敷地内で水力発電! 地中熱、温泉廃熱も利用 原油高騰も乗り切ったエコ旅館
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/special/20090401/1025161/
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 「原油価格の上昇も、ほとんど負担にはならなかった」──。

 星野リゾートが運営する「星のや 軽井沢」は、2005年のリニューアル時に画期的な省エネ設備を導入。
消費エネルギーの7割以上を自然エネルギーで賄う、最先端エコ施設に変貌した。

 旅館で最もエネルギー消費量が大きいのは、暖房や給湯のためのボイラー設備。星のやの省エネ対策の
中核は、リニューアル時に新たに導入した地熱や温泉廃熱の利用システムだ。

 同館の大浴場から出る排水は冷たい。排水される時点ですでに熱が奪われ、暖房や給湯に再利用されてい
るためだ。温排水を川に流し、生態系に影響を与えることも防いでいる。

 この、発生した熱を別の場所で使うシステムを「水冷式ヒートポンプ」という。冷房の廃熱も再利用する
など、暖めたい場所と冷やしたい場所の間で熱を融通し合うことで、施設全体のエネルギー効率を高めてい
るのだ。

 このほか、敷地内の3カ所に「地中熱」と呼ばれる地下の熱を取り出す“井戸”を設置。地下400mまで
パイプで水を送ると、15℃の水が25℃程度に加熱されて戻ってくる。「日本の土地に合わせて独自に改良
した設備で、効率は欧米標準の約10倍」(同社)という。結果、地中熱と温泉廃熱の合計で、エネルギー
消費量全体の6割近くをカバーする。

 また、同館の特徴の一つは、敷地内を流れる川の美しさ。所々に小さな滝がある段々状の地形は目を引く。
しかしこれは単なる川ではない。水力発電用に整備された“水路”であり、エネルギー需要の16%程度を賄う。
「あくまでも発電用設備だから、大胆に地形を変えることが許された」(同社)。景観もより美しくなり、
一石二鳥というわけだ。

 地中熱設備の初期投資額はボイラーの約1.5倍だが、燃料コストの低下で既に元は取れた。「原油高騰もあ
り、5年で回収する予定が2年弱で済んだ」(同社)。09年以降、同様の設備を持つ宿泊施設を増やす計画だ。