【環境立国ニッポンの挑戦】第1章 水資源(8)海面上昇…ツバルを救え
1月27日8時0分配信 産経新聞

廃棄物焼却場、市営プールといった公共施設や工場などが立ち並ぶ神戸市長田区の苅藻島(かるもじま)。
海や運河に囲まれるこの人工島は高潮に備えて周囲を堤防で固めている。
干潮面から約4メートルのコンクリート製堤防で守られている島は、大雨や高潮にも盤石なように映る。

だが、平成16年秋の台風では浸水被害が発生した。神戸市みなと総局経営企画部の岩林修主査は「島全体に張り巡らせた堤防で、唯一抜けていたのが本土と島を結ぶ橋の部分だった」と振り返る。
橋は堤防よりも低くなっており、万一の際には高潮の通り道となるのだ。

堤防を築けない橋の“守り”をどうするか。この悩みを解決したのが、三菱重工業が開発した膜式防潮堤だった。

数本のロープの間に、合成繊維製の膜を張っただけの簡易な構造。高潮を防ぐにはあまりに頼りなげだが、素材は米航空宇宙局(NASA)の火星探査機が火星着陸の際に衝撃吸収用に使ったエアバッグと同じ。
両端を固定して膜を開けば、柔軟性の高い膜とロープの張力だけで押し寄せた波の水圧に耐える。

防潮堤はふだん、橋のたもとの小屋に、巻き取ってしまわれている。
だが、非常時には大人2人が10分程度で設置でき、島を高潮から守る。