『復讐の序章』  ジャック・ヴァンス  (1964)

復讐・・・なんという甘美な響きであることか!
この作で復讐の刃を振るうのは、孤高の作家ジャック・ヴァンス。
異郷の文化を細かく設定し描写することで定評のある彼が、果たして
いかなる復讐譚を紡ぐのか?

本作は『魔王子』シリーズの一作目。
この後に『殺戮機械』『愛の宮殿』『闇に待つ顔』『夢幻の書』と続く。
五人いる魔王子を、一冊ずつ打ち倒していくわかりやすいペース。

この1巻はまだまだ普通?の復讐冒険譚な小説であった。
ところがどっこい、どんな心境の変化があったかどうか知らないが、
2巻以降ヴァンスの筆は果てしない暴走を始めるのだ。
それと共に、主人公ガーセンのキャラも万華鏡のように変わっていく。
騙す、盗む、偽造する、嵌める、殺す、弄ぶ、嫌がらせる・・・もぅ、
シリーズ後半のガーセンってば、間違いなく魔王子以上の悪党である。

いやぁしかし悪党モードに入った主人公、面白いんだわマジで(笑)。
漢っぷりも良いが、性格も最高に意地が悪い。
悪に対しての容赦なさっぷりがまた素敵。

4、5巻のこやつの非道のおこないが、これまた素晴らしい(笑)。
特に4巻最高! ヒロインを毒牙にかけるし、魔王子を葬る時にも意地
悪いし、最後には惑星レベルの個人的嫌がらせまでやらかすし(汗)。

こんなガーセンに付け狙われるのだもの。
読者からの投書感想に、本来“悪役の筈の”魔王子たちへの同情の
声が多かったというのもむべなるかな(笑)。
萩尾望都センセの美麗な表紙イラストもイイ。
古本屋で見かけたら、シリーズまとめてサルベージされたし。