徳川秀忠は普段から機嫌の麗しい時でも、大名や旗本の者らが病死
したと聞けば、にわかに様子が変わり、しばらくの間は言葉も発さず、
人によっては涙を落として、そのまま奥に入ることもあった。

このように人々を手足のように思っていたため、下の下に至るまで、
その情け深い心に、慣れ親しまぬ者はいなかったのである。

――『徳川実紀(名将名言記)』