本人の身体的な死をあくまで防止しつつ、内面的な死の願望を尊重する
態度で接していると、解決はその本人の無意識界からもたらされてくる
ことが多い。自殺を企図し、死に対する恐怖感を持っていない人が、夢
の中で、不治の病いを宣告されたり、猛獣に追いかけられたりして「死
の恐怖」を味わったり、生きたい!という生への願望を体験したりする
ことはわりにある現象である。死を恐れていないと思っていた人が、夢
の中で死の恐怖を体験し慄然とする。実際、自殺をする人たちは、死の
恐怖を感じない強さをもっているのではなく、自我の弱さのため死の恐
怖を感じることができなくなっている場合が多いのではないかと思わ
れる。今まで死を恐れないと言っていた人が、夢の中で獣に追われて逃
げまわっているのなどを聞くと、われわれは、「あなたも自殺したがっ
てるのだから、せっかくの機会に喰われてしまえばよかったのですのに」
などと冗談のひとつもいいたくなってくるのである。