酒井昭伸 様

「タフの方舟」拝読いたしました。
達意の名訳で、すんなりと物語世界に没入することができました。

ただ僭越ながら、「させていただく」という表現にはいささか違和感を感じました(1巻P291,304)。
この面妖な言葉、昨今では若い方を中心にいたるところで見かけますが、
貴兄と同世代のやつがれが読書の楽しみを覚えた昭和40年代には、
すくなくとも書き言葉では目にした記憶がございません。
いったいどこで貴兄のボキャブラリイに入ったのか、少々不思議です。
お若い編集の方が訳文に手をお入れになったのか、とも思いますが。

あと、1巻P396の潜水と浮上の原理の説明が逆になっております。
これは原文の書き方も怪しいのですが、日本語にする際、
わかりやすくするために原文を分解してつなぎ直すのを
機械的に行ったためのミスではございませんでしょうか。

一介の読者の分際で余計な差し出口を利きまして、たいへん失礼いたしました。