朝鮮の役の頃のこと。

朝鮮より帰国した一人の男が、天草にイエズス会のコレジオ(学院)に来訪した。
彼はその出身地である田舎に小さい教会を建て、そこで一生を捧げたいとの殊勝な望みを抱いて
やってきたのであった。

その動機を尋ねられると、彼は「デウスが驚くべき異常な方法で私を死から救ってくださったからだ。」
と答えた。

この男は朝鮮で重病を患い、人間的なあらゆる救助の道を絶たれ、完全に人々から見捨てられていた。
その窮状から身を救い得るものも、何一つなかった。
その時、彼はキリシタンであったので、以前に元気であった頃に祈っていたコンタツ(ロザリオ)を
思い出し、それが彼の身体を養い、健康を授ける力を秘めているように思えた。そこで見捨てられていた彼は
非常な信心を抱きながら、そのコンタツを食べ始めたのである。

我等の主なるゼウスは、彼に憐れみの目を注ぎ給い、口にはコンタツ以外何も入れなかったにもかかわらず、
彼を数日間養い、この風変わりな薬だけで、その病気を癒やし健康を回復することを嘉し給うたのである。

(ルイス・フロイス『日本史』)

ロザリオを食べて重病を直した男のお話。