>稗貫広忠の末期
>陸奥国稗貫郡の領主稗貫広忠は、奥羽仕置によりその領地を没収され、その後の再興運動も実を結ばず、
>没落して稗貫郡矢沢村に潜居していた。
>ある時、近所の高松寺の法印と四方山話をするついでに、広忠は法印に語った。

>「実はこの頃、良い夢を見るのだ。ひょっとしたら本領に帰参できるかもしれない」
>「それはよかったですね、どんな夢をご覧になったので?」
>その問いに、広忠は歌を詠んだ。

>ただ頼め 真如の道ぞ ありがたき 立ち帰るべき 道ぞ来にける

>法印はその時は祝福した。だが広忠が帰った後、
>「広忠様は悪い夢を見ておられる。遠からずお亡くなりになるだろう」
>その言葉通り、その日からまもなく稗貫広忠は亡くなった。
>文禄3年3月2日の事だという。