朝鮮において、どこの戦いでのことか、加藤清正の士大将の森本義太夫
(一久)は流れ矢に肘を射られてしまった。

このようなところに、庄林隼人(一心)が馳せて来るのを見た森本は、

「もしもし、手負いしてしまった。この矢を抜いてくだされ」

と言った。庄林が馬から下りて矢を抜き捨てると、森本は、

「なんとまあ、快いことだ!」

と言うや否や、馬にひらりと打ち乗り、一鞭打ってさっと駆け出し、

「庄林殿、続かれよ!」

と言い捨てて、敵に出会い、首を得た。二人とも清正の士大将にして、
大剛の者である。森本の槍は白鳥毛を鞘とし、庄林は黒鳥毛を鞘とした。
世の人は、黒鳥毛、白鳥毛、と言い合った(渾名したという意味か)。

――『常山紀談』