治った岩間

「兄さん、あけましておめでとう」
「お義父さんもお義母さんもお亡くなりになって…こうやって揃うのはお正月くらいですね」
『あー!久しぶりだなおめーら!』
「よしおじさーん!おめでとうございます!」
「良いお医者さんに会えてよかったねえ兄さんも…苦労したけど」
『医者ってのはグルでなあ、みんなで金を取る。でもまああの変な薬は忘れんように飲んどる』
「お料理取ってきますね」
「よしおじさん、大事なこと忘れてない?」
『なんだぁ!?俺と話すと金になるんか!ホラ、無駄遣いはやめてくれぇ?』
「兄さんありがとう。ほらお礼を言うんだぞ」
「うん!よしおじさんありがとう!」
『いやあ去年おめえら皆で病院来てくれてなあ。嬉しかったぞぉ?』
「あー!よしおじさんもう来てたのー?」
『なんだおめえ晴れ着なんか着てずいぶんキレエだなあ!』
「あ!私が着替えてた間にもうお年玉貰ってる!私も!」
『助けてー!集団親戚にねだられてまーす!』
「後で神社行こうねー!」
「そうだなあ。じゃあお酒は出かけた後にしようか」
『ビールくらいなら飲むぞぉ!?』
「はいお料理ですよ〜」
『おーうまそうだなオイ!どれも御馳走だー!』

「私が引きまーす、なんだ男の人だあ。お姫様の絵がいいのに」
「あ、この俳句知ってる!学校でやったよ」
『じゃあ俺だぞぉ?出ましたー!クソハゲボウズでーす!!』
「アハハハ、おじさんの札没収ー!」
「これで坊主3度目だよよしおじさん」
『シワクチャでおんもしれえ顔だなあコイツはあ!』

「お義兄さん、楽しそうねえ。本当は子供好きだったのね」
「ああ。そうみたいだなあ。今のお医者さんてのは凄いんだな」
「そうだ、何かさっきお義兄さんが封筒をくれたじゃない。今のうちちょっと見てみたら?」
「ああこれか。どれどれ…あ、お金…!10万も入ってる」
「メモもあるわね…『子供が来年中学生になると部活に入りまーす。テニスがしたいと言っているので部活はテニス部でーす
テニス部ではカルトラケットを買ったり、ユニフォームを買ったり、日曜日もコートで見張られて練習したりしまーす
これらはすべてお金がかかり子供も中学生になると頭が成長して余計な心配をしまーす
子供はそんなことを気にせずテニスだけすればいいので使ってくれぇ?こんな事は本人に言わなくていいぞぉ!』
お義兄さんてば…言い方ばっかり悪いんだから」
「これは黙って貰っておこう。そうして欲しいんだよ兄さんも。俺も男だからなんかこういうの分かる。ちょっと恥ずかしいんだよね」

「おかあさーん!よしおじさんと神社行ってくるねー!」
『セーターも着ねえと外はキチゲェみてえに寒いぞ!』
「じゃいってきまーす!」
「人が多いから気を付けるのよー!」