>>356 続き:やはり塩


みっつ、「新品のときだけ機能するシールド線」を使っていたために、不適正なアンテナ配置を選んでいたことが判明した。
陸軍戦闘機の無線アンテナは、エンジンカウリングのすぐ後ろにアンテナ支柱を立て、その先端から垂直尾翼上端まで電線を結ぶ形で装備されている。
シールド線が機能しているときにはこの配置による長いアンテナ線が良好な受信感度を実現していた。
そして、シールド線が機能停止すると共に「雑音電波源の傍まで伸ばしたアンテナ」となる。

ここで航通校の人々は、諸外国の戦闘機の写真を改めて見てみた。
無線機を装備しはじめた直後を除いて皆、アンテナ支柱はコクピットよりも後ろに装着されている。
陸軍戦闘機のアンテナに比べて短い、感度において不利なこのアンテナ構成を諸外国の戦闘機技術者がなぜ選んだのか、彼らは理解した。
外国の事例など見なくても日本海軍の戦闘機は最初からコクピット後ろにアンテナ支柱を装備していたのだが、これは参考にならなかった。
海軍戦闘機の無線機も部隊では正常に動作しないことが知られていたためである。


よっつ、地上運転では機体の各部で発生する雑音電波のほとんどが地面に吸収され、問題にならない。地上運転ではこれらの問題に気付くことが出来ない。


航通校の技術陣やテストパイロットは、戦後のインタビューに次のように答えている。
「ジェット実験機があの時期に存在しなくても、いずれ我々はグライダーに無線機を載せて実験し、問題を明らかにしただろう」と。