当者は数回にわたって組長と直接面会し、話し合っていたとされる。組長側の要求を過大と判断した両社は、清水建設の関係会社社長に交渉を依頼した。組長側に資金が実際に流れたかどうかは不明だが、関係会社社長に「交渉の報酬」として資金が渡った疑いがある。関電と清水建設は、組長の関与を全面否定している。
 関係者によると、石川県在住の指定暴力団山口組系の組長が1994年ごろ、珠洲原発の立地を担当していた関西電力立地部や、関電から土地取得の依頼を受けた清水建設北陸支店の当時の幹部らと数回接触していた。このなかで組長は、土地取りまとめに力を貸した見返りと、交渉が難航している地権者数人の土地取得に成功した場合の報酬として、約30億円を支払うよう関電と清水建設に要求していたという。

 要求が余りに高額なため、関電と清水建設は対策を検討。95年ごろ、清水建設の関係会社社長に交渉を任せることにした。

 この関係会社は、原発予定地付近の土地取得のため93年に設立され、清水建設社員が開発部長として勤務していた。関係会社社長は、微生物を使って健康増進の研究をする社団法人を主宰しており、組長が法人の会員だったことから、面識があった。

 関係会社社長には、この開発部長から話が持ち込まれ、関電側に了解したことを伝えたという。

 関係会社側は96年までに、清水建設側から業務委託費などとして数回にわたり計数億円の資金提供を受けており、このうち一部は交渉の報酬として支払われた疑いが持たれている。

 関西電力は89年ごろから、珠洲原発予定地周辺の反対派住民の土地買収を清水建設に依頼。清水建設は、下請け業者である金沢市の建設会社に土地の取りまとめを頼んでいた。組長はこの建設会社社長と親しい関係にあり、以前から土地取得やトラブル解決の実務を依頼されていた。こうした際には、建設会社が資金を負担していたという。