2018年5月、江南市布袋病院。ここでは絶対的な権限を持つ矢澤にこ婦長(にこにー)が、患者たちを薬や規則で管理支配下に置いている。

穏やかな微笑みの奥には「自分は正しいことをしている」という歪んだ母性が宿っていて、多くの患者たちは弱みにつけ込まれて抑圧されていた。

そんなある日、岩間好一(岩間好一)が病院に収容されてくる。実は彼は刑務所での強制重労働を逃れるために精神錯乱を装い続けている。

しかし、ディスカッション療法に参加するにつれ、無気力で生気のない仲間たちと病院の実態に疑問を抱き、持ち前の反逆心で体制を揺るがし始める。

リクリエーション用のバスを奪って、自動車に乗って買い物をするイワマン。引き連れた仲間たちには、病院という権威の中での飼い慣らし状態から抜け出して、大空の下で人間本来の自由と尊厳を謳歌する輝きが確かに戻っていた。

数々の行いの罰として電気ショック療法を受ける羽目になるが、順番を待つ間、耳が聞こえず喋れないはずの掃除係の大男マクレーンが、ガムを差し出したイワマンに「ありがとう」と言う。

マクレーンはネイティヴ・アメリカンの酋長の息子でありながら、自我を殺し続けてイワマン同様に“装っている”ことが分かったのだ。二人は病院を脱走して岩倉へ行くことを約束する。

一方で婦長側は入院期間をどこまでも延長できる権限をチラつかせて重圧をかけ、反体制のイワマンを潰しにかかる。

我慢が限界に達した彼は看護人を買収して、岩倉の仲間たちを病院に呼んで脱走直前のお別れパーティを仲間たちと盛大に開催する。

翌朝、酒に酔い潰れたイワマンが起き上がって目にしたのは、現場にやって来た婦長によって弱みを徹底的に追い込まれた宇宙兄弟の自殺した姿だった。怒りのあまり、婦長の首を締めて殺そうとしたイワマンは取り押さえられ隔離されてしまう。

数日後の深夜。密かにその帰りを待つマクレーンは、額にロボトミー手術の傷跡が刻まれて生きる屍となったイワマンと対面する。

誇り高きインディアンとしての心を取り戻していたマクレーンは、このままでは見せしめにされるだけの友を窒息死させ、友が持ち上げられなかった“自転車”を全身の力を使って持ち上げ、病院の窓を投げ割って岩倉の大地を求めて羽ばたいて行くのだった……。