『アンドロイド』  エドマンド・クーパー  (1958)

冷凍睡眠から目覚めた男が見た未来社会は、アンドロイドがすべての仕事をこなして
人間は怠惰と享楽を貪っていた――ユートピアに見えて実はデストピア、という王道
パターンの元祖になった古典SF。

未来世界の風俗描写も興味深いが、しかし、何と言ってもこの作品の売りは“人間と
ロボットの恋愛”を真正面から書いた点だろう。ロボットに感情を教えようと悪戦苦
闘する主人公、そして素直にそれを学習していく純粋な女アンドロイド。パターンと
言えばそうだけど、パターン故に魅力的でもある。
仕事もせず、果たすべき義務も存在せず、その上こんな可愛らしい相方を与えられて、
何で主人公はアンドロイドに反旗を翻すかなぁ・・・などと考える人も多いかと(笑)。
書かれた時代が時代だけに古臭いのは否めないが、懐かしいというか、なんとも表現
し難い魅力があるのも事実。

でも実際のところ本作品よりも、クーパーがリチャード・エイヴァリー名義で書いた
『コンラッド消耗部隊』の方が好きだったりする私。
どうやら私はロマンスよりも娯楽性に引かれるようである(苦笑)。