ある時、御伽の者が豊臣秀吉に質問した。

「今の世に天下を取る器量の大名はいるのでしょうか」

「天下を取るには大気、勇気、智恵がなくてはならない。
この三つを兼ねた大名は一人もいないが、小者には二つ兼ねた者が三人おる。

一人は上杉の直江山城。これは大気と勇気があるが智恵が足りない。
二人目は毛利の小早川左衛門。これは大気と智恵があるが勇気が足りない。
そして三人目は龍造寺の鍋島飛騨守。これは勇気と智恵があるが大気がない。

大名にはこれほどの者もおらぬな」

――『名将言行録(葉隠)』