東照宮(徳川家康)がその最期を迎えられようとしていた時、秀忠公にこの様にお尋ねになった

「私は今日にも死ぬであろう。私の死後、天下はどうなると心得ているか?」

秀忠はこう答えた
「…父上の死後、天下は乱れると思います。」

その言葉を聞くと家康
「そういう心持ちで居るのなら、もう大丈夫だ(夫れなれば、ざつと済みたり)」
そう、心良さげにうち笑われ

「安心した」

と仰った。
そして次に竹千代君(徳川家光)を御側に召され

「其方は天下の主となる人だ。よく心得られよ、天下は慈悲が第一であるぞ!」

そう仰り、それから間もなくしてご他界されたという。
(武野燭談)

家康の遺言、というお話。