「おーーー…、おー……、…………」やがてシーンと静寂が訪れました。しかしテレビの音、彼のいびき、まだ聞こえません。
ちょっとホッとした瞬間、「あ゛ーーー」の声とともに誰かが私の腕をつかんだのです!
私はこの世のものとは思えない声を上げ飛び起きました。
よく見ると彼が寝返りを打って私の腕を掴んでいただけでした… そのお陰で金縛りが解けたのでしょうか。
彼は寝ぼけながら「ん〜〜どした〜?」と言ってきましたが、
自分自身今起こったことが現実なのか何なのかわからず「なんでもないよ!」と言い、彼にくっついて横になりました。
その後何事もなく朝を迎えましたが、私は全然寝れずじまいでした。
後日談
たまたま息子の幼稚園で知り合ったママさん達といろいろな話をしているときに、
その中のママさんの母親が昔ラブホテルで清掃のパートをしていた、という話になり、
働いていたホテルで25年位前に不倫カップルの別れ話のもつれから殺人事件があって
たまたま母親がパート中に警察が来る前の現場を目撃したということでした。
その事件があったホテルというのが私たちが泊まったあのホテルだったのです。事件後に改装し名前も変わったらしいですが…
そしてその現場では男性が背中を何箇所か刺され、床は血の海、そして壁には何箇所も血だらけの引っかいた痕があり、
その壁の下で男性は死んでいたようです。女性は逃げたらしいのですがその後自殺しているのが見つかったということです。
今思うと、あの声は誰かに助けを求めていたのでしょうか…
苦しくて壁を引っかき、やっと振り絞った声で…
私が聞いた壁を擦る音、だんだん聞こえなくなっていく声… 男性の断末魔だったのかと思うと、
今も思い出すと怖く、苦しく、悲しい気持ちになってしまいます。これが私のまったく体験していない話です。